販売機会をものにし出荷台数が大幅増 新たな商品ラインアップも追加
地震の揺れを感知し自動で鍵が開く「地震解錠ボックス」を開発した相談者。展示会でのPRに加え、自治体を中心に営業活動に奔走するも販売台数は伸び悩んでいた。東日本大震災以降、防災対策への取り組みに注目が集まる中、商機を掴む挑戦が始まった。
代表者:阪田 邦雄(さかた くにお)
住 所:三重県松阪市星合町125-2
相談者は、災害発生時に倉庫や避難所の鍵が自動解錠する装置を内蔵した「地震解錠ボックス」を開発。自治体を中心に販売をしていたが、売上げは伸び悩んでいた。当拠点のコーディネーター(以下CO)と以前から面識があったため、当拠点の開設をきっかけとして、自社が持つ周辺技術の特許出願のテーマを皮切りに、受注が伸び悩む「地震解錠ボックス」の販路開拓についての相談に訪れた。
COはまず「地震解錠ボックス」の販路開拓についてSWOT分析により課題の整理・分析を行った。当該商品の強みは、機械式であるために電気を使わずに、バネなどの原理で地震の揺れを感知して鍵が開く仕組みであること。一方で、弱みとしては世間での認知度が低く、各自治体等に説明しても予算をつけるところまで話が進まないことが挙げられた。また、東日本大震災以降、東南海地震の発生と大津波の到来が予想されているほか、気象変動により豪雨災害の発生の危険度も増加している。これらに対処するための防災ビジネスの市場成長はさらに見込めるものと判断した。その一方で、他社で類似商品が開発・発売されていることは脅威だった。
COは、商品の販売を軌道に乗せるべく、三重県内をはじめ、国内の自治体を対象にした市場調査を行い、彼らのニーズに、よりフィットするような販売戦略を策定することを提案。既存の自動解錠装置をベースに、市町を重点ターゲットとしつつ、市場のニーズに基づく新たな付加価値を加えたコラボ商品開発を進めるとともに、各種補助金の活用をアドバイスした。また、同社は社員5名で運営していたため、事業の拡大には社員教育・育成と新規社員の確保が課題であることも明らかになった。
相談者は、全国の市町の担当者と面談し、ニーズの把握に努めた上で、商品開発を開始。この開発費に充当するため、助言を受けながらものづくり補助金に申請し、経営基盤を固めるため、経営計画策定にも着手した。
相談後、積極的な営業活動で「地震解錠ボックス」は三重県内14市町のほか22都府県の自治体などで導入され、出荷台数は1,000台を突破した。また、現場のニーズに沿った新規商品を企画し、採択された補助金を使って、スマートフォンで解錠できる新商品「地震解錠ボックスSM」を開発。同時に、株式会社淀川製鋼所とコラボレーションし、地震時に自動で解錠できる地震解錠装置付き「ヨドコウ防災倉庫」を開発することが決定。一方、経営基盤を強固にするため当拠点の紹介で「三重県版経営向上計画」に挑戦し、人材育成計画を含む経営計画を策定した。
販路開拓、経営計画など多岐にわたる相談内容にも「的確なヒントがもらえた」と振り返る相談者。当拠点のサポートが、経営の方向性を定める材料としてうまく活かされた事例となった。