老舗和菓子店がIT利用を強化 DM活用で6千万円の売上増
ネット販売成功の次に取り組んだのは、離脱した顧客の呼び戻しとリピート率の上昇だった。 クラウドを使った顧客情報のデータベース化により、大幅な売上増を達成した。
代表者:菅野 高志(かんの たかし)
住 所:山形県上山市弁天2-3-12
相談者は、熊野大社(南陽市)参詣者のお土産屋として創業200年を超える老舗菓子店である。和菓子に加えて洋菓子も扱うようになり、現在は県内に20店舗を展開する。山形県知事賞に輝いた「こまめちゃん」「出羽の淡雪」や、山形県の形を模った「山形サブレ」などを主力商品として販売しており、山形県を代表する和洋菓子店として評価を得ている。
しかし、県内の著しい人口減少と高齢化、コンビニなどのスイーツ販売による競争激化、和菓子全体の需要減少などで、将来の売上確保に対する心配もあった。後継者となる息子も他県での修行から帰ってきて経営に参加したこともあり、将来を見据えた経営をしたいと考えていた。そんな折、同業者から当拠点でネットショップの支援が得られることを聞き、最初の相談へと至った。
当初はネット販売に関するアドバイスを当拠点から実施し、特にHPのリニューアルなどで来店客以外にも県外に新規顧客を開拓することに成功し、売上げが10倍になるなど大きな成功を収めていた。そこで相談者ともう一歩踏み込んだ分析を行い、長期離脱していた顧客を再び呼び戻し、リピーターになってもらえれば、さらに売上増を達成できることを話し合った。
そこで、今まで手書きだった顧客リスト(約3万名)をデータベース化し、それをもとに簡単にダイレクトメールを発送できるようなシステムを構築することを提言した。
各店舗における顧客情報のデータ化に際しては、サーバ構築費用の節約やデータ共有がしやすいことからクラウドサーバーを利用する仕組みの構築を提案した。実際に実施する業者として、当拠点の相談者でもある業者を紹介し、見積もりを依頼。顧客情報のデータ化後は、ダイレクトメールで商品紹介やクーポンを発行し、リピーター化を目指すことをアドバイスした。
加えて、ポイント券を同封するなど、効果を最大限にする方法もアドバイスした。
以上のような提案をもとに、1か月後にアドバイス通りのシステムを構築した旨の報告があった。
新しいシステムを利用して抽出した優良顧客を中心に発送を行った合計4回のダイレクトメールの結果、6千万の売上増となった。送付した約半数の顧客が来店するという、大きな反響が得られたのである。それからも定期的にこのような案内を繰り返しており、初回ほどではないが、そのつど確実に売上増に結びついている。
一連の取組みのなかで、新規顧客獲得だけでなく、リピーターを獲得する大切さを実感。相談者は「DMの成果に驚いた。コーディネーターのいうリピーター対策の重要性を再認識した」と唸った。ネット販売や顧客管理システムといったITを利用した、新しい経営が形になろうとしている。