販売手法の見直しと経営改善計画の策定で経営難の牧場が収益改善へ | よろず支援拠点全国本部

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販売手法の見直しと経営改善計画の策定で経営難の牧場が収益改善へ

先代の頃から、「山地酪農」にこだわり完全放牧でホルスタインを飼育する斉藤牧場。 利益を上げるため牛乳を使い、ソフトクリームをつくりたいと相談に訪れるが、加工品開発より先に取り組むべき課題が浮き彫りになる。

公開日: / 都道府県:高知県 業種:農業・漁業・林業 課題: 経営改善・事業再生

有限会社斉藤牧場

代表者:斉藤 佳洋(さいとう よしひろ)
住 所:高知県南国市白木谷3100
電 話:088-862-0393

先代の頃から、「山地酪農」にこだわり完全放牧でホルスタインを飼育する斉藤牧場。 利益を上げるため牛乳を使い、ソフトクリームをつくりたいと相談に訪れるが、加工品開発より先に取り組むべき課題が浮き彫りになる。

公開日:
都道府県:高知県/業種:農業・漁業・林業/課題:経営改善・事業再生

有限会社斉藤牧場

代表者:斉藤 佳洋(さいとう よしひろ)
住 所:高知県南国市白木谷3100
電 話:088-862-0393

峠 篤士
TOGE ATSUSHI

高知県よろず支援拠点

PROFILE

コーディネーター(食の6次産業化プロデューサー)

峠 篤士 TOGE ATSUSHI

高知県よろず支援拠点

PROFILE

コーディネーター(食の6次産業化プロデューサー)

目次

  1. 利益が上がらず赤字経営が慢性化
  2. 加工品開発より経営改善を優先
  3. 販売手法の見直し 経営改善計画も策定
  4. 本格的な収益改善に取り組む環境が整う

利益が上がらず赤字経営が慢性化

高知県南国市。標高約300メートルの山頂エリアに広がる約25haの広大な敷地で、50頭あまりのホルスタインを完全放牧で飼育している斉藤牧場。先代の頃から、野芝主体の飼料と自然繁殖で育てる、「山地酪農(やまちらくのう)」を家族経営で守り続けている。現在、山地酪農を行っている酪農家は全国に5軒。その稀少性は高い。
原乳は、地元加工業者にすべて供給し、その一部を自社販売用として「低温殺菌・ノンホモジナイズ処理」の特注加工をしてもらい、生乳の「山地酪農牛乳」のブランドで販売している。その味は、生クリームのように甘く、後味はさっぱりと爽やかだ。
しかし近年、赤字経営が続き、資金繰りに家族の預貯金をあてる状態にあり、これも限界に達していた。社長である斉藤さんと奥様の喜美子さんは「山地酪農の特長ある牛乳なのに単価が安い、加工して新商品をつくり利益を上げる方策はないものか」と考えていた。そんな折、奥様が参加していた「高知大学土佐フードビジネスクリエーター人材創出事業」の講師を当拠点のコーディネーター峠さんが務めていたことから当拠点を知り、ご夫婦揃って相談に訪れた。

加工品開発より経営改善を優先

相談には、6次産業化や商品開発、販路開拓を得意とする峠さんが対応した。峠さんは「すべてを支援するのではなく、相談者自身に動いてもらうことが大切」というスタンスで支援を行う。
生産している牛乳を活用したソフトクリームをつくりたいと言う斉藤夫妻に対し「なぜ商品開発なのか」「それがベストな方法か」「開発後のオペレーションはどうするのか」など、丁寧なヒアリングを実施した。
話を聞く中で、ご夫妻は営業をしたことも、お金の管理をしたこともないことがわかり、商品開発にトライするには早すぎると判断。また、ヒアリングの中で資金繰りが喫緊の課題であることも確認できたことから、まずは商品開発ではなく、今ある牛乳を高く売った方がいいと考えた。その背景として、斉藤さんが実践してきた生産方式の牛乳は市場価格が高く、高級志向のお客様には、現価格の倍の単価でも販売できる可能性があると直感した。
続いて、抜本的な経営改善を図るべく当拠点のコーディネーター西川さんが加わり支援チームを編成した。
西川さんは、まず経営状況の把握と課題の整理に取り組んだ。斉藤さんは資金繰りに悩んでいるが、自ら金融機関と交渉して借入れを行った経験はなく、相談する専門家もいない状況を確認した。この状態を抜本的に改善するためには、売上拡大策とともに、金融機関を説得するための経営改善策の提示が必須であると判断した。

