価格設定がもたらす粗利への影響と自社の強みに気づいた事業者の行動変化
レンタルピット(プロ仕様の設備工具(※リフト・工具・タイヤチェンジャー・塗装ブースなど)を時間貸しし、車両を持ち込んだ顧客が希望する作業ができる場所の提供)サービスを行う事業者。顧客からは「こだわりのある愛車を自身の手で満足いくまで作業ができる。」「わからない点は教えてもらいながらできるので安心。」等の声があり、上級者から初心者まで対応可能でリピート率が高いという強みを持っている。
住 所:非公開
勤務先を定年退職後、趣味であった車に関わる仕事をしてみたいとの思いから開業に至った。車好きのお客様にリーズナブルな金額でプロ仕様の設備を提供したいとこだわりの工具を揃えている。設備投資にかかった費用は退職金にて賄うも、事業をスタートさせてもなかなか利益が出ず、家賃などは自身の貯金を切り崩しながら運営している。この先も貯蓄が減り続けると将来の生活に支障が出ることを危惧して相談に至った。
現状は、固定費を賄うだけの利益が出ておらず、営業利益はマイナス。事業継続のために自身の貯金を切り崩し続けている状況。問題点は、車好きなお客様にリーズナブルな価格で提供したいとの思いが強い為、リピート率は高いものの固定費を賄うだけの利益が出ていないこと。この原因は、サービス、商品ごとの売上構成比の確認、粗利管理ができていないため価格設定を根拠のない「何となく」で決めてしまっていることである。客数を増やすためにサービス内容の一部を値下げする等、粗利が減るスパイラルに陥っている。課題は、自社の強みに気づいておらずサービスの付加価値を価格転嫁できていないことから、価格設定を見直し、収益確保方法の再構築を行うことである。
ただ単に価格を一律に上げればよいというわけではなく現状で利益がどのくらい必要なのかという点をまずは設定し、それから必要な売上高を算定し、目標売上達成のために価格をいくら上げないといけないかを段階を追って考える必要がある旨をアドバイスした。そのためにはサービスごとの粗利管理が必要であるためExcelを用いた計算方法及び埼玉県庁価格交渉支援ツールを紹介した。また、自社の棚卸を行うためにSWOT分析を行い「強み」である粗利が高いものを探したところ塗装ブースのレンタルである事が判明。現状では塗装ブースのサービスがあるというだけの広告であるため顧客のニーズを呼び起こさせるためにシーズに着目しこちらから提案するような形にするようアドバイスし理解を得た(車以外の者も塗装可能等)。
粗利管理をExcelで行い、「自社の「強み」となるサービスは何か」という点に注意しながら価格設定を見直し、サービスによっては最大40%価格を上げたところ、創業後初めて自身の貯金を崩すことなく費用を支払うことができたとの事。既に他社にはない差別化されたサービスを提供しているため、今後、新サービスを考案する際には儲けを出すためには損益分岐点を超える粗利益(付加価値)がある事を認識すれば更なる成長が見込めると考える。
「売上の向上と利益の向上は変動費が関係するため比例しない。」という点に重点を置き支援した。その中で粗利の重要性を認識していただくために売上から利益までの流れについて図を用いながら、イメージが湧くよう説明した。できる限りその場限りにならないよう将来を見据え相談者にどれだけの利益が必要なのか目標を設定し固定費・原価を賄うためにはどれだけの売上が必要なのかを理解した上で戦略的に単価設定するよう促した。
教えてもらった通りにExcelに入力したところ、初めて「利益が出る仕組み」を理解し、利益が少ない事を知りました。また、改めて数字の大切さに気付けました。価格転嫁したことで家賃などの固定費を創業以来、初めて払えるようになったことは大変嬉しく思っており、今後も続けていきたいです。