他の支援機関を巻き込みながら害獣撃退装置を開発
新しい事業展開を求め開発に乗り出したのは、レーザーを使った害獣撃退装置だった。 明確なコンセプトを踏まえて、試作品段階から一貫した支援を行うことにより、円滑な商品開発が実現した。
代表者:小野 宏明(おの ひろあき)
住 所:宮城県岩沼市相の原3-4-9
創業以来、宮城県内で精密機械部品の製造を行ってきた相談者だが、近年の競争環境の激変により大幅な受注減となり、新しい事業展開を模索している状況にあった。
そんなとき、農家や全国農業協同組合連合会との交流を通じて農作物への害獣による被害が深刻化していると知った相談者は撃退装置を考案した知人との話から、レーザー光を使った商品を作れないかと思い立った。
この企画を商品化するため商工会に相談をしたところ、宮城県商工会連合会と当拠点を紹介されて相談に至った。
作りたい商品のコンセプトは明確であったが、新しい分野への参入であるため、市場規模や農家のニーズが正確にはつかめていなかった。そこで、害獣被害実態の把握と、競合商品の調査を先行的に行う方針を立てた。折しも害獣防止電気柵での死亡事故の発生がニュースとなり、これを受けて既存商品の分析を入念に行うことになった。
調査の結果、野生鳥獣対策の法制化により、原則として捕獲や殺傷、採取が禁止されているため、威嚇による害獣撃退が有効だと分かった。その中で商品化を考えていたレーザー光を使う方法は、防護柵設置よりもコストを低く抑えることができ、価格競争力も高いことが判明した。
ビジネス面での話を詰めていく前に、まずは試作品を農家に試してもらい、機能・性能面の評価や価格に関する要望を集めることを提案した。農家に対し、現場で使用した際の基本機能についてコメントをお願いするとともに、性能の客観性を担保するために公的試験研究機関のデータも収集するようにアドバイスした。
また、事業化を円滑に進めるために、並行して商品ネーミングの考案およびロゴ制作、商標登録の提案とサポートも行った。それを受けて、試作品の発表会なども実施し、営業に使えるデータを集めていった。
試作機のモニタリングを依頼した農家などからは、非常に高い評価が得られた。昼夜問わず害獣を駆除できることから、商品化の要望が多く寄せられた。試作品では製作に想定より多くの費用を要したため、設計を見直してさらなるコストダウンを図る必要性も把握できた。
さらに、当拠点が紹介した宮城県発明協会の支援により、商標登録も済ませた。試作機のマスコミおよび関係者への発表会を実施するなど、広報活動も始まっている。
相談者の明確な想いを実現すべく、試作品づくりから一貫して助言を進め、さらに、他の支援機関の協力も得ながら、商品化は円滑に進んでいる。次の段階は販路開拓であるが、手ごたえは十分であることから、新たな主力商品として、経営安定化への寄与が期待される。相談者は「次のステップとして経営革新計画の認定も考えている」と語った。