自力再生不能状況から黒字化へV字回復し事業承継でさらなる発展を目指す | よろず支援拠点全国本部

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自力再生不能状況から黒字化へV字回復し事業承継でさらなる発展を目指す

昭和58年に創業し、ブランド豚を農家と開発。ドイツの伝統製法を用い、うまみを引き出すため、手間を惜しまず長期熟成したこだわりのハム製品を製造。自社直営販売所のほかデパートでも販売。健康志向の高まりから、食品添加物、保存料、着色料を使用して いない製法が評判を呼び、事業は順調に拡大。レストランも開業し、観光バスのコースにもなるほどの盛況となる。

公開日: / 都道府県:茨城県 業種:製造 課題: 経営改善・事業再生

有限会社筑波ハム

代表者:齋木 一素(さいき かずもと)
住 所:〒305-0813 茨城県つくば市下平塚383
連絡先:029-856-1953

昭和58年に創業し、ブランド豚を農家と開発。ドイツの伝統製法を用い、うまみを引き出すため、手間を惜しまず長期熟成したこだわりのハム製品を製造。自社直営販売所のほかデパートでも販売。健康志向の高まりから、食品添加物、保存料、着色料を使用して いない製法が評判を呼び、事業は順調に拡大。レストランも開業し、観光バスのコースにもなるほどの盛況となる。

公開日:
都道府県:茨城県/業種:製造/課題:経営改善・事業再生

有限会社筑波ハム

代表者:齋木 一素(さいき かずもと)
住 所:〒305-0813 茨城県つくば市下平塚383
連絡先:029-856-1953

目次

  1. 相談のきっかけ
    「日本一のハムを作る」という意識が先走り赤字が拡大事業存続が危ぶまれる事態に
  2. 現状分析・課題設定
    原価や利益など社内数字の“見える化”と事業承継が一体となった経営再生を模索
  3. 提案・実行支援
    支援チームによる経営改善計画の立案と管理会計手法の導入
  4. 支援成果と今後の展望
    1年かけて経営改善計画を策定金融機関もM&Aありきから返済リスケに同意

相談のきっかけ
「日本一のハムを作る」という意識が先走り赤字が拡大事業存続が危ぶまれる事態に

リーマンショックと東日本大震災の風評被害が経営基盤を直撃
金融機関からの借入返済も長期にわたり滞る

相談者は「いい製品を作るためには、手間を惜しまない」という職人気質であり、こだわりのハムやソーセージは、昔ながらの手法で作られ、時間とコストをかけてでもおいしさを追求していた。それゆえに経営面での堅実性がおろそかになり、財務基盤の弱点となっていた。こうした中、集客のため銀行から融資を受け、レストランを開業するも赤字続きであり、また、直営販売所に賑わいをもたらすため敷地内に用意した外部テナント向け物件の運用も、不動産会社に周辺賃料相場から乖離した年間賃料で長期契約の一括貸し出しを行うなど、十分な検討がなされていないまま、決定されていた。これらの問題はリーマンショックの到来で顕在化し、消費の冷え込みに伴う法人大口ギフトの需要激減、レストランへの来店客減少など、同社に多大な影響を及ぼした。また、東日本大震災後には、福島第一原子力発電所事故のあった福島県に近いことで風評被害を受け、追い打ちをかけるように、さらなる売上低迷を招いた。こうした経緯から、売上の2倍弱となっていた金融機関からの借入返済は長期にわたって滞り、平成26年に作成した経営改善計画も目標倒れとなり、金融機関からは不動産処分による返済、M&Aによる事業譲渡を強く迫られていた。しかし「日本一のハムを作る」という固い意思を持つ相談者は、事業継続を希望して平成30年に当拠点に相談に訪れた。

現状分析・課題設定
原価や利益など社内数字の“見える化”と事業承継が一体となった経営再生を模索

ワンマン体制の見直し・赤字部門の切り離し・”どんぶり勘定体質”の撤廃など課題は山積み

相談当時、創業者は社長であったが、加齢による聴力の低下に伴い、経営者としての社内外でのコミュニケーションに課題を抱えていた。また、自身の職人気質の性格から「採算を度外視してもいいものを作りたい」という意思が強く、同社の収支悪化の一因となっていた。こうした創業者の姿勢は、社内でワンマン体制につながる一方、現場部門長は独断で動くこともあり、社内の経営危機に対する一体感が欠如していた。そこでCOは状況を鑑み、経営再生は事業承継と一体で行うべきと判断した。経営状況の悪化の要因として、十分な検討をしていない直営販売所開設、レストランの赤字拡大が大きいと分析。また、部門別原価や利益などの収支が不明で、いわゆる“どんぶり勘定”での経営が続いていたことが判明。これらの社内数字の“見える化”が必要だと判断した。一方、不動産会社への一括貸し出しは契約に瑕疵はなく、当面は現状を踏襲せざるを得なかった。こうした現状を踏まえ、COは創業者から創業者の配偶者への社長交代を行ったのち、親族内で事業を承継する人物を探すか、社外から経営者を招聘することを提案した。また、同社は、借入返済の停滞、M&Aへの抵抗などから金融機関との信頼関係が希薄になっていたため、事業再生は信頼できるコンサルタントを探し、再生計画立案から実行まで任せることを、あわせて提案した。

