工場直売所開設とウェブによる全国販売により、地域伝統駄菓子の存続と経営改善をカタチに
昭和27年創業。津軽地方の伝統和菓子の製造を行う。津軽地方には昔から「当物(あてもの)」と呼ばれるくじ駄菓子があり、正月を中心に「故郷の子ども時代を懐かしむお菓子」として一家団欒に楽しまれてきたが、駄菓子屋の減少に伴い、弘前市内で残るのは佐藤製菓だけである。
代表者:佐藤 力雄(さとう りきお)
住 所:〒038-3874 青森県弘前市大字津賀野字宮崎68番地
連絡先:0172-34-3356
地域の駄菓子メーカーとして経営してきたが、ライフスタイルの変化や駄菓子屋の減少、コロナ禍の影響で、売上は右肩下がりであった。令和2年に2代目を継いだ相談者は、売上回復を目指して、新商品開発や経営改善を行うことを決意するも、どのような顧客を対象に、どのような商品を、どのような技術で作ればよいのかわからず思案していたところ、金融機関から当拠点を紹介され、相談に至った。
COはまず、売上推移や季節変動について分析を実施。「当物」は、津軽地方の風習に頼った商品で、正月とお盆に売上の2/3が集中し、製造現場の負担となっていた。また、紙製で味わいのある、くじを引きながら食べるといったスタイルは、観光客のお土産として人気であったが、コロナ禍でお祭りなどのイベントが軒並み中止となり、売上は大きく減少した。そこで、リスク分散、新たな販路開拓が必要であることを説明し、ウェブ販売や工場直売などへ販路を広げ、新規顧客獲得にチャレンジすることとした。
新規販売チャネルとしてECサイトやふるさと納税での販売を開始。専門家派遣などを活用することで、パッケージデザインを改善。また、金融機関や商工会議所とも連携し、通販用ギフトセットなどを開発することで、ウェブでの販売体制を整えた。さらに、工場には直売スペースと製造工程の見学スペースを設け、子どもや地元顧客に、より多くの情報発信ができるよう、歴史や工程紹介のパネルを設置し幅広い層へのPRを行った。
メディア露出の増加、工場直売所の開設に伴い、従来からの地元顧客に加え、新規消費者層にも「当物」くじを楽しんでいただく環境を整備したことで売上も徐々に増え、直売所オープンの令和2年8月から1年間で直売所の売上が約300万円に至った。ウェブ販売においても「新型コロナ応援企画」などのギフトセットをSNSで発信し、全国からの受注につながった。これにより、課題である年間売上の極端な偏りも徐々に減少傾向にある。今後はブランド資産、ロゴマークである「大王」を活用したグッズ販売で経営基盤の強化を図る。
相談者の伝統の味を守りたいという思いをじっくり傾聴しました。はじめはコロナ禍による売上減への焦りもありましたが、話す内容から相談者も自ずと課題や自身の強みを整理できました。提案はすぐに取り組むことができる具体的なものとし、補助制度の活用で資金負担を軽減し、積極的な行動を促すことができました。
駄菓子業界衰退による売上減少に大きな不安があったが、COの皆様に提案いただいた工場直売所開設を進めることができました。地域文化を承継したいという思いも実現し、大きな自信となり、明確な目標をもって経営改善に取り組むことができ、本当に感謝しています。