ユニークな新商品開発を発端に「売り方」の支援を受け、大幅売上増
漁獲量に左右されない加工品開発を模索する中で、革新性の高い商品の開発方法を発見した相談者。 さまざまな支援機関のバックアップを受けながら、短期間で新商品を開発し、そして「チーム・シェフコンクール」での受賞を果たす。
代表者:大塚 育生(おおつか いくお)
住 所:新潟県佐渡市二見117
連絡先:0259-76-2071
佐渡沖は、暖流と寒流がぶつかる好漁場であり、新潟県有数の漁場である。相談者が取り扱う魚種は漁獲量に左右されやすく、しかも特徴として水分が多いことから一部加工を行って冷凍保存することが通常であった。しかし一般的に、鮮魚を効率的に冷凍するためには、不可食部を除いたほうが良いとされており、反面、手を加えて冷凍すると酸化が進んで、肉質が低下してしまうという悩みがあった。こうした中、相談者は加工後にミネラル成分を駆使することにより、酸化を抑制することができるうえ、長期冷凍保存した場合でも、解凍後に新鮮な状態が保たれる性質を発見した。
相談者は、このノウハウを活かした新商品「魚の生ハム」開発の相談を相川町商工会に持ち込んだ。
相川町商工会とネットワーク構築している当拠点には平成27年8月に「試作品まで完成できた。その販路開拓を相談したい」と打診があった。その後担当のコーディネーター(以下CO)がリードしつつ、コンセプト、パッケージ、レシピ、販路及び広報等について、他支援機関らと役割分担をしながら対策を進めた。
商品の新規性や革新性があり、需要は見込めるのでは、とCOは判断したがそもそも、顧客ターゲットをどこに置くか、販売先によって量目やパッケージ、そして価格は変わってくる。つまりどんなユーザーのどんなニーズに焦点をあてたものかを明確にする必要があった。
スーパーなど小売店向けには、量目や商品種類の細かい設定が必要であることから、高単価かつ相対で交渉販売できる、レストランや旅館をメインターゲットとすることを当拠点から提案。その上で商品開発に当たっては様々な専門家制度の活用を勧めた。
まず、商工会連合会のエキスパートバンク制度を活用して管理栄養士の専門家を派遣してもらい、高い評価を得たことから、次にターゲット向けのレシピ開発・販促用レシピ集づくりのために、にいがた産業創造機構(NICO)と連携してデザイナーや料理専門家を派遣してもらい、6種類のレシピを開発した。さらには、全国の美味しい農産物や食品を求めるショップ等のバイヤー100名が審査員として名を連ねる「チーム・シェフコンクール」へ新商品を応募することを勧めた。
新商品づくりに必要な設備導入等のために、当拠点の勧めを受けて補助金の活用もでき、新商品開発に成功。そのうち、「サケの生ハム」「シイラの生ハム」「マグロの生ハム」は、チーム・シェフコンクールに入賞。複数受賞は相談者だけだった。通販サイトにアップされるほか、地元新聞や雑誌、テレビ、ラジオでも反響を呼び、売上高は従来の130%増となった。
当事業では、関係者が多岐にわたったのも特徴であった。その中で、当拠点を中心にしてその都度、他の支援機関の適切な専門家や支援制度を紹介しながら力を合わせたアドバイスをしていった。
相談者は「このような支援体制があると分かると、夢や思いを持つ経営者も行動に移せると思う」と支援を評した。