提案・実行支援
支援チームによる経営改善計画の立案と管理会計手法の導入

管理会計手法を導入して現場も“数字”を共有
外部から事業承継候補者を選任して協力を依頼

支援方針に基づき、再生への取組を開始。COは企業再生に実績のある支援機関の経営改善チームに協力を仰ぎ、専門家を加えた7名のチームで、金融機関に借入返済の再リスケジュールを求める経営改善計画の立案に着手した。当初、経営改善計画立案に係る費用を抑えるため、認定支援機関を利用する際の費用に対し、一度だけ公的な補助が受けられる「経営改善計画策定支援事業(通称405事業)」の活用を予定していたが、同社は既にこの事業を利用済であることが判明しため、できるだけミニマムな費用で収まるよう、経営改善計画を支援チーム自ら作成することとした。また、立案の過程では、支援チームは同社に何度も足を運び、ヒアリングと調査を繰り返し、債務確認、資産評価、専門家による詳細な部門別収支の把握、予算作成と実績比較を実施。管理会計手法を採り入れ、社内で働く人々が「今まさに作っているもの、売っているものにどれだけの原価がかかり、どれだけ利益が上がっているのか」という情報を社員と共有した。さらに、新たな販路としてインターネット通販に着目。他拠点のCOの協力も仰ぎ、ECサイトを立ち上げた。なお、事業承継については、食品業界で手腕を発揮する齋木一素氏を候補者として選任し、まずは同社商品の販売協力という形で事業参加を依頼した。

支援成果と今後の展望
1年かけて経営改善計画を策定金融機関もM&Aありきから返済リスケに同意

黒字回復を契機に新社長就任インターネット通販も堅調に推移

こうした支援により、当初「M&Aありき」だった金融機関の姿勢も徐々に軟化。支援チームが1年かけて、平成31年にまとめた経営改善計画により、金融機関は返済の再リスケジュールを認め、同社は新たなスタートを切った。レストラン閉店など、大きな痛みも伴ったが、売上の7%が利益となり、黒字決算として実を結んだ。また、資金繰りにも余裕ができ、財務健全化も進んだことから、創業者同意のもと、齋木氏に正式に社長就任を依頼し、事業承継の道筋も整えた。齋木氏は、現場とのコミュニケーションを積極的に行い、部門ごとの風通しも良くなった。この結果、以前のような現場が独断で動くような不適切な状況は払拭され、社内に一体感が生まれている。さらに、新たに注力したインターネット通販は、消費者の健康志向の高まり、そしてコロナ禍での“巣ごもり需要”の後押しもあり、業績は順調に推移。今後はさらに商品の販売状況の分析を進め、外部サイトとの連携やSNSの活用も含め、さらなる拡大を図っていく予定である。また、課題となっている旧レストラン敷地は、第三者へのM&Aも含め、利活用を幅広く検討していく。今後は資金繰りに余裕ができたことを生かして、「事業再構築補助金」を活用して直営販売所を改装し、より多くの集客を目指すことを視野に入れている。

事例を振り返って

405事業を既に利用済であったことから、再生の前提となる返済の再リスケジュールに向けた経営改善計画は、支援チームのメンバーが、同社役員・社員と一丸となり、現地訪問とヒアリングを実施し、できるだけ費用をかけない方法を考え、粉骨砕身の努力でまとめました。また、事業再生に実績のある他の支援機関に協力いただけたことで説得力のある提案が可能となり、それが金融機関の同意につながったと思います。社員を交えたミーティングでは、社員にも問題意識を持ってもらうため、まず「現状と課題」を説明したのち、「みなさん、どうしたらいいと思いますか」と問いかけ、社員1人1人が自分で考え、行動するような習慣づけを行いました。こうした積み重ねで社員に原価意識が徹底され、再生に向けて一緒に努力する動機付けができました。

相談者の声

リーマンショック、東日本大震災という想定外の事態が発生し、その後は業績の落ち込みが続きました。金融機関からは返済を厳しく迫られ、一時はM&Aによる事業売却か、不動産を一部手放すかしかないと覚悟していました。しかし平成30年によろず支援拠点に出会い、親身になって支援いただき、本当に感謝しています。各部門の連携、組織作り、数字の見える化が進み、黒字転換が実現したほか、齋木社長への事業承継で、今後のさらなる発展も見えてきました。

支援した拠点

茨城県よろず支援拠点

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