販売手法の見直し 経営改善計画も策定

現状の斉藤牧場には、加工品を作るための体制が整っていないことから、加工品は後回しにするよう提案。まずは、斉藤さんに商品流通の仕組みを知ってもらい、今の商品でも売り先や売り方を変えれば利益が出ることを体験してもらうことが重要と考えた。峠さんは「斉藤さんの牛乳を、高く買ってくれる人がいることに、斉藤さん自身に気付いて欲しかった」と取組みの狙いを語った。
具体的には、産地直送をテーマとした高級食材を取り扱う通販サイトの事業者に対し、売価を30%あげたマッチングを実施。事業者を牧場に招き商品のこだわりや想いも伝えた。また、ふるさと納税の返礼品に採用してもらうように南国市に働きかけることを提案。これらの取組みを通して、売上げではなく利益を確保することを徹底した。
一方経営改善では、西川さんが赤字の原因を深く探るべく過去3期分までの決算書に目を通したが、経営状況は芳しくなかった。「これでは金融機関は相手にしてくれない。残っている決算書をすべて分析しよう」と15期分の決算書や生産に係わる資料等の詳細な分析を行った。
この結果、搾乳量が減少し、原料販売の利益率は低いが、健康志向の消費者に受け入れられている高付加価値商品「山地酪農牛乳」の売上増が実現できれば経営改善はできると判断。
搾乳量減少の原因を決算書の付属書類から詳細に分析したところ、保有牛(成牛・未成熟牛)の推移に辿りつく。その推移を数値・グラフ化し斉藤さんに提示した。斉藤さんは「保有牛の増加、特に未成熟牛の増加が親牛の餌不足を招き、食の細さが搾乳量の減少につながっている」と理解し、搾乳量減少の原因解明につながった。
その上で、「①子牛の早期売却・成牛の年齢若返り等、保有牛構成の適正化、②飼料の安定確保、③経費削減による経営基盤の安定化」を骨子とする経営改善計画を作成。資金繰り改善のための融資を申込んだ。

本格的な収益改善に取り組む環境が整う

売り方の改善では、マッチングした通販サイトとの商談が成立、定期的に注文が来るようになった。また、無事ふるさと納税の返礼品として採択され、売上拡大、利益の確保につながっている。斉藤さんは「値段を上げると売れなくなると思っていたが、リピーターも増えている」と、売れ行きへの手応えを感じているようだ。また、新たな取組みとして、毎週1回、週末締で受注し全国に商品を直送する仕組みの実践も始めた。
一方経営改善では、無事金融機関からの融資を受けて今後2~3年の資金繰りにめどが立ち、収益の改善に向けて本格的に取り組むことが可能になった。
「相談したことで、道が開けたような感じがした。生産者の酪農に対する考え方にお客さんがつく、ということを教えてもらい山地酪農の考え方について、積極的にお客様に伝えるようにしている」と語る斎藤さんの目はまっすぐと前を見据えていた。
その変化は奥様の目からも感じられるようで「主人は、もともとあまり喋らないタイプだと思っていたが、支援を受けて牧場のことをお客様に話すようになった。牧場の話を聞いて感動したと言ってくれる人が増えた」と驚きを隠せない様子だった。
本事例は、販売手法の見直しや資金繰りの安定化を達成するばかりでなく、経営者としての意識を改革することができたことも、支援の大きな成果の一つとなった。

支援の流れ
01
利益率の低さから牛乳の加工品の開発を検討
02
商品開発より販売手法を見直し、利益率向上による経営改善を優先
03
高付加価値商品として山地酪農牛乳を販売。搾乳量減少の対応策を盛り込んだ経営改善計画も策定
04
高付加価値の牛乳の新たな顧客層を開拓。金融機関から融資も受け収益改善に向け足場が整う
支援した拠点

高知県よろず支援拠点

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