先代から2人の息子への事業承継 事業譲渡によるスキームで円滑な分社化を達成した2社がそれぞれの発展を目指す
1954年創業。瓦を主とする屋根材料販売及び責任施工、太陽光発電システムの販売施工などを行う。2010年に陽介さん(長男)が、「のりもの開発事業」を立ち上げ、新機軸のベビーカーなどを開発。当該事業は、その後株式会社キュリオとして分社化された。2020年5月、秀太さん(次男)が、父であり二代目社長の陽一さんから事業を引き継ぎ、三代目社長として就任した。
代表者:代表取締役 高橋 陽一(たかはし よういち) 代表取締役 高橋秀太(たかはし しゅうた)
住 所:〒500-8441 岐阜県岐阜市城東通2-36
連絡先:058-271-7301
1954年創業。瓦を主とする屋根材料販売及び責任施工、太陽光発電システムの販売施工などを行う。2010年に陽介さん(長男)が、「のりもの開発事業」を立ち上げ、新機軸のベビーカーなどを開発。当該事業は、その後株式会社キュリオとして分社化された。2020年5月、秀太さん(次男)が、父であり二代目社長の陽一さんから事業を引き継ぎ、三代目社長として就任した。
代表者:代表取締役 高橋 陽一(たかはし よういち) 代表取締役 高橋秀太(たかはし しゅうた)
住 所:〒500-8441 岐阜県岐阜市城東通2-36
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2006年に長男が高橋製瓦株式会社へ入社。従来の屋根工事業を行う傍らで、内部に新事業部門として、「のりもの開発事業」を立ち上げた。2012年、次男が屋根工事業の後継者として入社したことを機に、長男は、のりもの開発事業に注力することになった。父である二代目社長より屋根工事業部門を引き継いだ次男は、屋根工事業とのりもの開発事業、それぞれの経営責任を明確にしたいという思いを抱くようになった。両名とも、「自らの事業について、お互いに過度な干渉を受けることなく、自由に経営を行いたい」という思いを抱いており、そのためにはどのような組織形態が望ましいかを模索していた。
両名とCOは以前より面識があった。長男は2009年、のりもの開発事業に対する補助金の申請にあたり、COの支援を受けていた。そして、次男は2017年頃から、決算書の読み方に関する指導を受けるため、週1~2回の頻度で当拠点に来訪していた。毎週の相談でCOとの間に信頼関係が築かれ、次男は自然と、事業承継に関する悩みをCO に打ち明けるようになった。こうして、COが事業承継についての相談を受けることになった。
瓦は、もともと屋根材の市場でトップシェアを誇っていたが、1995年の阪神大震災をきっかけに、屋根材の主流が瓦から板金に移行。急速にそのシェアを落としていった。そのような外部環境の中、利益の少ない屋根工事業を継続していくためには、精緻に原価管理を行う必要がある。一方、長男が手掛けているのりもの開発事業は、高い将来性が見込まれながらも、立ち上げ当初は赤字が続いていた。瓦部門と、のりもの部門をセグメントとした部門別の損益計算書を作成することにより、瓦部門は黒字であり、のりもの部門は赤字であることは把握できていた。しかし、部門別損益計算書だけでは、各部門別の借入金残高が把握できないという限界があった。借入金を発生させることになった、それぞれの事業部門の経営責任が明確にされていなかった。
長男が、補助金や金融機関からの資金調達により、のりもの開発事業部門を拡大していく一方、次男は、屋根工事業部門でも新事業を始め、売上拡大につなげたいとの意向を持っていた。しかし、事業部門別の借入金や損益が明確になっていない状況では、その見通しを立てることができない。良好な関係の兄弟ではあるが、二人の相談に乗ってきたCOは、それぞれの性格と能力を熟知しており、二人が各々の能力を発揮できる組織形態をとることが好ましいと考えた。最終的に、長男、次男それぞれが社長として意思決定を行い、投資及び資金調達の経営責任を明確化したいとの思いに至り、分社化を決定した。そして、契約書の作成など、どのようなスキームで分社化を行っていくのかが課題となった。
まずは、父であり二代目社長の同一氏を含めた経営陣による経営会議を開き、COも同席して、事業の方向性を協議。のりもの開発事業部門を分社化することを決定した。その後は経営陣に会社の現況を把握してもらうために、決算書の見方に関する個人研修を行った。会社の経営状況及ぴ財政状態を十分に理解してもらうとともに、「決算書からは、会社の現況のみならず、会社の強みや弱みも読み取れる。会社の将来は現状分析の延長線上にある」と、その重要性を納得してもらった。さらに、各事業部門の収益性や、会社全体の業績に対する貢献度合いを把握するため、部門別損益計算で業績の過去推移分析を行い、共有した。契約書の作成に関しても、当拠点内の他のCOと情報を共有しながら、的確なアドバイスを提供した。
分社化の方法は、「会社分割」と「事業譲渡契約」に大きく分けられる。それぞれ、税制面、手続き面などに、メリット・デメリットがあるため、同社にとってどちらがベストの方法であるかを模索していった。その際、親族、顧問税理士だけで検討を進めても、各々の利害関係が絡み、思ったことをストレートに言うことができないことが懸念された。このため、COは、複数の意見に対して中立的な立場からコメントしていった。最終的に、相談者は事業譲渡契約を選び、分社化のために、何を相手側に事業譲渡するのかを協議し、事菓譲渡の契約内容を明確にした。その後、資金調達先である金融機関にも相談し、分社化の了解を得ることができた。
2018年、同社ののりもの事業は、株式会社キュリオとして分社化。2020年には次男が高橋製瓦株式会社の代表取締役に就任し、結果として、先代社長の陽一氏から、2人の息子にそれぞれ事業承継がなされた形となった。2社はグループ会社として協力しつつも、事業を分けたことで、経営責任の明確化が図れた。分社化、事業承継の双方がスムーズに行われたことで、ステークホルダーや金融機関などの各関係先にも、悪影響を与えることはなかった。
分社化した株式会社キュリオは、高橋製瓦の一事業部門から独立したことで、スタートアップ投資の対象として認められるようになった。ベビーカーCURIO(キュリオ)に続き、ハンドル形電動車いすのSCOO(スクー)を開発、岐阜県を代表するスタートァップベンチャーとして注目されている。また、新型コロナウイルスに対応したフェイスシールドなどの販売で売上を大幅拡大。分社化3 年目で黒字化することができた。次男の屋根工事業も、事業譲渡により資金繰りを改善することができ、新事業展開を進めることができるようになった。今後は達磨窯による瓦の製造事業によって、父から承継した事業の経営革新に邁進していく。
支媛のポイントは3つ。1つ目が、経営会議での協議。第三者であるよろず支援拠点が同席したことで、日頃は話せない家族閻の思いも包み隠さずぶつけ合う環境を作るようにした。2つ目が、決算書分析。一般的に決算書を理解している経営者は少ない傾向にあるが、決算書を理解できると経営判断に生かすことができることをレクチャーし、自社の収益性、財務安全性を知ってもらえた。3つ目が、関係者との遍携。金融機関、顧問税理士、岐阜県産業経済振興センター、岐阜県よろず支援拠点の複数のCOによるチームで、連携して支援できたことが大きかった。
【高橋陽介氏】事業承継がスムーズに完了したことに感謝しています。分社化したことにより、晴れて、スタートアップベンチャーの扱いを受けるようになりました。【高橋秀太氏】coと繰り返し決算書などの経営分析を行うなかで、事業譲渡という手法をご提案、協議の仲介もいただけたことで、分社化がスムーズに進み、それぞれの事業の方向性が明確になり、大変感謝しております。