天候に左右され収益に課題のあった 日帰りアウトドア施設を滞在型に転換
令和2年より奈良県十津川村の村有アウトドア施設「空中の村」を設計、管理、運営する。同施設はフランスから来日し大学卒業後、十津川村の地域おこし協力隊に入った相談者が自身の夢を実現した施設で、公共施設「21世紀の森・紀伊半島森林公園」の活性化も目的とする。
代表者:ジョラン・フェレリ(じょらん・ふぇれり)
住 所:〒637-1441 奈良県吉野郡十津川村小川112
連絡先:0746-62-0567
「空中の村」は相談者が“ヨーロッパでの森の楽しみ方”をヒントに考案したアウトドア施設で、当拠点は創業計画時からビジネスモデルや事業計画、資金調達で支援していた。開業2年目の売上高は前年比40.3%増となり単年度黒字を達成したが、想定外のコスト、コロナ禍による集客不振、天候不順による実質営業日減などで、当初の事業計画から大きく乖離していた。2年後にはメンテナンスサイクルによる資金需要もあり、今後の利益体質強化に向け当拠点とともに取り組むことになった。
COによるヒアリングの結果、同施設は来場客がゆったり楽しめるよう1日あたりの最大定員は150名に設定していたが、もし認知度が高まり来園希望者が増加しても売上は頭打ちであった。さらに、主要施設が屋外設置のため雨天時には利用不可となり、また、山あいにあるため天気予報の精度が低く、実際には晴れていても雨予報が出ると来場を取りやめる人がいるなど、機会損失が生じていることがわかった。これらの課題の解決には現状のビジネスモデルの延長線上にない、新たな打開策が求められていた。
COはさらに話し合いを進め、これまでの主要客層であるファミリー層ではなく、自然に触れて癒しを求める20~50代のカップルや女子旅を楽しむ層に働きかけることを提案した。さらに平日の利用客が少ないことに着目し、創業時のコンセプトを守りつつ「日帰り施設」から森の中でゆったりとした時間を過ごす「滞在型施設」に転換、さらに持ち込みテント利用ではなく、既設の大型テントやツリーハウスに泊まってもらうことで、平日の需要喚起と客単価の向上を狙うことを進言した。
COは相談者の理解を得たのち、宿泊施設整備のための補助金の活用を勧め、「第6回事業再構築補助金」を申請、採択を得た。現在は令和5年4月に予定する1日40人受け入れ可能な宿泊施設開業に向け、PR活動も含め協議を進めている。この改善計画で、3年後の売上目標は令和2年の1億2,000万円から1億9,300万円と約60%増となり、営業利益も9.1%から33.5%へ大幅に向上する見込みだ。さらに次のステップとして、ヘリポートを整備、施設を貸し切りとした富裕層向けのエコツアーの企画なども進めている。
相談者が納得しての取組となるよう、話し合いを重ねました。また補助金についての情報提供やブラッシュアップにも努めました。また宿泊事業への転換に向けては、旅館業法について慎重に確認し、実務上、法律上の双方の課題で齟齬が生まれないように留意しました。
COには、マーケティング戦略を練り上げる上で「誰に」「どんなサービスを」「どのように提供するのか」というポイントをしっかり見据えての価格設定や利益構造の組み方を教わりました。これは自分にもっとも欠けていた部分なので、今回の支援でたいへん勉強になりました。