工賃作業の価格転嫁 | よろず支援拠点全国本部

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工賃作業の価格転嫁

当社は電気設備の設計と組立加工を事業としているが、売上の約80%~90%は中堅の電気設備メーカーであるC社から受託した製品の組立加工となっている。製品は一品一葉の受注生産品で、一部の汎用部品を除き、専用部品は全てC社から無償支給されている。また、C社が顧客に納入した設備でA社が組立加工を行ったものについては、アフターサービスについても、C社の指示に基づいて納入先に出張して行うサービス業務も受託している。

公開日: / 都道府県:山梨県 業種:製造 課題: 価格転嫁

非公開

住 所:山梨県甲斐市

当社は電気設備の設計と組立加工を事業としているが、売上の約80%~90%は中堅の電気設備メーカーであるC社から受託した製品の組立加工となっている。製品は一品一葉の受注生産品で、一部の汎用部品を除き、専用部品は全てC社から無償支給されている。また、C社が顧客に納入した設備でA社が組立加工を行ったものについては、アフターサービスについても、C社の指示に基づいて納入先に出張して行うサービス業務も受託している。

公開日:
都道府県:山梨県/業種:製造/課題:価格転嫁

非公開

住 所:山梨県甲斐市

目次

  1. 現状
    事業承継したての女性経営者
  2. 課題
    赤字下の事業承継
  3. 支援内容
    コスト構成要素毎の価格交渉
  4. 支援の成果
    組立作業工数の見直しで合意

現状
事業承継したての女性経営者

相談者は1年前に事業承継したばかりの新社長で、今まで製造業に従事した経験がない女性経営者。ネットワーク作りを目的に経済団体職員と一緒に情報交換のために来訪した際に、収益力が乏しい旨の話があったことがきっかけで、価格転嫁に係る支援を開始。

課題
赤字下の事業承継

当社は先代社長が約40年前に創業し、1年前に現社長(創業者の親族)が承継したが、直近数年間にわたり赤字決算が続いている。主要客先であるC社からは製品図面と専用部品の無償支給を受けて組立作業を行っているが、組立作業に必要な工数(Man・Hour)と賃率(\/Hour)はともにC社単独の査定によるものであり、当社に見積り依頼が来ない形で発注金額が決まっている。賃率は20年以上改定が行われておらず、また、当社は改定要求も出していなかった。しかし、賃率については昨年C社より約10%アップの通知があり、その通り実施された。当社が自社調達している汎用部品の費用は製品受注の都度実費請求という形式になっているが、その単価の見直しも行われていなかったため、最近の資材高騰により逆ザヤとなっていた。また、赤字決算が続いていたため、従業員の賃上げも数年間行われていない状態であった。

支援内容
コスト構成要素毎の価格交渉

当社においては、「コスト=組立工数×賃率+自社調達部品代」であるため、工数と賃率と自達部品代において、客先の査定と現状の差を把握し、交渉方針を設定することとし、以下を実施した。まず、工数では、組立作業と出張工事作業について、作業の段取りから完成後の事務処理までの全てのプロセスを洗い出し、それぞれのプロセスにかかっている時間を調査した。その結果、補助的なプロセスの工数が支払い対象から外れていることと、製品の種類によって必要工数が大きく異なることが判明したため、客先査定工数と実際工数の差が大きな製品群に絞って工数見直しを要求した。次に工賃では、減価償却などの諸経費を含まない工賃を計算したところ、改定後の賃率を更に30%以上上げてもらう必要があることが確認できたが、同一期内に二度目の賃率改訂要求をすることになるため、今期は工数見直しに絞って交渉することとした。さらに、自社調達部品では、逆ザヤとなっている部品について、最新の単価リストを提出し、部品費の改定が認められない場合は、専用部品と同じく無償支給としてもらう方針で交渉することとした。

支援の成果
組立作業工数の見直しで合意

交渉の結果、自社調達部品については最新の単価リストが100%承認され、工数については出張工事作業の事前準備と事後の報告書作成のプロセスが支払い対象時間となったことから、年間で4百万円程度の売上増となる見通し。組立作業の工数については今年度(令和5年度)内での妥結はできなかったが、支払い工数が過小であることはC社に認識してもらえたため、来年度改めて交渉を申し込む計画。

事例を振り返って

価格改定交渉は下請事業者からの一方的な「宣言」ではなく、合意に至るための「コミュニケーション」であり、交渉をスムーズに進めるためには価格改定の必要性を親事業者に十分に伝えることが第一歩であることを理解していただくことに留意した。相談者は当社での勤務経験なく事業を承継されており、事業全体の理解が十分でない面があったため、コストデータの収集を通して経営管理のポイントを把握していただくことを目指した。

相談者の声

出張準備費についてはアドバイスに従って交渉した結果、こちらの要求どおりの回答が得られました。これによって得られた売上げ増加分の一部を使って4月より賃上げをする予定です。来期に持ち越しとなった組立工数の見直しは更なる賃金UPのための原資として確保する必要があるため、今後も手を緩めず粘り強く話し合いを続けていきたいので、継続的な支援を期待しています。

支援した拠点

山梨県よろず支援拠点

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