製造原価の見える化によって実現した価格転嫁の取り組み | よろず支援拠点全国本部

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製造原価の見える化によって実現した価格転嫁の取り組み

公開日: / 都道府県:富山県 業種:製造 課題: 価格転嫁

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住 所:非公開

公開日:
都道府県:富山県/業種:製造/課題:価格転嫁

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目次

  1. 現状
    材料価格と電力料金の高騰によって収益性が悪化
  2. 課題
    製品別の製造原価の把握と、取引先との関係性維持
  3. 支援内容
    生産実態を踏まえた製造原価の見える化と、提案・交渉
  4. 支援の成果
    進み始めた価格転嫁と営業損益黒字化への展望

現状
材料価格と電力料金の高騰によって収益性が悪化

3年ほど前より原材料となる鋼材とステンレス材が高騰しはじめ、売上高構成比が約30%であった材料費が40%を超える水準にまで上昇した。電気料金についても同じく4%台から8%台に急上昇したことで、主力である機械部品の製造原価上昇に悩まされていた。社内負担を続けるには限界があり閉塞感を感じていたこと、当拠点に「価格転嫁サポート窓口」が設置されたことを知り、価格転嫁のきっかけになればと相談に訪れた。

課題
製品別の製造原価の把握と、取引先との関係性維持

材料費と電気料金の高騰の影響で、直近決算期は営業損失を計上した。また、取引先が安価な現地生産や輸入製品の比率を高めたことで、売上高が年々減少傾向にあることも追い打ちをかけていた。収益性改善のための課題は、製品ごとの正確な製造原価を把握すること、取引先との良好な関係性を維持・向上させつつ価格転嫁を進めることであった。材質や寸法、ロットサイズが異なる多品種を取り扱っていることから、製品ごとの原価を一定のルールに基づいて設定し製品別損益を把握することが価格転嫁には必須となる。また、取引先との関係性を損なわないために、取引先の要望や発注見通しを事前交渉で情報収集しながら、ニーズに対してスムーズかつ柔軟に価格転嫁を進めることがポイントであった。

支援内容
生産実態を踏まえた製造原価の見える化と、提案・交渉

上昇した材料費と電力費が、どの程度のコスト上昇につながっているかを把握するために、製品別の材料使用量と歩留まりを計算すること、工程で用いる機械設備の電力使用量と稼働時間を調べることを提案した。また、取引先に対して材料費相場や電力料金推移の資料を用いて事前説明しつつ、今後の発注数の見通しを把握することを薦めた。提案を受けて、まずは材質・寸法・工程別に製品をグループ化し、生産実態に即した材料費と電力料金の割り当てを進めた。取引先に対しては、公的資料等を基に外部環境の変化と費用負担の増加への理解を得る一方で、発注見通しによっては価格転嫁の程度を緩和できる可能性を訴求した。製品別原価資料の整備が進み、少しずつ取引先の理解も得られることとなった。

支援の成果
進み始めた価格転嫁と営業損益黒字化への展望

価格転嫁の取り組みを始めた結果、令和6年4月受注分より負担の大きかった小ロット品の価格転嫁がされることとなり、収益改善の一歩を踏み出した。大ロット品については交渉が最終局面にきており概ね認められる見通しである。また、取引先からの情報で発注数見通しが増える製品については、段取り費負担の減少等でボリューム効果が期待されることから取引先と自社の双方にとってメリットのある価格での合意が期待される。

事例を振り返って

原価計算では目に見えにくい製品別の電力料金を機械設備ごとに設定した一定ルールに基づき費用配賦することが生産実態に沿った計算となる点がポイントとなる。また、受注・生産ロットサイズによって段取り工数が異なる点にも注意を払った。取引先に対しては関係性を維持しつつ難局を協力して乗り越えるために、公的な資料で価格転嫁の妥当性を伝えつつ、取引先の負担緩和策を同時提案することがポイントとなる。

相談者の声

価格転嫁が進んだだけではなく、顧客との関係を深めることができました。顧客の立場を踏まえた交渉術や提案書作成のアドバイスのおかげで、以前は揉めることが多かった交渉が逆にお互いの問題点を率直に話し合う場になりました。顧客満足を高めながら、営業損失からの脱却に向けた一歩を踏み出せたことを実感しています。

支援した拠点

富山県よろず支援拠点

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