自社状況を整理して数値化することで強い説得力を持つ価格交渉に
編み地に毛羽などを織り出した「パイル織物」では日本唯一の産地として知られる和歌山県北部に昭和10年に創業。新幹線N700系グリーン車のシート生地などの車輌用シート地(モケット)、ブランケット類、玩具用生地等を自社工場で製造しており、パイル織物の国内生産トップ3に入る会社である。他社とのコラボレーションや、自社ブランド「こうやブランケット」「モケッシュ」の製品開発を積極的に進めている。
代表者:米阪 佳久
住 所:〒648-0086 和歌山県橋本市神野々720番地
連絡先:0736-32-1404
URL:https://www.yyypile.com
編み地に毛羽などを織り出した「パイル織物」では日本唯一の産地として知られる和歌山県北部に昭和10年に創業。新幹線N700系グリーン車のシート生地などの車輌用シート地(モケット)、ブランケット類、玩具用生地等を自社工場で製造しており、パイル織物の国内生産トップ3に入る会社である。他社とのコラボレーションや、自社ブランド「こうやブランケット」「モケッシュ」の製品開発を積極的に進めている。
代表者:米阪 佳久
住 所:〒648-0086 和歌山県橋本市神野々720番地
連絡先:0736-32-1404
URL:https://www.yyypile.com
相談者は、長年取引のある会社を中心に、顧客との価格交渉を定期的に進めていたが、車輌用シート地を納入している当該顧客には、なかなか価格転嫁を認めてもらえず、結果として長年価格転嫁ができていない状態であり、相談者もどのように交渉を進めたら良いか考えあぐねている状態であった。この状況を打開すべく、当拠点に相談されたものである。
会社全体の経営状況については、特段の問題はない。コロナ禍による売上の落ち込みは経験しているが、単年度の赤字にとどまっており、財務体質上も懸念すべき点はない。しかしながら、当該顧客向けの出荷の多くを占める車輌用シート地については、職人による手作業の割合が高いこと、専用設備による生産となっていることなどから、生産コストが売価で回収できていない状況が続いている。また、これまで顧客に対する価格交渉の方法及び進捗を確認したところ、価格設定の妥当性を示す資料を当該顧客に提示できていなかったことから、当該顧客は提示された価格の妥当性について十分に判断できなかった可能性が考えられた。
過去5年分の財務状況を確認・整理し、財務指標から会社の経営状態及び課題を把握した。そのうえで、当該顧客に対する製品について、原価管理(人件費の管理、および原材料コスト・歩留の管理)の状況をヒアリングにて確認し、当該顧客に対する価格の妥当性を示す情報として、車輌用シートの製造プロセス(製造工程)、各プロセスに携わっている要員(=人件費)の2つの情報をとりまとめ、必要に応じて当該顧客に提示するように提案した。
当該顧客については、価格の面では目標には届かなかったものの、一定レベルの価格転嫁が承認された。ただし、当該顧客の強い意向により、当初目標としていた人件費の転嫁ではなく、光熱費等の上昇分に対応する転嫁として認められており、当該顧客が人件費の価格転嫁に強い抵抗感を持っていることが浮き彫りになった。今回の取組でとりまとめた製造プロセス及び要員の情報は、自社工場を管理し生産性を向上するための指標として使えることを納得してもらい、今後の価格交渉だけでなく、自社工場のさらなる改善を進めることにもつながった。
価格交渉が進まないのが当該顧客のみであったこと、他顧客に対しては価格の妥当性を示す資料を提示する必要がなかったことから、こうした価格交渉のための情報について、これまで必要と考えていなかったと想定できた。これらの情報は、価格交渉だけでなく、工場を管理するためにも必要であることを伝えるとともに、顧客に対して自社も相応の努力をアピールするための情報(武器)になることを伝えた。
理論的に価格交渉のプロセスを学ぶことは非常に有意義でした。感情的に交渉するのではなく、具体的に数値を整理して報告する交渉力が身についたと感じています。また、大手の調達の方がどのような考え方で交渉に当たっているかが知れてよかったです。新たなサービスを提案し、トータルの価格向上を目指すやり方もあることがわかりました。