ドライアイスに代わる新保冷剤の開発を短期間で実現
食品添加物を任意の比率で混合すると、特異な吸熱特性を示すことを発見した相談者。 保冷剤として商品化すべく、専門機関を巻き込み、チームでスピード感を持った開発に成功。 さらなる事業拡大を目論む。
代表者:櫻井 誠也(さくらい せいや)
住 所:玉県鴻巣市糠田2858
相談者は、これまで企業ビジョンとして和食材の新しい可能性を引き出す商品開発に取り組んできた。独自の特許技術によって蒟蒻を液状に加工・製造した「ナノコン」は、食品の低カロリー化材料である。
当拠点がオープンして間もない平成26年6月、相談者は「どこに相談したらよいかわからないので、よろずに来た」と突然、来訪した。自社の蒟蒻製品を製造する際に用いる食品添加物を任意の比率で混合すると、特異な吸熱特性を示すことを発見し、保冷剤としての商品化を考えているがどのように進めればよいか、という相談内容だった。
これが商品化できれば従来の水系保冷剤では困難な冷凍品の保存も可能で、環境保全にも寄与できると相談者は考えていた。自社内でビーカー試験を実施し、基礎データも収集していたが、当拠点に相談にくる前は、周囲からはすぐに真似られてしまうので、ビジネスとしては難しいだろうと冷ややかに見られていた。
しかし、これまでの基礎実験のデータを見ると、顕著な吸熱特性を示す配合比率があること、また混合物の吸熱特性の温度範囲が広いことを示唆する結果で、従来品よりも保冷性能が著しく向上することが予測された。また商品化は自社の既存設備では対応が困難であるため、商品化に当たっては新規の設備投資が必要であった。
商品化を進めるにあたり、競争力をつけるため、当拠点では特許出願や技術ノウハウの確立等の知的財産への取り組み、さらに製造技術開発を進めることを提言した。
具体的には、特許出願に向け、先行情報の調査のため知財総合支援窓口の専門家派遣制度を紹介。また設備導入という点では、ものづくり補助金への申請のため、書面作成上の助言をするために産学連携支援センター埼玉の支援サービスを紹介した。
その後、埼玉県産業技術総合支援センターの委託試験による冷凍特性の試験も受けて、冷媒としての基本仕様が確定し、保護すべき知的財産も明確化した。また設備面では、補助金を獲得することができ、冷媒充填装置等の専用設備の導入が進められた。
当拠点の様々な提案と相談者の取り組みによって、平成26年日本ニュービジネス協議会ニッポン新事業創出大賞アントレプレナー部門最優秀賞、グローバル部門奨励賞を受賞。埼玉県が主催する第4回渋沢栄一ビジネス大賞のベンチャースピリット部門の大賞を受賞するなど、同社の新事業は各界から高い評価を得た。
ドライアイスの代替となる保冷剤は「アイスプリズム」として商品化され、平成28年6月には大手食品宅配業者に向けた本格的販売がスタート。もともと既存の取引先からも商品化について引き合いがあったこともあり、月産約1万本が販売され、月当り数百万の売上げが達成されている。今後は取り扱い拠点の拡大も期待され、増産体制に取り組んでいる。相談者は「よろず支援拠点に相談したことが革新的な商品の短期開発につながった」とスピード感への満足を語った。