積極的な販路開拓と植付作物の工夫で 売上・利益を大幅改善
平成14年創業。作付面積約70haの農地で、さつまいも、大根、ほうれん草などの季節野菜を多品目で周年栽培する県内最大規模の露地野菜農家。市場出荷をメインとする経営スタイルから、卸売業者との契約販売、道の駅やスーパーなどの地場産品コーナーへの出品など、販路の転換をはかり、地域に根ざした農業経営を行っている。
代表者:飯島 健寿(いいじま たけひさ)
住 所:〒289-0414 千葉県香取市長岡1314
連絡先:0478-78-3654
相談者は、積極的に農地拡大と大型倉庫・冷蔵庫などの設備投資を行うとともに、野菜の加工・小売向け販売を行う新ブランド「利衛門(りえもん)」を立ち上げるなど、精力的に事業を発展させてきた。これまでは、広範な農地と質の高い農作物の安定供給により、取引先からの信頼を得てきたが、令和元年に台風15号の直撃を受け、ビニールハウスなどの設備や生育中の作物、農地が壊滅的な被害を受けたことから経営環境が悪化。経営の立て直しを図るため当拠点へ相談に至った。
被災施設や農地の修繕は事業者単独では難しく、経営の立て直しは遅々として進まない状況であった。また、既存の納入先は利幅が薄く、需給バランスの影響でほとんど利益が出ない時期があること、作付けから収穫までのタイムラグに起因する運転資金の確保が課題であった。これを踏まえ、自然災害の影響を見越して、作付け品目の見直し、資金面の改善、事業体質の変革が必要であることを確認した。
事業面と資金面の双方を支援するため、農業に強みを持つCOが作付けや販路変更などの事業面を支援するとともに、金融の知見を持つCOが資金面と経営改善を支援する体制を取った。まず、メインバンクを始めとした金融機関に声をかけ、連携したバックアップ体制の構築に取り組み、資金繰りは大幅に改善。並行して、地元スーパー、道の駅、卸売業者との直接取引など、利益率の高い販路への方針転換や直売に適した作付け品目、直売所の売場作りを提案。売上の入金サイクル短期化を実現。
金融支援により資金繰りが改善するとともに、作付け品目の見直しによって生産体制が立ち直った。また、最終消費者により近い販路開拓も成功。地元消費者や卸売業者からも信頼を得て、注文が増加した結果、令和2年の利益は台風被害を受けた前年より18%増加し売上は2.4倍に大きく増加した。現在は地元農家とパートナーシップを形成。令和3年5月に法人組織「彗星会」を立ち上げ、共同仕入や販売に乗り出すなど多角的に展開し、地域の若手農業経営者の取りまとめ役として活躍している。
バイタリティのある相談者を支え、体制立て直しのアイデアを最短で実行する資金を確保するために、迅速な金融支援体制確立を目指しました。また、これまで薄利で苦労してきた点を重視し、利益率の改善につながる販路の開拓を強く後押ししました。
想定外の台風被害で苦慮していたところ、資金の安定化と事業転換で伴走支援を受けられたことは心強かったです。事業が順調な時に相談に乗ってくれる先もありがたいが、不調な時に無料で相談できる相手がいることで精神的にも救われました。