自社生産米を活用したゼロからの商品開発で売上拡大を実現
建設業から農業に参入し、自社生産米を原料とする煎餅の製造販売を行なう相談者。地元菓子店の移転に伴い、その店舗を引継ぎ新たに開業したが、自社生産の商品が煎餅のみで売上げが低迷。商品開発のノウハウがない中、自社生産米を使った新商品開発に挑む。
相談者は建設業から農業に参入し、道の駅・レストランの経営・自社生産米を原料とする煎餅の製造販売を行っており、売上げの柱は米と煎餅であった。地元菓子店の移転に伴い、その店舗を引継ぎ新たに開業したが、自社生産の商品が煎餅のみで売上げが低迷し、商品展開・商品開発が必須であった。相談者は、以前、入広瀬商工会からの紹介を受け当拠点を知っていたことから、自社の米を使用した新商品開発について、相談に訪れた。
相談に対応したコーディネーター(以下CO)は、一番の課題は菓子製造のノウハウに精通した技術者がいないことと、限られた設備で製造しなくてはならないことであると分析。新商品の企画に当たっても、地元色を強く打ち出せるアイディアを生み出すことにも苦労し、試作を数限りなく繰り返したが、製造の知識・技術がないため、自力では修正ポイント・方法を見いだせないため苦慮していたことがわかった。
さらに、製品のアウトラインができても自社生産米を製粉して使用するため、製品に適した粉の粒子の大きさ・配合・製造工程を見つけることが困難であった。
そのほかにも、流通させるに当たり冷凍でのストック、商品のデザインやパッケージに対するノウハウもない状況にあった。
食品加工・製菓が専門分野であったCOは、まず、市販の米粉を使用し、複数の配合を作って試作し、求める食感の配合を確立。相談者が、包餡などの成形技術も未熟であったため、県内の和菓子職人の講師をコーディネートし技術指導に入ってもらうことを提案した。
製造面においては、現在の設備を活かして製造可能な新商品をアドバイスした。
また、商品作りのアイディアを得るため、地元の豪農の館を見学し、歴史や文化・気候などをヒントにすることを提案。試作修正については、その都度訪問するか、宅急便でやり取りをして、評価・修正を行った。その中で、粉の粒子や、水分の吸収率の違いなどを指導。冷凍生地にしても固くならない、日持ちのする生地づくりの手法も提案した。
これを受け相談者は、COの作った配合に従い試作を行い、その都度評価・修正を行った。また、技術指導を受け、製造のノウハウやコツを体得していった。
粉の粒子の検討は困難を極めたが、県の食品研究所のアドバイスも受け、適切な製粉の米粉が完成した。このことにより、食味が向上し、新商品作りが大きく前進。COから提案した酵素の使用により、冷凍流通に対応する生地も完成した。
新商品のモチーフは、全社員でアイディアを出し合い、魚沼の雪深い気候や暮らしをイメージした、「雪」に決定。当拠点のチーム支援でデザイナーの支援を受け、雪だるまをイメージしたかわいらしい商品デザイン・パッケージデザインが完成した。
当拠点のチーム支援の結果、相談から約2年の歳月をかけ、「笹雪だるま」が完成し当社の経営する道の駅と美つ星屋で発売となった。販売に先立ち、にいがた産業創造機構経由で商品を地元新聞等のメディアに紹介できる機会があり、ビジュアルの可愛らしさや、笹や米などのほとんどの原料が魚沼産であるということが注目され、地元新聞等のメディアに取り上げて頂いた。また、商品の可愛らしさや美味しさから、店舗販売の他、贈答用・イベント用の注文がとれるようになり売上拡大に貢献した。相談者は「また買いたい」「お土産に買って来てほしい」と思う一品が完成したと感じています」と完成した商品への自信をにじませていた。