機械加工部品メーカーがおもてなし紙容器を開発し販路を開拓
機械加工業で培った自社技術を生かして開発した、おもてなし紙容器。マーケティングとネット戦略で、異業種における新事業という障壁を超え、販路を開拓していく。
機械加工を手がける蔵前産業株式会社では、3次元加工で立体形状をつくりだす基盤技術を生かした商品開発に取り組み、紙容器金型等の複雑な金型製作を実現。これにより、絞り技術を生かしたおもてなし紙容器としての「繭玉容器」を開発。消費者を意識した商品と思えることから、繭玉容器の販路開拓、限られた人員の中での売り方などについて相談者は悩んでいた。自社の事業の大きな柱となるべき事業と捉え、県庁から紹介された群馬県産業支援機構に相談をしていたが、当拠点が開設されたことから、産業支援機構と連携し販路開拓を進めていくことになった。
対応したコーディネーター(以下CO)は、相談者の立場に立ち、自社技術、開発の経緯などをヒアリングすると共に、商品への想いなど確認していった。
そこから同社の絞り技術が世界一であること、宇宙ステーションの実験棟「きぼう」内部の宇宙関連部品等の精密部品製作を手掛けていること。また、富岡と絹遺産群の世界遺産に向けて地域の活性化につなげたいという想いで繭玉容器を考案したことなど、自社の強みや想いを明確にした。
異業種における新事業のため、人員・ノウハウの不足を課題と捉え、本商品の販路開拓にむけて、支援ネットワーク構築の必要性を確認。県繊維試験場、(独)中小企業基盤整備機構、デザイナーなどと連携しながら支援を実施。その上で、商品性、市場性、営業のあり方、情報発信、商品の改善点などを検討した。
担当COは販路開拓にあたり、現状確認、事業計画の策定を進めることが必要であることを助言。効果的に商品をPRし事業計画を策定する上でも意義があることから、地元銀行が主催するビジネスサポート大賞に応募することを勧め、また、国の「地域産業資源活用事業計画」の認定にむけサポートを行った。
販路開拓に効果的な施策、事業の推薦書を作成し、中小機構の「販路開拓コーディネート事業」を活用。これにより、販路先のマーティングを行い、どのようなパッケージを求めているのかを確認。また、コスト(単価)、形状、大きさ、デザイン、色など商品に対する意見、感想も併せてもらうなど情報収集、市場確認をすることで商品の改善点を明確にし、しわや凹凸などの改良、最終的には材料を検討・変更し、商品の完成度を高めた。また、市場の声をもとに、他の形の商品の必要性を痛感。四角、丸形などの商品ラインアップを追加した。
情報発信では、限られた人員の中でどのように営業し、商品をPRしていくかの解決策として、「紙うつわ くらまえ」を屋号とし、HP・SNSの活用や展示会出展なども助言。体系的な情報発信を行った。
改善点を明確にし、材料の変更などを重ねることで精度の高い商品づくりとなった。販路開拓をする上で必要と思える商品バリエーションについても、アイテム数を増やすことができた。これが、特許の取得やグットデザイン賞2017への入賞という結果に繋がった。
また、少ない人員で最大限に商品をPR、売上を確保するために展示会を活用したことで販路開拓ができた。特に2017年4月にオープンした、GINZA SIX地下の「旬菜三山」のお土産容器に採用されたことは、相談者も大きな成果として捉えている。
限られた人員を補う施策では、「紙うつわ くらまえ」のHPが1つの営業ツールとして大活躍。明太子販売業者である「やまや」からの受注があり、ギフトBOXに採用された。HPからの見積依頼、受注が入り、売上確保に確実につながっている。