経営者の高齢化で廃業の危機に直面する老舗漬物店の味を事業譲渡が救う | よろず支援拠点全国本部

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経営者の高齢化で廃業の危機に直面する老舗漬物店の味を事業譲渡が救う

有限会社中央食料品店(譲渡元:相談者) 高知市内の大橋通商店街で漬物屋として昭和13年創業。昔ながらの変わらぬ味を地元 に提供してきた老舗漬物店。 冨士味噌(譲渡先) 高知市内で屋号「富士味噌」(営業所名:宇田味噌製造所)を掲げ、大正8年から今に至るまで、代々受け継がれ てきた昔ながらの伝統製法「天然醸造」を守り続け、味噌を製造販売している。

公開日: / 都道府県:高知県 業種:製造 課題: 事業承継

有限会社中央食料品店/ 富士味噌

代表者:【中央食料品店】近澤 四三男(ちかざわ よおぞお)/【富士味噌】宇田 卓生(うだ たくお)
住 所:〒780-0901 高知県高知市上町3丁目7-27(富士味噌)
連絡先:088-872-6692

有限会社中央食料品店(譲渡元:相談者) 高知市内の大橋通商店街で漬物屋として昭和13年創業。昔ながらの変わらぬ味を地元 に提供してきた老舗漬物店。 冨士味噌(譲渡先) 高知市内で屋号「富士味噌」(営業所名:宇田味噌製造所)を掲げ、大正8年から今に至るまで、代々受け継がれ てきた昔ながらの伝統製法「天然醸造」を守り続け、味噌を製造販売している。

公開日:
都道府県:高知県/業種:製造/課題:事業承継

有限会社中央食料品店/ 富士味噌

代表者:【中央食料品店】近澤 四三男(ちかざわ よおぞお)/【富士味噌】宇田 卓生(うだ たくお)
住 所:〒780-0901 高知県高知市上町3丁目7-27(富士味噌)
連絡先:088-872-6692

目次

  1. 相談のきっかけ
    高齢化による後継者問題と店舗の建て替え問題に直面さらにコロナ禍により売上も低迷
  2. 現状分析・課題設定
    譲渡希望者が現状を把握できるよう事業内容を“見える化”
    効率的に譲渡先を探すための他機関との連携
  3. 提案・実行支援
    同じ発酵食品を手がける事業者からの申出により事業譲渡は一挙に進展
  4. 支援成果と今後の展望
    事業を引継いだ富士味噌の知名度向上にも貢献
    伝統の味はさらなる発展へ

相談のきっかけ
高齢化による後継者問題と店舗の建て替え問題に直面さらにコロナ禍により売上も低迷

店を切り盛りする高齢の相談者にとって、日々の漬物作りが大きな負担に
他者へ譲渡することを決断

相談者は、創業者夫妻の息子と結婚し、まずは「見よう見まね」で漬物作りを学んだ。その後、漬物作りから販売まで自身が中心となり、高知市内でも有数の繁華街で、夫や娘とともに店を切り盛りしてきた。そうした努力の甲斐もあり、店頭で買い求める顧客だけでなく、大口取引先である地元ホテルや老舗旅館からも高い評価を受けていた。しかし、漬物作りは重労働であり、年々衰える体力がどこまで持つのかが不安材料だった。また、老朽化した店舗の建て替え問題も浮上していた。新たに店舗を建て替えた場合、現在の基準に合った設備の導入が必要となる可能性があり、その費用負担も懸案となっていた。そうした中、コロナ禍が到来。その影響は大きく、同社の売上の3分の2を占める小売が低迷。地元ホテルや老舗旅館向けの取引も、旅行や宴会の自粛により大きな打撃を受けた。こうした環境の変化により、相談者はもともと思い悩んでいた事業の今後について、親族以外の他者へ譲渡することを決断。譲渡先が見つからない場合は廃業もやむなしという決意のもと、「使える道具類はそのまま無償で提供する」、「漬物作りのノウハウを丁寧に指導する」などの条件で譲渡先を探すため、当拠点に相談に訪れた。

現状分析・課題設定
譲渡希望者が現状を把握できるよう事業内容を“見える化”
効率的に譲渡先を探すための他機関との連携

若い候補者たちが現れるも設備投資が重荷に
事業承継・引継ぎ支援センターとの連携で譲渡先を探す

長年店頭で自身の漬物を購入してくれていた顧客や、取引していたホテルや旅館に「後継者が不在で譲渡先が見つからない場合は廃業もやむなし」という情報が伝わると、その味がなくなってしまうことを惜しみ、譲渡先を探して事業を続けてほしいという声が多く集まった。COはまず、譲渡希望者が同社の現状をきちんと理解できるよう、現在の事業の売上規模、仕入や卸などの取引先、商品ラインアップなどを相談者にヒアリングし、現在の事業をまとめた資料の作成をサポートする一方、相談者の娘をはじめ、他の親族について「他者への事業譲渡に異議がないこと」をあらためて確認した。これを踏まえ、ヒアリング内容をまとめた情報を公開すると、漬物作りに興味を持つ若者が複数現れたが、新たに店舗を構えるとなると、店舗建て替えと同様に、現在の基準に合った設備を用意するための投資が発生する可能性もあり、若い候補者には資金的にも負担が大きく、話は次々に頓挫した。そこでCOは、より広範囲で譲渡先を探すため、高知県事業承継・引継ぎ支援センターとの連携を図ったところ、同じ高知市内の味噌店「冨士味噌」を営む宇田味噌製造所が、譲渡先として名乗りを上げた。

