エクセルによる予実管理で生産性と見積もり精度を向上
昭和50年に相談者の父が創業。金属を切断、溶接し、建築の骨組みや工場設備などで使う部材などをつくる製缶業を営む。相談者は愛知県の製鉄所で約8年間勤務、現場での技術のほか、「ジャスト・イン・タイム」「カンバン方式」などのトヨタ式の生産管理の手法を身につけ、平成18年に同社に入社、のち事業を承継する。近隣の建設業者を主な取引先とするが、近年は製鉄業や化学プラントなど、より広い業界に販路を拡大、関東圏にも顧客を持つ。
代表者:南 慎一郎(みなみ しんいちろう)
住 所:〒759-2301 山口県美祢市於福町上3565-1
連絡先:0837-56-0937
昭和50年に相談者の父が創業。金属を切断、溶接し、建築の骨組みや工場設備などで使う部材などをつくる製缶業を営む。相談者は愛知県の製鉄所で約8年間勤務、現場での技術のほか、「ジャスト・イン・タイム」「カンバン方式」などのトヨタ式の生産管理の手法を身につけ、平成18年に同社に入社、のち事業を承継する。近隣の建設業者を主な取引先とするが、近年は製鉄業や化学プラントなど、より広い業界に販路を拡大、関東圏にも顧客を持つ。
代表者:南 慎一郎(みなみ しんいちろう)
住 所:〒759-2301 山口県美祢市於福町上3565-1
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相談者が携わる製缶業では、切削、孔開けを手がける切削加工業者と連携して製品を仕上げるケースが少なくない。「ただ、切削加工事業者に加工を依頼する場合、仕掛品の行き来が発生し、時間的なロスが生まれてしまいます。また工程の管理ができないため、納期にバッファを多く含む必要があります。業者のマージンも上乗せされるため、価格競争力でもマイナスです。急ぎの見積もり依頼の際、切削加工事業者と納期や価格の調整が間に合わず、対応できないこともありました」(南さん)そこで同社はマシニングセンタを導入、オペレーターも配置し、切削加工も内製対応できる体制を整えた。「これは得意先にも好評をもって迎えられ、新規顧客への営業活動も有利になりました。ところが社内の工程が製缶と切削に多重化したことから、これまでの紙ベースの管理では全体を見渡すのが難しくなってしまったのです」(南さん)このままでは大きなミス、納期遅れも出かねないと考えた南さんは、COにこの課題の解決策について相談することにした。
COはまず、同社の予実管理についてヒアリングと分 析を行い、問題点を洗い出した。「同社では相談者が工程管理を行っていましたが、業務の範囲は作業 話し合う南さんとCO指示書の作成まででした。その後の管理は現場に任され、予定と実績の突合がほとんど行われていなかったのです。またスケジュールや原価管理については相談者の経験や勘に基づくところが大きく、相談者自身が経営や営業、さらには現場作業も兼任している状況では、受注が増えれば増えるほど、紙ベースでの工程管理の負担が大きくなる状況でした」(佐伯CO)ただ同社には、約50年の経験をもつ熟練の技術者が複数名在籍し、長尺物であっても歪みの少ない製品を製作できる数少ない企業として知られていた。「製缶加工で他社にない技術を持つ同社が切削加工まで一括して受託できることは、大きな競争力になると考えました。そこで『最小限の入力で予実管理できる仕組みを構築し、相談者の負担を減らし、生産性を高めること』を目標に、工程管理の改善をめざしました」(佐伯CO)
改善作業に向けては、ITに強いCOも新たに加わることとなった。「工程管理のために専用のソフトを導入するという考え方もありますが、それには少なくない費用がかかります。また自社に合わせカスタマイズする場合も費用が上乗せされます。そこで本件ではExcelを利用し、予実管理することを考えました」(佐伯CO)手間のかからない工程管理を実現するには、工程の各段階の可視化が有力な手法となる。「関数を使い、Excelのシートに品名、得意先名、予定工数、作業開始予定日と終了予定日などを入力すると、ガントチャートが自動的に生成される仕組みにできるようアドバイスしました。作業者はチャートで全体のスケジュールが把握できますし、実際にかかった工数を入力することで、予実管理が実現します。また作業者が“気づき”を入力する欄も設けています。管理者はこの予実の比較に加え、この “気づき”を参照することで、より正確な見積や予定工数の想定が可能となります」(篠田CO)
Excelを使った工程管理は令和4年2月にスタートし、すでに同社の現場には欠かせないものとなっている。「以前はほぼ自分の頭のなかで現場の状況を考えていたので、たとえば連続する工程で手待ち時間が出るなど、細かいムダがありました。また自身の出張の日程も『このあたりなら大丈夫だろう』という大雑把なスケジュール管理でした。しかしガントチャートで工程が可視化されたことで、現場では手待ち時間がなくなり生産性が向上、自分のスケジュール管理も正確になりました。納期が厳しい案件でも、チャートに工数をあてはめ、ピンポイントで受注できるようになりました」(南さん)さらに紙ベースでは難しかった過去のデータの振り返りが容易になったことで、類似製品を受注した際、ローコストかつ短期の納品も可能になったという。「生産性の向上は現場の待遇にも直結します。業績を高め、よりよい労働条件を実現すれば、たとえ小さくても、若者が魅力を感じる会社になれるはずです。そうした会社をめざし、優秀な若手の活用をバネに成長を続けていきたいと思います」(南さん)
相談者は経営と工程管理、現場作業の兼任で疲弊しきっているようでした。そのため会社の現状、相談者が考える理想像をじっくり聞くことから取り組みました。製缶にはCADを使うので、PCとの親和性は高いです。一般的なPCに、ほぼインストールされているExcelなら、大きなコストをかけずに工程の可視化ができると考えました。そして現場を巻き込む上では、「簡単に入力できること」を念頭に、予実管理、スケジュール管理に絞り開発をサポートしました。現在のバージョンは納期順の並べ替えや原価計算まで盛り込んではいませんが、相談者の判断次第でそうした機能を追加することも考えています。
Excelそのものは以前から使っており、簡単なマクロくらいなら習得していましたが、数字の入力でスケジュールをグラフ化できるといったことが可能だとはまったく知りませんでした。面倒な工程管理がなくなったことで、自分のやるべき経営や営業活動に割く時間が増えました。また現場の作業員も工程全体を見渡せること、手待ち時間がなくなることなどで、モチベーションが向上していると感じています。今回のITの活用で実現した生産性の向上や時間の効率的利用を生かして技術をさらに磨き、高品質の製品や、適正な価格での受注につなげ、高い利益を生む製品の受注増につなげていきたいと思います。