「納豆を作って売る」から“逆6次産業化”で事業拡大へ
相談者の祖父が納豆工場の工場長を務めたのち、昭和44年に独立し創業。相談者が自ら全国の農地を回り、地域のJAや生産者と腹を割って話し、選び抜いた国産大豆を原料に使用。大量生産志向ではなく、手作りの工程を残し味と品質にこだわる製品づくりを特徴とする。創業からしばらくは近隣の小売店や関東近県に店舗を持つスーパーを販売の主力としたが、現社長が就任後、土産物やギフト向けなど販路を多角化。近年は高速道路SAにも出店するほか、道の駅向けのOEM商品も製造する。
代表者:塙 裕子(はなわ ひろこ)
住 所:〒300-0048 茨城県土浦市田中2-9-8
連絡先:029-821-8941
相談者の祖父が納豆工場の工場長を務めたのち、昭和44年に独立し創業。相談者が自ら全国の農地を回り、地域のJAや生産者と腹を割って話し、選び抜いた国産大豆を原料に使用。大量生産志向ではなく、手作りの工程を残し味と品質にこだわる製品づくりを特徴とする。創業からしばらくは近隣の小売店や関東近県に店舗を持つスーパーを販売の主力としたが、現社長が就任後、土産物やギフト向けなど販路を多角化。近年は高速道路SAにも出店するほか、道の駅向けのOEM商品も製造する。
代表者:塙 裕子(はなわ ひろこ)
住 所:〒300-0048 茨城県土浦市田中2-9-8
連絡先:029-821-8941
同社ではスーパー向けの納豆を主力とするが、その取引の現場は不安定な状況が続いていた。「納豆は、たとえばテレビでの『健康にいい』という情報で売上がぐんと伸びるんです。大手メーカーはそうしたときに欠品になりやすいため、当社のように小回りの効く会社に増産依頼が来るのですが、大手の体制が整うと取引が元に戻るんです。また新規にお取り扱いいただいたスーパーでも、売上の状況によっては、すぐに関係が終わることもあります」(塙氏)さらにここに来て、いくつかの経営課題も浮かび上がってきた。「コロナ禍で売上が低下し、また原材料価格高騰の影響も受けています。このままスーパーや問屋さんだけに頼っていると、さらに厳しい経営環境になるかもしれません。そこで、もっと消費者に直接アプローチし、当社の納豆を選ぶファンを増やしたいと思っているんです」(塙氏)そうした想いから、令和4年3月、相談者は当拠点を訪れた。
COはまず、ヒアリングを行い、様々な課題を整理し、事業の方向性を相談者とともに検討した。「相談者は強い志を持っているものの、それが具体化できてい 直営農場 のらっくす農園ないと感じました。また直営農場やECサイトもあるのに、それがきちんと活用できていない。そうした部分を強化するため、宣伝広報に強いCOにも加わってもらい、チームで対応しました。」(清瀬CO)「問屋さんやスーパーなどへの販売よりも、個人向け販売に力を入れていきたいというご意向でした。そこでまず、お金のかからない方法として『本社工場での直売会』の実施と、テレビや新聞などのマスコミにプレスリリースを配布し、ニュースや情報番組に取り上げてもらうことで個人向けの認知度を高めることを提案しました」(佐藤CO)さらに中期的な課題として、現社長から相談者への代表交代が既定路線となっている事業承継に向け、相談者が承継したのちの会社の事業の軸や体制についての検討にも着手した。
COは相談者の事業への取組を軸としたプレスリリースを作成、地域のマスコミ各社および記者に配布した。「マスコミは『商品の宣伝』ではなく、ニュースになる情報が欲しいんです。そのため、商品ではなく人にフォーカスし、ストーリーを組み立てました」(佐藤CO)その戦略は的中し、NHK、朝日新聞が取材に来訪。NHKは7分間の枠で2回放送、朝日新聞は半ページの特集として取り上げてもらうことに成功した。直売会は令和4年9月にはじまり、以降月1回開催している。「工場での直売会は、手作り感あるイベントにすることを提案しました」(佐藤CO)「従業員に声をかけると、思っていた以上にいろんなアイデアが出て驚きました。そのなかでやっぱりお祭り的なもの、つまり射的やシャボン玉遊びなど、子どもが楽しめるものを採用しました。子どもは将来のお客様ですから、小さいうちから“納豆というもの”に親しみ、また親御さんにも“食育としての納豆”を広めていきたいという気持ちからです」(塙氏)
テレビや新聞の影響力は大きく、同社の知名度は向上。直売会も徐々に盛り上がりを見せている。「まだ支援は途上ですが、少しずつ成果につながっていると オリジナリティ豊富なひげた食品の納豆思います」(清瀬CO)「次の段階として、ウェブ戦略に取りかかる予定です。公式サイトにもう少しオリジナリティを出し、ECサイ ト は新たな販売チャネルに育てていく予定です」(佐藤CO)また都市部へのマルシェ出店も実現した。「機会があり、東京・恵比寿のマルシェに納豆を冷蔵ケースに入れ持参し、販売しました。その経験から、今後は常温で売れる商品の開発、キッチンカーでの出店というアイデアも浮かんでいます」(塙氏)「そうした出店は売上の上積みだけでなく、ブランディングとしても有効だと思っています。マルシェで見かけ、検索してECサイトに来訪するといった導線が作れれば、集客に非常に有効ですから」(佐藤CO)相談者が考える「消費者との距離を短く」という未来は、まもなく現実のものになりそうだ。
相談者はさまざまな構想を描いていましたが、体制面、資金面の制約からすべてを進めることは難しいと感じました。そこで実現性の高さを考慮し優先順位を付け、具体的には「すぐできること、お金をかけずにできること」から着手するよう提案しました。また相談者が事業承継により経営トップになることを前提に「自ら意思決定して率先実行できるよう、自発的な動機付け」を促すよう心がけました。また社内の体制では、若手とベテラン、農園部門と納豆製造部門の意思疎通に気を配り、モチベーションを維持向上することにも留意しました。コロナ禍での落ち込みから回復基調にあり、事業承継できる環境は十分に整っていると思います。今後も、着々と進めていけるようサポートしていきます。
自分が三代目で、交際範囲も同業者が多くなっていたことから、納豆製造事業者の視点に偏っていると感じていました。支援を受け、会社の将来を一緒に検討していくなかで、そうした思考が解きほぐされ、従業員との思いの共有も進んだと思います。いままで私たちは大豆を仕入れて納豆にして売るというのが事業の主体でした。そこから一歩進み、直営農園で自ら大豆を、そして他の作物も育て販売する、いわば“逆6次産業化”を展開していきたいと思っています。そのための人材として地元大学農学部出身の若手を採用し、農園の管理を任せています。直営農園での有機栽培野菜での食育を通じ、納豆に限らない大きな市場を開拓していきたいと思います。