新商品と味を受け継いだ 商品のブランディングに成功、好スタートをきる
大正元年創業、4代続く老舗の蒲鉾店。地元産の新鮮な「エソ」のすり身などを使った上質な蒲鉾、秘伝のタレに漬けたエソの皮で包んだごぼう巻き、油揚げにエソのすり身をつつんだ志田巻などを販売。店舗は明治時代の建物が多く残る史跡地区に所在、観光客のお土産としても人気を集める。
代表者:矢次 勝己(やつぎ かつみ)
住 所:〒758-0033 山口県萩市恵美須町1
連絡先:083-822-1337
エソは鮮度の高いものだけが練り物の原料となる白身魚で、近海に漁場を持つ萩市はその名産地となっている。ただ近年はスケソウダラなど安価な原料を使う大手業者との競争、食卓の欧米化で、同社の売上は下降傾向にあり、新商品での売上増を考えていた。その折、同業の「荒川蒲鉾店」から「閉業するので『魚ロッケ(ぎょろっけ)』の味を継承してほしい」と依頼を受ける。新商品および魚ロッケのパッケージデザインやPRについて金融機関に相談したところ、当拠点の紹介を受けた。
COはまず双方の会社や既存商品の情報についてヒアリングした。相談者はエソの旨みについて熟知しており、「エソのみ」を使った商品づくりを得意とする数少ない人物であることがわかった。また魚ロッケという商品は市場に多数存在するが、じつはその名称は荒川蒲鉾店が商標登録したものであった。ただ新商品、魚ロッケとも「新鮮なエソのみを使用」と謳うだけでは商品価値は伝わりにくく、差別化は難しいと考えたCOは「エソの認知度向上がブランド価値を高める最大の近道」と提案した。
COはまず、ターゲットを魚ロッケのファンの多い地元客、次いで観光客と設定した。さらに一般的なパッケージでは他社製品に埋没してしまうこと、おやつにも向いていることから“子どもが手に取ることで、親が商品を知る”という流れを想定し、相談者に提案、新商品、魚ロッケとも「他にないパッケージデザイン」の作成を支援。また新商品は幅広い年齢層に受け入れられる「エソ100%の天ぷら」とし、そのネーミングはインパクトを重視、美味しさと100点満点をかけて「えそ100天」という名称を採用した。
パッケージは爬虫類にも似たエソの頭部をモチーフとしてデザインし、遊び心があり、売り場で目立つデザインとした。完成した「えそ100天」「魚ロッケ」は、まず自店舗とスーパー3カ所で販売をスタート。事業承継と商品開発の経緯が新聞やテレビで取り上げられたことから、販売は予想を上回り、一時は在庫切れになるほどとなった。同社の売上は対前年比140%を記録。現在は販路を道の駅にも拡大、またCOとともにSNSでの情報発信やECサイトの立上に取り組み、全国的な販路拡大をめざしている。
相談者は当初、魚介類加工商品のパッケージについて、既視感あるデザインや商品名を当たり前と考える傾向がありました。そうした考えを見つめ直し、ターゲットに向けたブランディングの必要性を共有しました。またオンライン相談であったため、対面相談以上に情報収集とコミュニケーションの取り方に配慮しました。
新製品開発だけでなく、ECサイト構築やSNSでの情報発信まで、何度も相談に乗っていただきました。商品を売るためにはブランディングが必須であることを教わり、「エソを知ってもらうことからはじめる」という提案、売場で目立つパッケージデザインが、予想を上回る売上につながりました。