承継にあたり事業計画を作成、販路の見直しも行い収益力を強化
福島県三春町で椎茸、ねぎを生産する事業者。椎茸は厳しい農場管理の基準「JGAP」を取得し、栽培から収穫に至るまでの「安全・安心」を保証する。役目を終えた椎茸の菌床は半年から1年かけて発酵させ、美味しいねぎ作りの肥料とするなど、循環型農業にも積極的に取り組んでいる。
有限会社Ｍ＆Ａふぁーむ・わたなべ
代表者:渡邉 俊史（わたなべ としふみ）
住 所:〒963-7719 福島県田村郡三春町大字貝山字古内47
連絡先:0247-62-4890
目次
- 事業承継を前に金融機関から「将来像」のリクエスト、拠点に相談へ
- 細かいヒアリングを通じ、相談者とCOが事業の将来を共有
- 相談者の“壁打ち”の相手となり、さまざまなアイデアを引き出し実行へ
- スーパーの販売価格アップに成功、事業計画も順調に滑り出し収益力が強化
事業承継を前に金融機関から「将来像」のリクエスト、拠点に相談へ
相談者である現社長は、先代社長（父親）からの事業承継に際し、取引先金融機関から事業の将来に向けての見通しを共有するため、収益向上への取り組みを含む事業計画の策定を求められた。同社の椎茸、ねぎの生産は順調であったが、相談者も人員の配置や時期による生産量の見直しなどの工夫で収益を拡大させる余地があるのではないかと考えていた。そうした相談者が思い描く将来像を事業計画に落とし込むべく、顧問税理士に相談したところ、当拠点を紹介され、相談に至った。
細かいヒアリングを通じ、相談者とCOが事業の将来を共有
COは財務状況ほか細かいヒアリングを行った。そして現在の圃場で人員を適切に配置し生産することで、損益分岐点を上回る生産量と売上高、適正な利益水準の実現が可能と判断した。その上で相談者と「椎茸は需要に応じた人員・生産量とし、人件費と作りすぎによる廃棄ロスを削減する」「ねぎは確実に買上げてくれるが価格決定権のないJA向けと、委託販売で価格をコントロールできるスーパー向けをバランスさせ収益増を図る」「事業計画を策定し確実な予実管理を行う」との共通認識を持った。
相談者の“壁打ち”の相手となり、さまざまなアイデアを引き出し実行へ
COと相談者は経営にかかわる数値、事業の強みや弱みと周辺環境、今後の方向性、具体的施策や数値目標などを繰り返し話し合った。この話し合いでCOは相談者の“壁打ち”の相手となり、アイデアに対し意見を返すことで、事業計画を具体化させていった。そして「端境期でJAでは扱ってもらえない大きさのねぎを需要のあるスーパーへ出荷」「スーパーでの委託販売は固定観念にとらわれず、販売可能な上値を探る」「椎茸の生産場で、同業者からのきくらげの委託生産を引き受ける」など、新たなアイデアが次々に生まれることとなった。
スーパーの販売価格アップに成功、事業計画も順調に滑り出し収益力が強化
高単価に設定したねぎの売れ行きは予想を上回り、当該月の売上は対前年比2倍となった。また事業計画に盛り込んだ人員体制、生産量調整の実施で人件費、廃棄ロスの削減にも成功。会社全体の収益は事業計画策定前の2倍以上となった。そしてこの事業計画策定で、ねぎや椎茸の栽培に明るい先代により築かれた基礎と、需要に即応した生産体制、市場戦略が加わり、体質はいっそう強化された。現在は個人向け体験型商品として「椎茸栽培キット」の商品化をめざすなど、新分野への取組も進めている。
相談者は父である先代社長が築いてきた農業を引き継ぐにあたり、さらに収益性を高めるための「自分なりの解」を得ようとしていました。そこで相談者の考え、アイデアを聞き取りながら、それを事業計画に変換できるようアドバイスを行いました。また専門知識を活かし、スーパーとの交渉についても助言を行いました。
事業計画作成について、課題の洗い出し、数字の立て方、思っていることを文字に置き換える作業を一緒に考えてくださり、感謝しています。令和4年3月の地震、原材料の高騰など事業に影響する出来事もありましたが、現在は事業計画を進めながら生産、販売、管理に大忙しです。引き続きよろしくお願いします。
