食用いぐさを「和のスーパーフード」として販売戦略を再構築 新商品は1カ月で250万円売上の大ヒット
昭和60年創業。畳需要の落ち込みに備え、原料であるいぐさの新たな活用方法を模索してきた。平成5年にいぐさを使用した食品を開発。現在は無農薬いぐさの栽培も手掛け、食用いぐさのパイオニアとして、さまざまな商品を展開している。近年、食用いぐさは食物繊維が豊富で、栄養価の高い「和のスーパーフード」として注目されている。
代表者:稲田 剛夫
住 所:〒869-4202 熊本県八代市鏡町内田438−2
連絡先:(0965)52-0656
国内最大のいぐさの生産地である八代市で、約25年間食用いぐさの製造販売を続けてきたが、販路が広がらず売上低迷。地域の土産物のカテゴリーから脱却しようと試行錯誤したが、明確な方向性を見いだすことができなかった。そこで、さらに広い知見を求め、当拠点に相談に訪れた。
稲田剛夫さんはその独創的な発想で、いぐさを使用した食品を開発。熊本県南部の名物にしようと努力したが「珍しいおみやげ」の域を出ず、地元でも認知度が高まらず、売上が低迷した。熊本大学薬学部の協力で、いぐさが安全で栄養価の高い食品であると証明されたことを受け、息子の近善さんと共に無農薬自然農法のいぐさ栽培を開始、利用しやすい「いぐさの粉末」も開発したが、売上は依然として伸び悩んでいた。
食用いぐさの販路拡大方法を模索していた近善さんは、平成26年に地域活性化事業「くまもと県南フードバレー」に参加。そのつながりから、幕張メッセで開催された国際食品・飲料展FOODEXにも出店する。しかし商品の良さがなかなかバイヤーに伝わらず、商談に結び付かないことに悩んでいた。当拠点には以前から商品開発などについて相談に訪れていたが、販路拡大について本格的に相談することとなった。
当拠点のCOは現状分析を行い、土産物としての販売方法では競争が激しく、飛躍は望めないと判断。いぐさの特徴と可能性を改めて調査・整理した上で、商品の特性を最大限に生かした新しい販売戦略を立てることを、課題に設定した。
いぐさのもつ栄養素について新たに調査を行った結果、食物繊維の含有率が高く葉酸も含んでいるなど、優れた機能性を有する食品であることが判明した。そこで、これまでの地域の土産物としての展開から一転。いぐさの機能性に合わせたターゲットを設定し、健康食品としてのブランディングを行うことを提案した。
いぐさは食物繊維を豊富に含み、妊娠初期に必要な栄養素である葉酸を摂取することもできる。しかもノンカフェインであり、プレママにとって魅力のある食材であると指摘。20代から40代前半のプレママ世代をターゲットに「和のスーパーフード」として販売することを提案した。
機能性食品としてのいぐさをアピールするため、パッケージデザインやパンフレット制作をプロに依頼。また、健康食品市場の商談会に出展し、認知度を高めていった。さらに畳市場が縮小する中で、いぐさの認知度を維持するために「ミニ畳づくり体験」など、いぐさと親しむイベントも開催した。
分かりやすいキャッチフレーズを使用した広報と、商品のブランディングによって認知度が上昇。当拠点の他相談企業とのコラボ商品「たたみアイス」のほか、他社供給商品「食べられるお箸」「い草サプリメント」などを開発して話題づくりを行った結果、メディア取材も増え、令和元年6月から1カ月で一挙に250万円の売上を達成した。
初めて相談者と会った時に、自分のことよりも畳需要の減少に苦しむ「いぐさ農家の苦境と復活への願い」を情熱的に語っていただきました。その思いをリスペクトしながら、熊本を代表する特産品として食用いぐさの良さを「見える化」し、もっている優位性をターゲットに対して分かりやすく伝えることで、売れる仕組みがつくれるとアドバイスしました。
細かな栄養素のデータから、女性全般のような漠然としたターゲットではなく、プレママ世代に届く戦略を立てました。さらに体に優しい国産素材であることを「和のスーパーフード」というキャッチフレーズで強調、健康食品市場での差別化をはかりました。分析結果の裏付けと、ニーズのある層への絞り込みがポイントになりました。
毎月のように相談をして、さまざまな取り組みを行ってきました。その中で健康食品化というアイデアをいただき、パッケージデザインを変えるほか、細かな販売戦略にも多角的なアドバイスをしていただきました。よろず支援拠点で共に悩み、考えてくれたことが売上アップにつながったと感謝しています。