観光客減からインバウンド需要を掴み売上150%を達成
大学卒業以来、宿坊を経営する相談者。宿泊者や観光客が減少する中で、事業承継を見越した巻き返しを決意。インバウンド需要を見据え、広範囲のお土産需要への対応や日本ならではの体験づくりに取り組み、外国人観光客の注目を集めていく。
近年、宗教心の低下と熱心な信者の高齢化に伴い、身延山久遠寺周辺での宿坊の宿泊者や観光客の減少が見られている。相談者は、このままでは身延山周辺の観光及び経済が停滞していくことを危惧していた。一方で、次男がお寺を継ぐ決心をし仏教大学に通っていることも後押しし、このマイナスの流れを払拭、良い流れを引き寄せて事業承継していくために、新しい変化をかけていきたいと試行錯誤の途中であった。そんな時、当拠点が主催する「いまさら聞けない補助金セミナー」に参加。セミナー後の個別相談会をきっかけに支援を依頼することとなった。
震災後、身延山周辺の観光客は減少傾向が見られ、地域全体の活性化は落ちてきている。
そんな中、相談者が運営している宿坊の覚林坊は、近年、訪日旅行者に門戸を広げ、外国人宿泊者の増加傾向が見られた。インバウンド観光の流れが見られるなど、外部環境としては良い傾向ではあるものの、競争が起こることは明らかであった。そのため、積極的な告知、宣伝、営業活動が必要と判断された。
また、覚林坊は宿坊であり、名目上は宗教法人であるが、宿泊や食事、お土産などは経済活動として税金を払っており、実質的には家族経営の旅館に等しい状況にあった。しかし、宗教法人ということで、公的な施策の活用、公的な支援などが受けられずにいた状況がわかった。
設備面では、美しい日本庭園があり、それを眺めながら食事ができることやそこで楽しむ料理は大きな強みになると分析。料理でも提供している身延町のあけぼの大豆を使った納豆が海外の宿泊者からも人気であったが、長期保存、長期輸送に適さないパッケージ形状で需要を取り逃がしている現状があった。
COは宗教法人のままでは公的施策の活用が難しいことから、相談者を代表とする個人事業主として開業して、事業を進めていく事を提案した。
山梨県庁の観光部にある「やまなし観光推進機構」との連携を深め、補助金の活用などを進めることをアドバイス。
さらに、販売機会を逃していた宿坊の手作り納豆をより広範囲なお土産需要に応えられるように、パッケージの開発を提案。やまなし産業支援機構の「新製品・新技術研究開発助成事業」に応募することを提案した。
現在、外国人旅行者(インバウンド観光)は、お土産などのモノ消費だけでなく、何かを体験したいコト消費(日本ならではの体験等)の需要が高まっている。そこで、山梨県内の貸衣装業者と連携し、着物体験サービスの導入を勧めた。
相談者は、この提案を実行に移し個人事業(屋号:鶴林精舎)を開業。やまなし観光推進機構との関係構築にも取組んだ。
また、やまなし産業支援機構の新製品・新技術研究開発助成事業にも採択され納豆のパッケージ開発に取り組んでいる。新たに開始した着物体験サービスは、外国人宿泊者に好評で、その写真を撮って覚林坊のFacebookページにアップロードし情報の拡散を進めている。
インバウンドを意識した取組みが功を奏し、外国人観光客は前年比で100%弱アップ。その人気が、日本人観光客にも波及するといった効果も現れ、全体売上も前年比で約150%に。また、国内外のメディアからも取材の引き合いがあり、今後更なる宿泊者増が期待されている。