経理の見える化から株式譲渡による経営安定化まで5年間かけ伴走支援
昭和44年設立。主に製菓製パン事業者向けミルクフレーバー、バターフレーバーなどを製造販売する食品香料メーカー。開発段階から顧客と協業し原材料の開発、製造、供給までワンストップで担うケースもある。芳香除菌スプレーなど、コロナ禍に対応するBtoC型の新規事業開発にも取り組む。
日東香料株式会社
代表者:今井 佳代子（いまい かよこ）
住 所:〒153-0053 東京都目黒区五本木2丁目25番12号
連絡先:03-3715-3442
目次
- 報酬減額で黒字確保見込むも当人の同意が得られず暗礁に
- 会社の財務情報を共有、現状の理解を促し協力体制の構築へ
- 取締役会で経営情報を公開、今後の経営体制健全化のため会計事務所も変更
- 株式譲渡で経営を安定化、事業再構築のため新規事業への参入も
報酬減額で黒字確保見込むも当人の同意が得られず暗礁に
平成26年、相談者は高齢の父の後を継ぎ同社の3代目社長となる。しかし平成28年4月期の決算は一部の大口顧客の不振により売上高が約20％減少し、営業赤字転落の危機が訪れた。赤字決算の回避には、相談者の叔父である2名の役員の高額報酬減額が不可避であったが、株主でもある叔父たちを説得することはできなかった。このままの状況を放置すると事業存続の危機もありうると考えた相談者は、当拠点へ相談に訪れた。
会社の財務情報を共有、現状の理解を促し協力体制の構築へ
顧客は現会長の父と役員の叔父2名が分担し利益を分け合う協定で運営されていた。COはその内部体制をヒアリングし、3名の利益配分は20年以上前の同社のコスト・利益構造をベースに行われていること、現在はさまざまなコストが上昇し利益率が低下していること、世代交代が進み現在は叔父たちが実務から離れていること、会計事務所は月次決算を行わず経理や財務の情報は役員の叔父2名には公開されていないことなどを確認した。赤字決算を回避し会社を存続させるには、叔父2名に事業の全体像を共有し、安定して事業継続するために協力をお願いすることが必要だと考えた。
取締役会で経営情報を公開、今後の経営体制健全化のため会計事務所も変更
COは相談者に、取締役会を開き、直近の決算報告と次期経営計画を発表し、財務三表の要点を説明したうえで、叔父2名には来期黒字決算にするための役員報酬減額に同意してもらうことを提案。加えて、部門ごとの貢献利益を算出し、現在の報酬が貢献度に比して高額すぎるという立証をすることを提案した。その結果、相談者の粘り強い説得で叔父2名は報酬の減額に同意した。さらにCOは、月次決算を励行するために会計事務所を変えることや、資金繰り表の作成に習熟することなどを提案。相談者は経理の勉強も重ね、会社の経理や財務状況を掌握できるようになった。
株式譲渡で経営を安定化、事業再構築のため新規事業への参入も
こうした改革により、平成29年4月期以降は黒字決算基調を取り戻すことができた。また経営の安定化のため、筆頭株主であった叔父から株式の譲渡を受け、相談者は筆頭株主に、また両親を合わせた保有率は67％となり、会社を掌握した。続いて「経営者保証ガイドライン」に基づき金融機関と折衝し、会社債務の連帯保証の一部解除にも成功した。危機を乗り切った同社は、一般消費者向け芳香除菌スプレーの開発、同商品のネットショップ構築、さらには調味料市場への参入準備など、新分野への挑戦を進めている。
“不完全な事業承継”で苦しんでいる相談者に同情し、感情的に巻き込まれそうになりましたが、経営を安定軌道に戻すためには「中立的な立場」を忘れず、公明正大な助言をするよう心がけました。相談者には対立を和らげるために話し合うことや、感情的な口論を避けるため数値での説明をすることをお願いしました。
会社の危機、説得の難しい叔父など、当初は八方ふさがりで途方に暮れていましたが、危機を乗り越える過程で会社法、民法などの法律、会計や金融、経営計画などの実務を実践的に学ぶことができて、経営者として自信がつきました。5年間にわたり辛抱強く伴走し、最適解への途をご支援くださったCOには感謝の気持ちでいっぱいです。
