老舗の酒蔵で女性社員の意見を活かした新商品を開発、新たなマーケット開拓へ
創業は江戸時代の享保18年(1733年)。福井県内屈指の老舗酒蔵。「花垣」のブランドで知られ、生産量の5割を東京に出荷するなど、県内外に多くのファンを持つ。大野市内の直営店では、日本酒だけでなく、酒粕や奈良漬け、甘酒などの非アルコール製品も販売。
代表者:南部 隆保(なんぶ たかやす)
住 所:〒912-0081 福井県大野市元町6-10
連絡先:0779-65-8900
主力商品の日本酒は、コロナ禍で飲食店向け売上が減少。さらに個人客の多くは比較的年齢層の高い男性のため、今のターゲットのままで業績を伸ばし続けるには限界があり、新商品開発と顧客層の開拓が急務であった。そこでこれまで明確な販売ターゲットを定めていなかった梅酒と甘酒を女性向け商品としてリニューアルし、売り出すことを決定。女性を含めて立ち上げた社内開発チームとCOが連携し、プロジェクトをスタート。
蒸留酒をベースに作った梅酒は味が尖っているが、同社の日本酒「花垣」につけ込んだ梅酒はまろやかで口当たりがよく、女性向けの味に仕上がっていた。しかし、パッケージは、10年ほど変えていない地味なもので、商品の特性をきちんと伝えられていなかった。一方、チームの女性担当者は、福井県のデザインアカデミーの商品開発講座を受講し、マーケティングの基礎的知識を身に付けていた。そこで、COは「女性の心をつかむネーミング、ラベルやパッケージなどのデザイン」「プロモーション」を主体的に進めるよう提案。
チームとCOは梅酒のターゲットとするペルソナを検討し、「20代前半の女子大生から働く女性」に設定。そうした女性たちが「憧れる生き方」をキーワードに、パッケージのデザインとブランディングを約1年かけて検討。社員の多くが男性、チームも男性が過半数であったため、COは「多数決で決めず、とことん話し合うこと」「女性の感性を大事にすること」を提案し、チームの支援を続けた。梅酒のデザインは「可愛らしいもの」「キャラクター的なもの」も候補に挙がったが、最終的に“健康”をイメージさせる「果実」を採用。
令和4年初夏、味も含め全面的に見直した甘酒を発売。サイズを従来の500mlから手に取りやすい300mlとし、商品単価も下げたことが好評を呼び、販売実績は当初計画を10%ほど上回る。また、同年冬にリブランド販売した梅酒は、これまで日本酒のコアファンから外れていた若い女性への「花垣」の認知度向上、そして日本酒そのものの購入へと誘引する戦略的商品としても期待。発売に合わせて、ターゲット層への周知を図るため、SNSを活用したプロモーションも計画中。
これまでは男性主体の組織のなかで、男性目線による意見が強かったです。女性社員を中心とした商品開発のなかで、本来狙う女性市場に合わない意見や指示が出てくる可能性がありましたが、それをどうさばき、本筋から外れないようにするかを考え支援しました。また机上のペルソナと現実との乖離が生じないよう留意しました。
女性を中心とした商品企画開発は初めてで、男性目線によるイメージのズレが起きるなどの課題はありましたが、COの粘り強い支援により、当初のコンセプトに沿った新商品の開発、発売にこぎ着けることができました。デザインの仕上がりも当初の想定以上に商品内容にフィットしたもので、「売れる」という手応えを感じています。