会社を畳もうという思いが一転“借入金なしの事業承継”へ大きな一歩を踏み出す | よろず支援拠点全国本部

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会社を畳もうという思いが一転“借入金なしの事業承継”へ大きな一歩を踏み出す

大正3年に鍵林商店として創業した、手作り煎餅の老舗。昭和29年に法人化し、鍵林製菓株式会社となる。創業時より伝わる手作りの製法にこだわり、地元茨城県を中心に、ひいきにする顧客は多い。創業時は「かた焼き煎餅」一筋であったが、時流に合わせ輸入米を使った「切り餅」を手がけ、そこから同社が元祖となる「揚げ餅」を生み出す。直営店はかつて近隣のスーパー店内にも出店していたが、現在は工場に隣接した本社直売所のみ。

公開日: / 都道府県:茨城県 業種:製造 課題: 経営改善・事業再生

鍵林製菓 株式会社

代表者:瀬尾 紗衣子(せお さえこ)
住 所:〒301-0837 茨城県龍ケ崎市根町3359
連絡先:0297-62-5881
URL:https://www.kagirin.com/

大正3年に鍵林商店として創業した、手作り煎餅の老舗。昭和29年に法人化し、鍵林製菓株式会社となる。創業時より伝わる手作りの製法にこだわり、地元茨城県を中心に、ひいきにする顧客は多い。創業時は「かた焼き煎餅」一筋であったが、時流に合わせ輸入米を使った「切り餅」を手がけ、そこから同社が元祖となる「揚げ餅」を生み出す。直営店はかつて近隣のスーパー店内にも出店していたが、現在は工場に隣接した本社直売所のみ。

公開日:
都道府県:茨城県/業種:製造/課題:経営改善・事業再生

鍵林製菓 株式会社

代表者:瀬尾 紗衣子(せお さえこ)
住 所:〒301-0837 茨城県龍ケ崎市根町3359
連絡先:0297-62-5881
URL:https://www.kagirin.com/

目次

  1. 相談のきっかけ
  2. 課題
  3. 支援内容
  4. 支援の成果

相談のきっかけ

義父母の余生を見届けての廃業を撤回事業承継に向けて舵を切る

先代の経営者である夫に先立たれ事業を継いだ相談者が心に抱く思いは、工場に隣接する自宅で暮らす先々代経営者の義父と義母が安らかに余生を過ごすことであった。「二人が不安なく老後を過ごしたあとは、負債を抱えた会社を畳もうと思っていたんです。ところが専務から『この会社を継ぎたい。従業員も仕事を続ける気持ちだ』という申し出がありました。そうなると、会社をそのまま任せるのは忍びない、なんとかそれまでに経営を立て直せないかと思案し、『405事業』で経営再建を図りましたが、いい結果は残せませんでした。そんな折、茨城県事業承継・引継ぎ支援センターから送られてきた経営の悩みに関する相談会のハガキのアンケートに『後継者に借入金を継がせたくない』という項目があるのを目にしました。これはぜひとも力を借りなければと、水戸に向かいました。同センターでの相談を進めるなかで、担当されていた方から『別のところでより良い解決方法がみつかるかもしれない』と言われ、紹介された先がよろず支援拠点でした。今考えると、本当に“運命の出会い”だったんだと思います」(相談者)

課題

会社の“リアルな数字”が見えないまま借入金に頼る経営が継続

相談者は先代であった夫から経営を引き継いだものの、経営についての知識は十分ではなく、また経理にも疎かったため、会社の“リアルな数字”を把握できないままでいた。また顧問税理士は、依頼された決算や申告のための数字を整え、書類を作成してくれるものの、会社の経理や財務について議論する機会はなかったという。「借入先が13件あって、その総額がいくらということはわかっていたんです。ただ恥ずかしながら、会社のお金がどうなっているかというのは、今月の売上入金がいくらあって支払いがいくらあるくらいで、今月はなんとかやっていける、足りなくなったら自分の貯金を切り崩して埋めればいい。それくらいの“どんぶり勘定”でずっと経営を続けてきていました。こうした状況について、本当は専務ともきちんと話し合ったほうがよかったのかもしれません。ただ専務は後を継ぐと申し出てくれたものの現場肌の人間で、数字にはノータッチでした。当社の展望に対する考え方の違いもあって、現状がどうなっているか、会社を今後どうやって建て直していくかなど、腹を割っての話し合いができなかったのです」(相談者)

支援内容

社長と専務との業務責任分担を明確化 売上増を目指した施策を遂行

COはヒアリングを通して同社の置かれている状況を把握し、以下の方針を立てた。まずは相談者である社長と、後継者である専務の役割を明確にした。相談者は店頭販売とクラウドファンディングも活用した情報発信を行い、後継者は今後の経営の実務を担当するとともに、得意先回りを強化し売上向上を目指してもらうようアドバイスした。また不明瞭となっている社内の数字を見える化すべく、月次の製造原価を把握するための管理手法などを提案した。さらに赤字拡大の一因となっているスーパー内の店舗について、撤退をアドバイスした。借入金については、新型コロナウイルス感染症対策のための緊急融資を活用、13件の借入を4件にまとめ、金利負担も低減ができた。担当CO以外の3名のCOとチームを組んだことで、多角的な支援が実現した。「クラウドファンディングは以前からやってみたかったんですが、今回の支援で背中を押されました。龍ケ崎市から30万円の補助金がいただけるということで申し込みましたが、80日間ブログを更新し続けることがその補助金の条件だったので、ひたすら頑張りました。社内の数字についてはまず試算表の作成から始め、ある程度資料がそろったところで専務に引き継ぎました」(相談者)

支援の成果

長いトンネルを抜け黒字基調に転換 将来的には設備更新と事業拡大を

クラウドファンディングは目標の100万円を超える150万円が集まり、また固定ファンも増え来店客増につながった。専務は得意先に足しげく通い、原材料費増分の価格転嫁を要請し、トータルで10%の値上げを実現した。さらに赤字店の撤退効果もあり、令和6年上半期の売上は前年比20%増、粗利も10%改善し、黒字化を実現している。「この秋には、横浜で行われた『ふるさと納税』のイベントにも出店して、新たなファンの獲得に励みました。おかげさまで、イベントから龍ケ崎に戻ってきたら、神奈川県からのご注文がいくつも入っていて、お客さまへの情報発信、コミュニケーションがいかに大事か、あらためて理解できました。また、第二工場を作るつもりで準備していた土地、建物を別の法人に貸しているのですが、10年の契約延長が決まり、会社の財務基盤を支えてくれることになるはずです。次の目標は、会社がしっかりと借入金を返済していける体質にしてから、専務へ事業承継をすることです。そして専務の代では、借入金の返済のめどをつけつつ、年季の入った設備を更新して、事業拡大を目指してほしいと思います」(相談者)

事例を振り返って

● 不明瞭となっていた社内の数字を見える化するよう管理手法を提案
● 相談者と後継者の役割分担を決め生産性の改善をアドバイス

相談者の声

1枚のハガキを見て相談にいったときは、数字と実務に明るい専門家がタッグを組んで経営改善に協力してもらえるようになるなんて思ってもいませんでした。直近では黒字基調が続くようになりましたが、借入金を返していけるようになるまでにはもうひと頑張りが必要だと思っています。この歳でブログを更新することや、会社の会計を見るようになるなんて、自分でも驚きです。今回の事業の立て直しは、よろず支援拠点のサポートがなければなし得なかったと思っています。本当にありがとうございました。

支援した拠点

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