価格転嫁の目標設定と交渉の実行
人材コンサルタント業、労働者派遣事業、職業紹介事業を営む小規模事業者。創業10年未満の会社ではあるが、営業力を強みに取引先からの信頼は厚く、堅実な事業経営をしている。
住 所:非公開
創業10年未満の会社ではあるが、創業以来着実に事業基盤の拡大を図ってきたところ、新型コロナウイルス感染症が第5類感染症に移行してから、世の中の人手不足が一段と深刻な状況となっており、派遣等にかかる人件費は上昇傾向にある。創業時から当拠点に相談していたため、今後の対応について相談するに至った。
まずは、会社全体の財務状況を確認・分析し、価格転嫁の重要度合いを把握した。そのうえで、適正利益水準を確保するための損益分岐点売上高を算出し、価格転嫁および顧客数増加の両面から、課題を整理した。
毎月の経営会議を通じて、会議の議題に「価格転嫁」と「新規顧客増加」の項目を追加。具体的な目標件数や金額を設定し、ダメもとでも取引先に提案することを続けた。その際に、「何となく値上げさせてもらえませんか」という弱気な姿勢ではなく、会社の存続がかかっており、背に腹は変えられないといった覚悟を持って1社1社交渉に挑むこと、そのためには具体的に価格引き上げの根拠を自分たちが納得した上で、説得力を持って対話をすることをアドバイス。また、一般的な交渉術のノウハウについてもアドバイスを行った。具体的には、全社の決算状況からおおよそ1件当たりの契約金額の値上げ幅を算出し、自信を持って提案することができた。
実際に取引先へ提案をしてみると、相談者の状況やこれまでの誠実な取り組みに対する高い評価から、価格転嫁に応じたり、一気に引き上げられなくても段階的な引き上げを検討いただけたりする取引先も出てきた。今後の展望としては、全く聞く耳すら持ってもらえないケースもあるため、取引方針の見直しも含めて、粘り強く価格転嫁の交渉をするとともに、自社のサービスの付加価値を高めることで交渉力を高めるため、関連する新規事業の展開も検討している。
価格を転嫁することで、取引が無くなってしまうのではないかという不安を抱えている相談者に対して、やむを得ず行動するのではなく、自分たちの事業目標のため、積極的な挑戦に向けての内発的動機付けを行い、相談者の心理面からモチベーションをアップさせる対話術を使った。
単に価格転嫁の交渉をするのではなく、様々な準備をしてから交渉することで、心理的な面で覚悟も決まり、思い切って交渉ができました。交渉とは、一方的な要望を伝えるのではなく、相手のメリットも考えて提案しながら、お互いに協力して着地点を探すという交渉術の助言がとても参考になりました。