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IT、IoTの導入で生産性革新と経営改善を実現

公開日: / 都道府県:長野県 業種:製造 課題: 経営改善・事業再生

岡谷熱処理工業株式会社

公開日:
都道府県:長野県/業種:製造/課題:経営改善・事業再生

岡谷熱処理工業株式会社

代表者:
住 所:

目次

  1. アイディアを形にする高度な相談
  2. IT化による管理体制が有効と判断
  3. プロジェクトチームを組みIT、IoT化を推進
  4. IT、IoT化で経常利益が1.4倍に

アイディアを形にする高度な相談

長野県のほぼ中心に位置する諏訪・岡谷地区は、東洋のスイスと云われるほど精密金属加工業が盛んな地域であり、時計や情報機器など、国内でも有力な生産地となっている。この岡谷地区で絶えず斬新なアイディアや、競合他社に先駆けた技術革新を強く希求しているのが、岡谷熱処理工業株式会社の西澤さんだ。
以前から白川チーフコーディネーター(以下CCO)と個人的に交流のあった西澤さんは、当拠点が開設されCCOとして活動を開始したことを聞き、来訪。「加工して出荷する製品の品質をいかにして保証したらよいのか?」「熱処理や、金属コーティングの仕事は、一品対応である。品物の取り違いを皆無とし、定められた処理基準通り遂行したのかを検証できる革新的なシステム作りをしたいが、何かアイディアはないか?」「受注-製造-出荷-納品の一連を、更に効率を上げて生産性の向上を図り、経営基盤を強化したい。有益な方策を講じるためにはどうしたらよいのか?」など、高度な課題意識を投げかけた。
対応した白川CCOは、現状を調査するために、幾度となく同社を訪問。現場を観察し、社員からの聞き取り調査も行った。
その結果、受注は極めて不規則で、工場の稼働はお客様の都合により左右されること。受注から製造、出荷、納品に至る一連の作業において、部分的にはパソコンによる伝票処理を行っているものの、ほとんどが手書き作業であること。お客様から預かる金型の材料、形状、使用目的により、熱処理の作業条件(焼入れ、焼戻し温度、時間など)を個々に設定する必要性があるが、現場に品物が到着して始めて作業指示を出しており、なおかつ各熱処理炉の処理能力に見合った作業指示が出来ていないこと、など改善点が浮き彫りになった。

IT化による管理体制が有効と判断

白川CCOは、大きく2つ、受注管理システムと設備管理システムの導入を提案。受注管理面では、確認された顧客の要望(鋼材の種類、形状、硬さ、希望納期など)をオンタイムで工場に知らせる方策を講じることを提案。受注から製造、出荷・納品に至る一連の伝票処理のIT化だ。また、設備管理面では、熱処理炉の運転状況、炉内温度、炉内真空度など、熱処理の要となるパラメーターを遠隔でも監視できるIoT導入を図ることを提案。「まずは、IT、IoTの重要性について西澤さんに理解してもらえるよう、じっくりと説明するところから始めた」と白川CCOは当時を振り返る。提案を受け、西澤さんは幹部と協議した末「現状に満足していては進歩がない。変革のためには必要なこと」と決断。導入に向けた挑戦が始まった。

プロジェクトチームを組みIT、IoT化を推進

白川CCOは、西澤さんの熱意を支えるため、長野県工業技術総合センター、信州大学工学部などの技術陣、設備メーカー、ソフト会社、主要顧客、当拠点のCOなどによるチーム編成を行った。西澤さんをプロジェクトリーダーとする「オカネツ生産革新プロジェクト」の立ち上げだ。当拠点としても「長野HYBRIDプロジェクト支援事業」の主要支援事業として本腰を入れてサポート。実際の導入には、相当の設備投資を必要とするため、「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金事業」への申請を支援。
3000万円の補助金が獲得でき、設備投資も実現した。CCOとなる前からの成果も入れると、8年連続で何かしらの補助金の獲得を実現させている。西澤さんの想いにマッチした支援ができている証拠だ。

IT、IoT化で経常利益が1.4倍に

約1.5年かけて推進したプロジェクト活動の結果、インターネットやクラウドコンピューターの活用により、受注時点での製品の写真や顧客要求条件などの情報が、オンタイムで工場に伝達できるシステムが構築できた。
また、製品の熱処理作業における各種作業パラメーターの見える化(遠隔監視)が図れ、パラメーターの設定ミスによるやり直しが格段に減るなど品質の向上にも大きく貢献することとなった。
このように、各熱処理炉の処理効率が飛躍的に向上し、納期短縮、処理に要する電力量の大幅な削減に成功。間接作業を含む全社的な作業効率の向上は、大幅なコスト削減に結びついている。
支援の結果、2018年9月期決算は、売上げは前期並であったが、経常利益で前期比1.4倍以上となり、取組みが数字として顕著に現れた。
西澤さんは自らの仕事について、誇りをもって「社会に、お客様に、如何に貢献できる企業であるかが重要。お客様の金型や工具製品を預かって、ご要求通りに仕上げる”熱処理“や”金属コーティング“の仕事は一見地味に思えるが、絶えず新たな技術を必要としており、お客様に還元できるように日々努力を続けている。」と語る。この姿勢を表すように、同社の挑戦はここでとどまるものではなく、今後ビッグデータを活用したAIの導入など、更なる品質向上、業務改善に向け取り組んでいくかまえだ。
支援を担当した白川CCOは、「コーディネーターとして支援をする中で、成果を得るために重要なことは、経営者のやる気と、お互いの信頼関係」とした上で、頻繁な連絡や密な相談、時には本音で意見交換ができたことが、当初計画の実現と予想以上の収益改善という成果に結びついた要因だと振り返った。
IT活用による生産性の向上は、限られた人員で売上拡大を図る上で有効な手立てとして注目を集めている。本事例は、ITを導入することで作業のタイムラグや人為的なミスを抑制し、品質の向上を実現した好例となったが、その原動力となったのは、変革を求めIT導入に踏み切った西澤さんの決断とリーダーシップと言えるだろう。

支援の流れ
01
「常に新しいアイディアで変わり続けなければ。」
02
「革新的なシステム作りをしたいが、何かアイディアはないか?」
03
「ITは変革のためには必要なこと。」
04
「ビッグデータや、AIの導入にも取り組む。」
支援した拠点

長野県よろず支援拠点

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