事業承継を見据え強みを活かす経営体制を確立
先々代が愛媛の松前町大字浜で小魚の二名煮などの海産物小売を始めたのは130年程前の明治時代。 多くの事業者が直面する事業承継問題。育ててきた事業を大きな負担なく次世代に繋ぐため、老舗の挑戦が始まった。
代表者::三好 正次郎(みよし しょうじろう)
住 所:愛媛県伊予郡松前町西高柳237
相談者は、叔父から事業を承継した3代目。同社の主力商品は小あじの開き、焼えいひれ、貝ひもなど。
相談者は、もともと同社で叔父と一緒に働いていたが、叔父から引継いだことをきっかけに同社を自分の代で途絶えさせてはいけない、と思うようになり、自分の息子たちに事業を承継しようと考え始める。相談者自身がまだ50代であり、息子たちへの代替わりは喫緊の課題ではないが、今からどのような準備をするべきか悩んでいた。そんな折、当拠点の「事業承継の“痛い”失敗事例」という実践セミナーに参加したことをきっかけに、相談に至った。
当拠点では相談者に入念にヒアリングを行い、10年後の事業承継を念頭においた上で、現在持っている想いや後世に残したい会社の強みと、未来のあるべき姿を整理した。
その結果、現段階で同社が検討することは、事業承継にかかる財産の相続対策ではなく、息子たちに過度な負担のないような経営状態で引継ぐために、長期安定的に事業が継続できるような経営基盤を固めることが必要だと分かった。そこで、承継を前提として、長期的な目線で成長を達成していくための事業計画を立てておく必要があることを確認。当拠点では、計画書づくりを支援することとなった。
老朽化した設備を更新する投資と人材育成の計画策定を提案。将来の見通しを立てる際に、当拠点から提示したSWOT分析のフォーマットを用いながら情報を整理し、まずは現状及び今後の可能性を洗い出すこともアドバイスした。
これに対し、相談者は、改めて自社の強み・弱みを整理して打ち手を多数検討し、さらにコスト、効果、時間軸も考慮しながら有効策を絞り込んだ。また、設備の更新や、従業員の採用・退職を具体的に各計画に反映させた。
さらに、今後入社させる予定である後継者についても、どの時期に、どの部門で、どのような業務に就かせるかなども明確化するようにアドバイスし、相談者は実行に移した。
現状を洗い出すなかで、高齢の会長が一人で新商品を開発している現状のままでは、開発ノウハウが同社から途絶えてしまうリスクが明らかになった。もともと、取引先からのニーズに応えることができる高い商品開発力とその販売を強みとしてきたことから、今すぐに新商品開発のノウハウを会社全体で共有し、会長一人に頼りきっている状態を改善するべきだと分かった。そこで相談者はこの内容を「ボトムアップ方式で新商品を開発するプロジェクト」として立ち上げ、組織としての競争力を高める体制を整えることに着手、事業承継に向けて計画を前進させた。
「相談したおかげで事業承継のために今すぐに取り組むべきことが明確になった」と話す相談者は現在56歳。引継ぎに向け、社内体制のさらなる強化に挑む。