提案・実行支援
同じ発酵食品を手がける事業者からの申出により事業譲渡は一挙に進展

事業承継・引継ぎ支援センターと作業を分担することでスムーズな事業譲渡が可能に

富士味噌は大正8年創業の老舗で、譲渡先として手を挙げた宇田卓生氏は四代目。同氏は「味噌も漬物も同じ発酵食品。実は、個人的に発酵食品を極めると言うと大げさだが、発酵という化学反応が食べ物をどうおいしくするのか、色々研究したいと思っていて漬物にも興味があった。そこにこうしたお話があり、いい機会だと思った」との動機から譲渡先として名乗りを上げた。また、味噌作りも漬物作りも道具やプロセスに共通点があり、味噌店を営みながら漬物を手がけることは困難ではないと考えたことも理由であった。
事業譲渡にあたり、よろず支援拠点は「引継ぎ前の残り在庫の受入先のマッチング」、「譲渡後の事業者への販路提案、加工場改善提案など、売上拡大、現場改善につながるサポート」を行い、事業承継・引継ぎ支援センターは「事業譲渡に伴う事務や税務の手続、届出のサポート」を行うという担当分けを行い、それぞれ実現に向けての作業を進めた。また、実際に譲渡される道具類の税務上の評価は大きくなく、事業譲渡に伴う負担は発生しなかったため、手続はスムーズに進んだ。漬物作りを行う工場設備も、軽微な改修改善のみで対応可能であったことにより、新たな規制に則った投資も必要ないことが判明。事業譲渡に伴う細々とした確認事項は、事業承継・引継ぎ支援センターの協力によりスムーズに進められた。

支援成果と今後の展望
事業を引継いだ富士味噌の知名度向上にも貢献
伝統の味はさらなる発展へ

地元新聞で大きく取り上げられ知名度向上にもつながった結果、販売は好調に推移

事業譲渡は令和2年11月に契約書を取り交わし正式に決定。契約に先立ち、相談者から宇田氏への「漬物作りのノウハウの伝授」もスタート。この事業譲渡は地元新聞でも大きく取り上げられ、富士味噌の知名度向上にもつながった。この結果、富士味噌では相談者から引継いだ漬物、味噌とも販売が好調に推移している。今回の事業譲渡のスキームを改めて俯瞰すると、相談者と譲渡先が結びつく過程において、当拠点と高知県事業承継・引継ぎ支援センターが積極的な連携により適切なサポートを図れたことが大きな要因である。相談者は自身が愛情を注ぎ、丹精込めて作ってきた漬物が、廃業の危機を乗り越え、次世代に受け継がれていくことを「自分の娘がお嫁に行ったみたい」と寂しさとうれしさが入り交じった思いで語る。宇田氏は「事業譲渡を受け、食品知識の幅も広がり、楽しみながら漬物を作っている。これからも発酵食品を研究していくなかで受け継いだ味を守りつつも、新しい味、新しい漬物作りにも挑戦したい。量よりも質にこだわり、地元高知市のお客様に長く喜んでいただける漬物と味噌を作り続けたい」との将来展望を抱いている。

事例を振り返って

「創業者から引継ぎ、自身で様々な苦労をしながら漬物作りを学び、育てた漬物の味をお客様に伝えたい」という相談者の思いを大切にしつつ、第三者への事業譲渡を実現するため、相談者以外のご親族のご意向もしっかりヒアリングすることを心がけました。今回連携をお願いした高知県事業承継・引継ぎ支援センターとは、情報共有や役割分担を図り、無事契約を締結することができました。この事業譲渡が相談者、譲渡先ともに満足のいく内容となり、とてもうれしく思っています。引き続き、相談者、譲渡先とコンタクトを続け、売上拡大のため必要なサポート、フォローアップを行っていきます。

相談者の声

よろず支援拠点と事業承継・引継ぎ支援センターのおかげで、これまで長年にわたりご愛顧いただき、廃業の危機にあたっては「なんとか存続を」とのお声を上げていただいたお客様、お取引先様のご希望に応える事業譲渡が実現し、本当にうれしく思います。支援を受け巡り会えた宇田様はとても良い方で、漬物作りについてもコツや勘どころの理解も早くて驚いています。商店街にあった以前の店はもうありませんが、譲渡後も自分の店がまだまだ続いているような気持ちです。本当にありがとうございました。

支援した拠点

高知県よろず支援拠点

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