傷んだりんごの有効活用 新たな用途と販路を開拓
飛騨市古川の袈裟丸地区でりんご園を経営する。前オーナーが高齢のため後継者を探していることを知り事業承継、2018年1月に「けさ丸りんご園」として開業した。新オーナーである野中夫妻は、夫が左官業との兼業、妻も地域の伝統工芸品である「古川提灯」の職人として活動している。
代表者:代表 野中 誠(のなか まこと)
住 所:〒509-4241 岐阜県飛騨市古川町向町2丁目45-2
連絡先:0573-73-6623
同農園で栽培しているりんごは、木から落ちて傷がついたり、成熟する過程で霜が付着して傷んでしまうと、百貨店やスーパーなどに生食用商品として出荷できなくなってしまう。痛んだりんごの新たな用途や販路開拓について検討したいと、当拠点に相談に訪れた。
これまで、落果や霜で傷んだりんごは、廃棄するか、ジュース用として農協に15円/㎏という低価格で買い取ってもらうほかなかった。りんごの傷口は乾燥するため、他の果物のように傷口から腐敗することはなく、傷口を切除すれば加工用に利用できる。また、霜が付着したりんごも表面の見栄えが悪くなるだけで、味にまったく問題はない。このりんごを「加工用りんご」として販売すべく、用途と販路を開拓することが課題となった。
COは愛知県一宮市の洋菓子店に、落果や霜で傷んだりんごの用途を相談した。傷み具合を見たい、というパティシエの希望で、両者が遠距離であることから、COがテレビ会議システムを用いて、実際のりんごの映像を中継することとなった。すると、これまで食材問屋から仕入れていたりんごより品質がよく、安価であることが判明し、その場で300円/㎏で取引をする商談がまとまった。
当該洋菓子店では、同社の加工用りんごを、りんごジャムに加工して販売した。すると、購入者から「ジャムは苦手だったけど、このジャムなら食べられる」といった高い評価が多数寄せられた。相談者にとっても、加工用りんごを従来より高値で販売できるようになったのみならず、自らが生産するりんごへの自信が生まれるという成果があった。今後も更なる用途、販路を模索していく。
「見た目は悪いがおいしさは変わらない」という生産者の気持ち、「質の良いりんごを使用したい」というパティシエの気持ち、「美味しいりんごのお菓子を食べたい」という消費者の気持ちを大切にした。その結果、三方よしの支援につながった。
農協にジュース用として出荷するよりも高く販売できたうえ、素晴らしいジャムに仕上げていただいた。「けさ丸りんご園」の加工用りんごは、他者よりも品質がよいことがわかり、兼業農家とはいえ、りんご栽培の自信にもつながった。