適正価格と顧客満足度の両立
事業者は創業3年目のエステサロン事業を経営している。相談者の強みは、看護師の豊富な知識と経験、心理カウンセラーとしての顧客に寄り添った対応、リンパトリートメント活用による全身のケア技術、SNS活用の特技を活かした集客力である。
住 所:非公開
相談者は、個人事業主として開業はしたが、営業損失が発生し対応に苦慮していた。競合との価格競争で顧客が減少することを危惧し、サービスの提供価格の値上げを躊躇していた。適切な提供価格の算出方法についても、良く分からない状況であった。
相談者の確定申告書を確認すると、営業損失が発生し代表者自身の生活費も深刻な状況であることを確認した。顧客へのサービスの提供価格は、競合の価格を参考にし、低価格で提供していたことや、相談者は他社よりも低価格で提供することで顧客満足を確保できると考えていたが、相談者の強みを活用した顧客対応が出来ていないことが問題点であった。これらの問題点から課題を設定した。サービスの提供価格の見積もりを具体的に理解し、価格改定を行うこと、顧客は低価格のみのサービスの提供を期待していないことを理解し、顧客の本当に求めるサービス品質を調査・検討すること、適正なサービスの提供価格と顧客満足度を両立することで、利益が確保できる体質への変革を目指す。
まず、サービスの提供価格の構造を理解してもらうよう、実際のサービスの提供工程がサービスの提供価格を考えるうえでの基本となるため、メニューの工程から価格を具体的に算出することを提案した。また、低価格のサービスのみが顧客満足度の指標でないことの理解を促した。リピート顧客に対して、提供したサービスの満足度をヒアリングしたうえで、メニューを見直すよう提案した。さらに、顧客に単価の値上げを意識させないように、基本のサービスの適切な施術時間を設定し、更にオプションのサービスで顧客満足度を向上させることを提案した。加えて、相談者のミッションである「女性の経済的自立に貢献する」ことを、エステ事業のコアにして取り組むために、これからの事業の方向性を再検討することを提案した。相談者は、これら提案等のアドバイスに対して、いずれもしっかり対応していただいた。
サービスの提供に係る工程を分解し、正確なコストを求める手法について、理解を得られた。また、顧客の潜在的な要望を心理カウンセリング技術で抽出し、オプションサービスの検討・追加に向けて取り組んでいるところである。これらを踏まえ、工程の効率化と適切な施術時間による利益を確保したベースメニューにオプションサービスを提案し、顧客満足度の向上に向けて取り組むとともに、時間単価を設定し施術時間と価格を守り切ることを意識した。具体的には、品質を落とさずに90分の施術を60分に短縮し、実質的には1.5倍の価格転嫁を実施した。更にオプションによる顧客満足度を向上し90分の施術を設定した時間単価で達成する取組を行っている。今後は、顧客の真の要望が高品質のアンチエイジングであることが分かったので、次の飛躍のための設備投資の必要性が明確になった。そのための設備導入へ向けて、補助金の申請にも取り組んでいるところ。
相談者が、事業のサービスの提供に係る工程を分解し、具体的かつ正確な単価を算出できるよう、原価算出方法を習得できるようアドバイスを行った。相談者は、エステティシャンとしての技術は優れているが、最大の強みは心理カウンセラーとして顧客の真の要望を聞き取る力である。この強みを活かしてオプションサービスの洗い出しと、今後の経営の方向性を定めることに注力した。
サービスの提供価格を正確に算出できるようになりました。また、顧客の真の要望をはっきりと掴むことができ、今後の方向性に迷うことがなくなりました。オプションサービスの適用の方法も、具体的に実施できるように取り組んでいきたいと思います。