「世界で唯一」の強みを再確認し資金繰り改善と販路開拓に成功
地熱蒸気染めという世界で唯一の商品を持っているものの、低迷していた売上げ。 金融機関からの援助を得て、販路開拓や新商品開発などの攻めの経営に転じ、大転換を図る。
代表者:髙橋 誠行(たかはし のりゆき)
住 所:岩手県八幡平市松尾寄木松川国有林559林班ヲ小班
相談者は、岩手山麓は松川温泉に噴出する地熱蒸気を利用した「地熱蒸気染め」の衣料品を製造・販売する企業である。相談前は催事売上が全体の50%を占めていたものの、近年の百貨店の催事数の減少などに伴い、売上げが減少傾向にあった。
そんな中、ある行政機関から紹介を受ける形で当拠点に訪問、支援が始まった。
まずは詳しくヒアリングを行い、課題と共に相談者の強みを分析した。
その結果、「地熱染色として世界で唯一」や、「多色を絶妙なグラデーションで一度に染める技術」などが強みとして浮かび上がった。逆に課題としては、催事に頼った売上げ、顧客ニーズの把握不足、苦しい資金繰りなどが洗い出された。特に資金面は経営全体に影響を及ぼしており、売上拡大よりも資金繰りの安定化が先決と考えられた。
同時に、商品別、取引別の過去36カ月分の売上げを分析し、伸長している分野、下落傾向の分野を整理した。また、催事や地場ホテル・お土産店など従来まで主流だった取引先への販売が不調であり、一方「ブティック」や「百貨店」など卸売りについては比較的堅調であることもわかった。相談者は催事にこだわりを持っていたが、数字をもとに打ち合わせを重ね、催事には頼れないことを理解してもらうように説明した。
どんな売上げの改善策を行うにしても、まずは資金繰りの安定化は必須であると判断し、社長に了解を得たうえで金融機関へ連絡を取り、現状についての説明を行うことを提案した。そこで現状の経営改善のボトルネックが資金繰りであることを説明し、金利減免を依頼することをサポートした。
商品の主要ターゲットを比較的余裕のある中高齢の女性と定め、「高価格帯の女性向けセレクトショップ」、「百貨店」を販路として重視するようアドバイスした。また地域でブランド力のある小売店舗に対し、ダブルネームで商品開発を打診することで当店舗とwin-winの関係を築いて販路を確保することも助言した。
これらの方針を中心とした提案に相談者が取り組み、SNSなども利用しながら、営業活動も行った。
依頼していた金融機関からの支援も得られ、時間と資金の余裕が生まれたことから結果、営業活動やマーケティングなど、「経営上本当に必要なこと」に注力することができるようになった。
販路開拓においては、ピックアップした店舗に積極的にアプローチをかけており、年内には新規の取引先の確保が見込まれている。Facebookで情報を発信したことで雑誌「LEON」に掲載され、これをきっかけに東京からの注文も入りつつある。ダブルネームブランドの開発も検討いただいている段階だが、期待の持てる状況にある。
相談者は「コーディネーターの『御社はすごい商品を作っている』『その強みを活かせば大丈夫』という言葉が何より励みになった」と語る。必要な施策と「強み」を相談者自らが再確認し、迅速に実行に移したことが、最大の成果といえるかもしれない。