強みを活かす戦略で売上約7倍達成 人手不足も改善
介護事業を営む相談者は、公的介護保険制度の限界を感じ、独自性の高い新たなサービスを展開。「従業員にチャンスを与える」「専門職にも経営的視点を持たせる」組織づくりで、人手不足にあえぐ業界の常識を覆していく。
相談者が当拠点に訪れるようになったのは、創業の会社づくりの段階から。介護事業経験を活かした独立で、その豊富な経験から、公的介護保険事業の限界を見極めた新たなサービスづくりに関連して、幅広い相談があった。
一方で、一度聞いただけではその全容をつかめないほど、取り組み分野が多岐にわたっており、経営者の考えを整理していくことが、相談のポイントとなった。
対応したコーディネーター(以下CO)は、以下の視点から課題を整理。経営者の熱意とノウハウの顕在化を後押しした。
まず、強みといえるのが独自性、開発力、地域戦略の点で、将来性・成長性を感じる素材に満ち溢れていること。
一方で弱みと捉えたのが、経営実績、事業基盤、人材育成の点で、まだ創業段階にあり、実績を作ることが必須であること。着実に収益体質を確立することが重要であり、利用者を増やす方策を示した。これに合わせて、介護業界に蔓延する人手不足も経営の脅威である事から、介護業界以外からの人材確保を提案した。
介護事業は、地域性の強い事業であり、当社においては直営事業所がある大田区、中野区の各地域特性を踏まえた地域密着型の事業戦略が必要である。競合の厳しい地域密着型通所介護と、希少性ある小規模多機能型居宅介護を組み合わせて展開しており、地域住民や地域包括支援センター、居宅介護支援事業所等にわかりやすい広報を継続させることで、地域でのポジションは確固たるものになると提案。
また独自の介護保険外事業の展開は、同業者等へのコンサルティング事業に活かせる可能性を秘めており、独自性のある事業分野へと発展が期待される。ある意味、介護保険制度の枠にとらわれない新たなマーケットを作るという、先駆者となるうるチャンスがうかがえると評価し、推進することを提案した。
一方経営の脅威となる、人材・人手不足への対策として、同社には、創業を共に支え潜在能力を備えた複数の人材がいる。一つは、この貴重な人材にチャンスを与え、サポートし、成功体験をさせていくことで、業界随一の人財に育て上げることを提案する。同時に、直営事業所においては、介護保険制度に則った事業所の組織体制を固めなければならない。零細企業から、中小、中堅に成長させる展望を有するならば、ヘルパーなどの専門職にこだわらずマネジメントに長けた人材の募集を行なうと共に、介護専門職の人に独自事業の企画や運営を担わせ経営的な視点を持たせ任せていくことで組織づくりと合わせた中・長期事業計画を策定することを提案した。
これを受け相談者は、事業ジャンルに分けて、一つ一つに取り組み目標と事業計画を策定。また、新ビジネスの取り組みとして、コンサルティングセミナーや公的機関のセミナーに登壇した。
強みを活かしながら事業運営を後押しした結果、創業2年で、年商1,200万円から8,600万円に急成長を果たした。また、独自の保険外事業の取組みによって難題突破型の志向を持った人材育成に成功した。さらに多様なスキルを持つ人材の採用と既存スタッフのモチベーション向上が図られ離職率を改善。業界の抱える人材不足の課題を乗り越える成果となった。