卵製品の開発で創業2年目にして月商が前年比8割増
飼料にこだわった特殊卵の生産を軸に創業を目指す相談者。長年卵関連の仕事に従事してきたが、創業の経験はなく総合的な支援を必要としていた。しかし、本当に必要だったのは、開発商品のコンセプト策定から、販路開拓まで多岐にわたる専門的な支援だった。
長年鶏卵関連の仕事に従事してきた相談者は、少し高くてもおいしい卵を食べたいという最近の消費者ニーズに対応するため、飼料にこだわった特殊卵の生産と特殊卵を原料とした鶏卵加工品の開発を進めていた。これまでに構築してきたネットワークを活かして、特殊卵を生産する養鶏業者と鶏卵加工品の製造を行う社会福祉法人との連携体制が整ってきたが、創業にあたっては総合的な支援を必要としていた。そこで以前支援事業の活用で知り合った(公財)富山県新世紀産業機構の専門家に相談したところ、当拠点の紹介を受け来訪相談に至った。
相談のきっかけは法人設立に関する相談であったが、食品開発を専門とするコーディネーター(以下CO)が相談者の事業計画のヒアリングを行ったところ、法人設立の手続きや融資などの創業支援にとどまらず、開発商品のコンセプト策定、加工技術、品質管理、販路開拓、さらには養鶏業者や社会福祉法人との連携など、事業全体にかかる支援が必要であることが明らかになった。そこでCOは、課題を各フェーズに分け、それぞれについて多岐に渡る専門的な提案を行った。
創業支援については、法人設立の費用を抑えるための定款の作成や公証役場での認証、法務局での登記手続きなどの一連の流れを説明し、自身で対応可能な手続き等を行うための支援を行った。また、COが自身で対応できない点に関しては、司法書士などに相談することを提案した。
商品開発についても、たとえば養鶏業者と共同で生産した特殊卵は、一般卵に比べ「アミノ酸」、「ヨード」、「ビタミンA」、「ビタミンD」、「ビタミンE」、「DHA」、「ミネラル」を多く含むことが期待されていた。パッケージに記載するためには根拠となる分析値の提示が求められることを説明し、栄養成分の分析を行うようアドバイス。
それぞれのフェーズに対しての提案ののち、定款の原稿と法人設立に必要な書類等を作成し、平成28年7月にバリューフーズ株式会社を設立。また、税務署への「法人設立届出書」や、年金事務所への健康保険・厚生年金保険の「新規適用届」など自身で対応可能な手続きを行うことにより、法人設立の費用負担を軽減することができた。
商品については、養鶏業者と飼料等を工夫して共同開発した「特殊卵」の栄養成分分析について、富山県農林水産総合技術センター食品研究所に相談。ビタミンやミネラル、DHAなどの栄養成分分析を行い、パンフレット等に記載して特長を裏付ける根拠なった。さらに温泉卵の「宝泉」を、富山県知財総合支援窓口の支援員のアドバイスを受け商標登録した。また、シフォンケーキは北野エースの富山店に採用されたことにより生産量が増えるため、「新創業融資制度」を活用してオーブンを導入。月産2,000個を生産できる体制が整った。
販路については創業1年目は、地元北陸エリアでの当社の「特殊卵」とその卵加工商品の認知度を高めるため、富山県や石川県のこだわりスーパーを中心に販路開拓を実施。地元新聞に事業内容を紹介して、プレスリリースされた。食品関連展示会等には、来年度の出展を計画中である。
これらの取組みの結果、富山県と石川県の食品スーパー十数社への「特殊卵」と「温泉卵」の販売、さらに平成29年10月からは、「シフォンケーキ」が北野エースの富山店に採用されたことにより、最近の月商が創業1年目の平均月商の8割増となっている。創業2年目である今年度の売上は、3,000万円を超えることが予想される。