福祉・介護タクシー業をシニア創業し、地域社会に貢献
復興の途上にある石巻市で、高齢者が移動に不便を感じる現状をどうにかしたいと福祉・介護タクシー業の創業を決意した相談者。事業計画の策定を進める中で、地域の声を聞き「地域住民の足」としてスムーズに事業をスタートさせる。
相談者の住む石巻市渡波黄金浜地区は、東日本大震災で甚大な被害を受けた地域のひとつ。道路等のインフラや住宅の再建は徐々に進んでいるものの、復興はいまだ途上にある。さらに、この地域は高齢化が進んでいることもあり、通院や買い物の際の移動に不便を感じる高齢者が多かった。相談者は、こういった地域の現状を危惧し「地域高齢者の方の役に立ちたい」という強い想いを持つようになった。そこで、前職の自動車学校の退職を機に、介護ヘルパーの資格を取得し福祉・介護タクシー業を開業することを決意。地元金融機関に開業資金の融資の相談に赴いたところ、事業計画の策定を勧められ当拠点を紹介された。
相談に対応したコーディネーターは「地域高齢者等の役に立ちたいという相談者の強い想いを感じた」と初回相談時を振り返りつつ、事業に必要な許認可の情報や顧客確保の具体策など不足している部分を補足することで事業開始までの道すじは見えると判断。石巻地区で開催している定期相談会で、月に一度進捗を確認しながら相談を進めていくこととなった。
まず、事業の具体的利用者として想定される高齢者の居住状況を把握するため、国勢調査のデータを活用し石巻地区のエリア分析を行ったところ、相談者が自宅兼事務所を構える予定の地区は市内で最も高齢者数が多く、車で10分圏内に約18,000名の高齢者が居住していることが判明。合わせて競合事業者を調査すると、福祉輸送車両を有する市内タクシー会社はあるものの、介護ヘルパーの資格を有するドライバーで運用している個人経営の事業者は少ないことがわかった。
このことから、事業性は高いと判断し相談者に許認可手続きのアドバイスを行う一方で、初期の顧客獲得や広報の検討のため、事務所周辺の高齢者の通院・買物等の際の移動方法や既存事業者の利用状況等について情報収集するようにアドバイスした。
相談者が近隣高齢者の声を聞くと、通院や買い物の移動に不便を感じている住民が多かったことから、事務所周辺の住宅を中心にチラシのポスティングを実施し顧客開拓を行うこととした。
こうした取組みの末、平成29年8月上旬に相談者の自宅を改修し事務所を開所。併せて運送事業の許可及び福祉輸送車両の検査も終え「介護タクシー 綿の葉」として事業をスタートすることができた。顧客の開拓は運送業務の合間を見ながら地道に行っているが、まずは顔見知りの近所から周知活動を行っており、その口コミの効果も表れ知名度も徐々に向上。通院日に合わせて利用する顧客からの定期予約が入るなど着実に顧客数を伸ばしている。
相談者は「具体的に相談に乗ってもらい、順調に事業を立ち上げることができた。これからも住民の方の足として活用していただけるように努力していきます」と支援を振り返ると共に、地域への想いをにじませた。