精緻な販売計画の立案とチャネルごとの戦略を通じ右肩上がりの成長に転換
平成21年、温泉で知られる石和(いさわ)で手作りの辛味噌販売店を開業。翌年から通販サイトにも出店している。開業当初は知名度も低く、売れ行きは伸び悩んでいたが、新たに開発した「食べるラー油」が人気を集め、数多くのメディアでも紹介され、大ヒットとなる。
代表者:永野 はつい(ながの はつい)
住 所:〒406-0023 山梨県笛吹市石和町八田154-2
連絡先:055-262-1300
相談者は、趣味で作り友人に配った辛味噌が評判を集め、一般に販売するようになったという創業の経緯から、宣伝費を一切かけず、年間の事業計画も立てず事業を継続していた。そんな中、新開発した「にんにくトマトらー油」がメディアに紹介され、一時期は出荷まで数ヵ月というバックオーダーを抱える大ヒットとなる。しかしコロナ禍の到来で状況が一変、来店客数が激減し、売上も大きく落ち込んだ。この事態の打開のため、以前相談者が個人的にネット通販の支援を受けたことのある当拠点COのもとへ、相談に訪れた。
COはまず、店頭、ネット通販、イベント出店、委託販売など、販売チャネルを洗い出し、安定的な売上を確保できそうなネット通販に着目した。メルマガの登録会員数は約3,700で、COの経験則からメルマガ1通あたり20件の購入が見込まれることから、メルマガを強化しネット通販の売上促進につなげることを提案した。イベント出店はコロナ禍でイベント自体の休止が相次ぐなか、集客地域が狭く感染リスクが低いと思われるイベントをピックアップ。委託販売は「道の駅」「商業施設」など、対象となる店舗の客層、購買単価を調査した。
メルマガでは将来的な優良顧客を育てるため、顧客が自家消費用に購入し、つぎに贈答品として選ぶという導線を重視した。お中元、お歳暮需要の前にトライアル購入しやすい商品をおすすめし、それぞれの時期にはお買い得なセットを用意する仕組みで展開した。イベントは出店にかかる料金と見込み販売数のバランスを重視して出店を決定。委託販売先は「客層がよく、高い商品でも売れるところ」に絞り、COが同行して商品の特徴、販売実績について説明するなどのフォローを行い、取扱をお願いした。
これらの販売戦略の実行に並行して、メディアにも情報を提供した。在京テレビ局の「日帰り旅行で楽しめる買い物」というニーズにマッチし紹介されたことや、男性向け情報誌に取り上げられ新たな客層にアピールできたことで、支援後の売上は前年同月比110%で推移している。また月次の売上が安定したことで、製造部門アルバイトの常時雇用も可能となった。今後は年間計画とイベントごとの収支を細かく把握し、精度の高い情報に基づいてPDCAサイクルを回していくことを考えている。
メルマガでは季節のネタを盛り込み、それに合致する詰合せ商品を紹介しました。イベントの選定においては、出店料、交通費、人件費、材料費、予測販売数を考え、出店可否を判断しました。委託販売については、以前は一律で仕入れ価格を設定していましたが、個々の委託先に応じた仕入れ価格へと改めました。
COの親身な助言により、販売は「計画と実行、見直し」というサイクルが不可欠であることを実感できました。「ほしい人にほしい物を届けること」「よいお客さまと長く付き合うこと」も学ぶことができました。ヒット作を狙うのではなく、緩やかな右肩上がりの経営を支える「長く愛される商品」を作っていきたいと思います。