全社プロジェクトの立ち上げで現場改善と生産性向上を推進
切削工具のパフォーマンスを、再研磨というビジネスモデルによって最大化し、日本のものづくりの基盤を支える相談者。 経営陣が30代と若く、社内の管理体制や人材面で不安を感じえる中、売上拡大を見据えた現場改善に挑む。
代表者:石原 雅也(いしはら まさや)
住 所:広島県福山市御幸町中津原1698
職人の手により、切削工具の再研磨から製作までを手掛ける相談者。一本からの小ロット生産、特殊形状のオーダーメイドにも対応し、その技術力はもとより、短納期対応、納期遵守で多くの顧客から高い評価を得ている。
一方で、社内に目を向けると経営陣が30代と若く、右腕となるような人材がおらず管理・運営体制に不安を覚えていた。この状況の中で、大手企業からの受注増加に対応できる生産・品質管理体制を構築し、確実に売上げを伸ばしていくとともに、人事評価制度の整備にも着手し社員のモチベーション向上を図りたいと考えていたところ、金融機関からの紹介で、当拠点を知り、出張相談会に訪れた。
当拠点のコーディネーター(以下CO)がヒアリングを行ったところ、人材、生産管理、教育・人事制度の課題が浮き彫りとなった。
人材面では、社員を取りまとめる規範的な社員が不在であり、各従業員が目的意識を持って働けていないことがわかった。
管理体制では、工程管理体制が整っておらず、品質と対応時間にムラが出ているという課題を確認。
教育・人事制度については、教育カリキュラムが未整備で、体系的な社員教育ができていない現状を把握した。また、賃金体系・賃金基準を含めた人事評価制度が整備されていないことも課題だった。
以上を踏まえ、専門家が定期的に現場を訪れ、支援を行うことが必要だと判断した。
担当COは、手厚い現場改善が可能なひろしま産業振興機構の中小企業イノベーション促進支援事業(チーム型支援)※と連携し、課題解決に取り組むことを提案。
「現場改善は、管理者が理解しているだけでは成果が上がらず、現場の社員にまで浸透させることが重要である」と、COは伴走型の支援施策を活用した意図を語る。
支援開始にあたり、当拠点で進め方の調整とすり合わせを行った上で、相談者は専門家とともに現場改善に着手した。
まずこの取組み全体は日常業務と異なる特別活動としてもらうべく「ギャラクシープロジェクト」と称して活動を立ち上げることをサポート。現場改善の推進体制として工場部門を3グループに分け、グループリーダーを任命。組織図を作成し、誰がどのグループに所属するかを明確にした。
その中で、製品・工程ごとの加工時間を調査し、1本あたりの加工単価を算出することもアドバイス。
さらに、社員の技能習熟計画表を作成し、誰にどの技術をどのレベルまで教えていくかを明確にするよう提案した。
※中小企業イノベーション促進事業(チーム型支援):企業の課題に応じ、専門家等による支援チームを編成し、最長1年間の伴走型支援を行う。
支援を通して、これまで曖昧になっていた、会社が社員に期待する役割を明確化。各従業員の目標を設定することができた。
工程管理に関しては、製品ごとにかかる作業時間の調査を元に、製品別・工程別の作業時間テーブルを作成。「見える化」することにより、効率的な作業予定を組むことが可能となっただけでなく、改善に注力すべき工程や作業の明確化にもつながった。
教育面においては、技能習熟計画表を元に、計画的な社員教育が進められている。
相談者は「これからも現場改善、生産性向上に取り組んでいきたい」と、さらなる改革にも意欲的だ。