新システムのPRを支援し取引も成立事業承継に向け事業基盤を安定化
昭和45年に創業し建築用の鉄骨の製作・施工をする従業員7名の小規模鉄工所である同社。現社長の息子である相談者は、民間企業に就職後、事業承継に向けて同社に戻り勤務している。いざ現場に入ってみると、業界の特徴「3K(きつい・汚い・危険)」と「人手不足」を痛感。技術のある職人の確保が今後さらに難しくなる中、独自に3Dスキャナーや3DCADなど、IT技術の活用による生産性向上を推進。承継に向け事業基盤の安定化に取り組んでいた。その中で開発した新技術を活用し、業界全体の「3K」「人手不足」も解決できる新しい取組みを始めたい、と高知県産業振興センターの紹介で当拠点へ来訪。これからの事業展開について相談に至った。
当拠点のIT担当Coがヒアリングしたところ、意欲はあるものの地方の小さな会社が業界全体を変えるようなアイデアを出せるのか、と気後れもしていた。しかし、相談者の今までの取組みから、一般の鉄工所とは一線を画す技術力・発想力があることは容易に見て取れた。そこから、相談者のヤル気を引き出すことができれば、あとは持ち前の技術力・発想力で動き出すだろうと分析。また、どちらかというと、新しい取組みを開始した後のPR活動が相談者にとっては問題であるとも分析。以上から、「相談者のヤル気を引き出す施策の提供」と「事業展開に向けたPR活動」を課題とした。
相談者の不安を払しょくするため、Coは全国の中小企業が生産現場でIT化に取り組んだ具体的な事例を紹介し、あれこれとアイデアを出し合っていった。そのような中、相談者と付き合いのある企画開発会社の紹介から、既存の技術を深化させた「MR(複合現実)技術を活用した鉄骨加工システム」をNTTドコモと共同開発することが決定。Coは、この技術は「IT化+α」のモデルとして、業界全体の「3K」「人手不足」を解決できるものと考え、今後の事業展開に向けたPR活動への支援を開始。Coは、相乗効果を狙いNTTドコモ側のプレスリリースと時期をあわせて、相談者自らプレスリリースを行うことを提案。プレス先は広報効果の高い日本経済新聞1社に限定。日本経済新聞社高知支局長と日程調整を行ったうえで、NTTドコモの開発担当者を含め関係各者に同席を依頼した。当日の説明にあたっては、実際の操作を交え、利便性が目で見てわかる形でPRするよう提案した。
プレス発表の内容は、日経Web版、翌日には同紙の四国版でも紹介されたことで、関係企業に大きな反響を呼び、当システムの講演会、デモンストレーションのリクエストが相次いだ。全国の13社との取引が成立し、鉄工所だけでなく大手建設会社や上場企業からの引き合いも出てきた。また、自身の取組みに手ごたえを感じた相談者は、高知県地場産業大賞に応募し、産業賞を受賞。認知度は向上し、さらに問い合わせが増えている。新たな収益の柱ができ、相談者への事業承継に向け事業基盤が安定化した。