東洋医学を取り入れた動物病院が経営改善で売上130%増
動物病院での中医学治療の開始をきっかけに認知度を伸ばしてきた相談者。しかし、資金繰りが苦しく、薬を仕入れられない状況に悩んでいた。そこで、SNSでの情報発信や料金体系の見直しで、巻き返しを図る。
平成28年、創業して3年が経過し、固定客がついてきた。この年より始めた中医学治療は新聞やテレビ等のメディア露出効果もあり、認知度が多少上がってきたと感じていた。他の医院にかかりながら、当医院での漢方治療をする方もいるなど、売上げも伸びてきていたと実感していた。しかし創業時の設備投資、売上高の低迷などから、資金繰りが厳しく、その都度借入を増やしてきたという。特に、薬代の買掛金を支払わなければ、仕入れできない状況となっており、当拠点の紹介を受けた。
薬については3社から仕入れを行っており、そのうちの2社は2カ月遅れの支払いを。1社は納入停止となっており、春からの治療を行う上で支払いが必要で、その薬がなければ対応できない状況となっていた。その他、多額の住宅ローンが残っており、配偶者の突然の死去により一人で全額返済しなければならず、その負担も非常に大きかった。これまで付き合いで加入している保険等や、計画性の弱い必要以上の過剰仕入れ等があったため、計画的な仕入れを心掛けるなど経費削減に努めているが、さらに経費の見直しをする必要があるというコーディネーターの判断だった。
県独自の「とっとり企業支援ネットワーク」という制度があり、利害関係人(ステークスホルダー)である関係金融機関、保証協会、債務者である事業者と、支援機関が一堂に会し、経営再建について模索。その際に、経営改善計画書が必要となり、営業戦略、金融スキーム等の骨子を当拠点が担うこととなった。
今回行ったのは、SNSでの「東洋医学療法の施術の紹介」や「予防治療に繋がるペットの行動の紹介」などの情報発信。また、料金体系の見直しを行った。相談料の有償化。受付の看護師が十分な事前問診を行い、院長が問診を行っていく時間についての有償化である。また、鍼灸治療の料金、漢方薬の錠剤単価の値上げを実行した。
さらには、一日当りの必要売上高が明確化され、10分単位で売上げが計上できるシステムに変更。こまかな取り組みとしては、「春の予防パックプラン」を策定し、既存顧客にDM送付も行った。これまでは相談者一人で、薬の仕入れを都度行っていたが、ついつい多めに仕入れしてしまう傾向があり、薬仕入れについては月次発注上限金額を設定し、必要点数等を事業者と受付看護師が確認しながら行うように変更した。
成果としては、まず、相談者と一緒に策定した経営改善計画書が承認された。そして、増加運転資金2百万円と住宅ローン、リフォームローンの5年間の返済期間延長による毎月返済額の軽減化が実現化した。未払金、買掛金の整理が順調に行え、薬代の精算も行い、春の予防接種分の薬の仕入れも行えた。薬の仕入れ過ぎがなくなり、過剰在庫がなくなり、資金繰りで悩むということがなくなったという。平成29年末時点で、対前年同月末売上高累計額が、130%増加した。
「経営者は孤独で相談相手が欲しかった」という相談者。地元の商工会を通じて、当拠点を紹介してもらい、さらには地元新聞社やNHKのニュースで取り上げられ、県内外から患者さんが増加することになったと支援を振り返った。現在は、毎月一回、地元商工会と当拠点とともに、前月の検証と当月・翌月の収支見込みと同対策を行い、環境は着実に改善されている。