社長の急逝で突然の事業承継 品質の安定化で廃業を回避
老舗の味噌・醤油の蔵元の4代目が、自社の「味噌作り体験キット」と「甘酒」の販売拡大について、当拠点に支援を求めたのは平成28年。当時、インバウンド誘致と絡め、他業者とのマッチング等の支援を展開していたが、同年10月に当時の社長が逝去。一時は廃業も検討したほどだったが、急きょ代表となった相談者(妻)も、5代目就任を予定している次女も「創業126年の屋号を残したい」という想いから、どうにか事業を続けていきたいと考えていた。しかし、経営経験もなくどのようにしたらいいかわからず、今後の方針について相談に訪れた。
同社では、製造から営業活動までのほとんどを先代が一人で行っていたため、それらのノウハウが一気に消失してしまった。ノウハウ不足による品質の急激な低下と、それによる既存顧客離れが予測され、事業の安定化が急務であると判断した。そこで、先代と取り組んでいた施策はストップ。ノウハウがない中でも品質の安定化を図ることを最優先課題とした。その後、次女の5代目就任に向けて各種施策に取り組んでいくこととした。
Coは、事業の安定化に向け、製品の成分分析を依頼できる県の産業科学技術センターを紹介し、職人に依存しない品質管理体制を整えることを提案。また事業承継に向けて相談者の次女を中心に、ブランドコンセプトの再構築、パッケージデザインの作成、新商品の開発に取り組んでいくことを提案した。近年使われることがなかった屋号「かね松」を復活させて商品群にストーリー性を持たせるようアドバイス。企業ロゴ、ホームページの刷新も行うこととした。新商品開発に向けては、増え続けていた既存商品の絞り込みと同時並行的に行い、製造の合理化を図った。
成分分析や製造工程の見直しにより製品の品質を守ることができた結果、大きなクレームもなく事業を継続することができ、売上高は先代と比べ98%を堅持している。また、デザイナーと協働して企業ロゴ、商品パッケージのリニューアルを実施。5代目就任に向け、事業基盤が整備された。