地域で愛される味をアルバイトが創業して守る | よろず支援拠点全国本部

TOP全国の支援事例地域で愛される味をアルバイトが創業して守る

地域で愛される味をアルバイトが創業して守る

愛される味を守りたいという想いで、アルバイトとして働いていた焼肉店の引継ぎを決意した相談者。 創業資金や経営の知識がない中で、いかにオープンに至ったのか。

公開日: / 都道府県:鳥取県 業種:宿泊・飲食 課題: 事業承継

焼肉ダイニング華壱

代表者:木村 勇希(きむら ゆうき)
住 所:鳥取県米子市新開5-8-37
連絡先:0859-32-8478

愛される味を守りたいという想いで、アルバイトとして働いていた焼肉店の引継ぎを決意した相談者。 創業資金や経営の知識がない中で、いかにオープンに至ったのか。

公開日:
都道府県:鳥取県/業種:宿泊・飲食/課題:事業承継

焼肉ダイニング華壱

代表者:木村 勇希(きむら ゆうき)
住 所:鳥取県米子市新開5-8-37
電 話:0859-32-8478

樋野 泰広
HINO YASUHIRO

鳥取県よろず支援拠点

PROFILE

コーディネーター(中小企業診断士・ターンアラウンドマネージャー・一級建築士)

樋野 泰広 HINO YASUHIRO

鳥取県よろず支援拠点

PROFILE

コーディネーター(中小企業診断士・ターンアラウンドマネージャー・一級建築士)

目次

  1. 事業への想いと焼肉店への想いが重なる
  2. 熱意はあれど資金不足がネック
  3. コストとリスクを落とし現実的な売上計画へ
  4. 融資を受けて無事オープン地域で愛される味を守る

事業への想いと焼肉店への想いが重なる

鳥取県米子市。かつては商都と呼ばれ、山陰の他都市と比較しても創業へチャレンジする人が多い土地柄で有名である。
そのためか、他都市で商売を辞めても、米子で再起を図るといったケースがあり、挑戦する人を応援する風土がある。
木村勇希さんは、工作機器メーカーに勤務する傍ら、その味や居心地の良さに魅せられ米子で愛される老舗焼肉店でアルバイトをしていた。
平成28年1月、かねてから自分で事業を興したいと思っていた木村さんは、勤めていた工作機器メーカーを退職。何をしようか模索していたところ、約7年間アルバイトを続けた焼肉店のオーナーから、店を閉めると告げられる。
事業を検討していた木村さんは「このチャンスを逃せない」と感じ、即座にオーナーに店を継がせて欲しいと告げたところ、オーナーも快諾。焼肉店を引継ぐことになった。
しかし、経営の知識はもちろん、創業の手続きもわからない、自己資金も準備もできていない中で、平成28年3月に先代のオーナーが会員だった米子商工会議所に創業の相談に赴いた。
同商工会議所の竹谷さんは、制度の説明や事業計画の作成方法を丁寧に教えたところ、後日、事業計画のたたき台を持った木村さんが現れた。
これを見た竹谷さんは、様々な視点で事業計画を見たほうが良いと判断し、より専門性の高い当拠点のコーディネーター樋野さんに話を持ちかけた。

熱意はあれど資金不足がネック

「正直、なんだこれはと思った」。樋野さんは当初の木村さんの事業計画に対してそう語る。
改修費を含めた融資希望額に対して、著しく自己資金が不足しており、対外的に実現可能性が低いと受け取られる懸念があったのだ。
また、売上げの見込みに関しても、現実味が薄く感じられた。木村さんは、アルバイトの経験こそあるものの、経営の経験はない。創業の準備不足は明確だった。
ただ、すでに会社を辞めてしまっている現状を踏まえ、コーディネーターの上田さんとも相談し、可能な限りリスクを抑えて創業できるよう支援を行う方針を打ち出した。
そこで、現在の計画では希望どおりの融資を受けることが難しいと納得してもらうため、鳥取県信用保証協会の平尾さんも支援に加わってもらい、金融機関としての見解も伝えてもらえるようにした。こうして、木村さんが相談に訪れる際は、極力3者で対応し計画の懸念点を漏れなく精査できる支援体制を組んだのだ。
3者による木村さんへのヒアリングの中で、焼肉店のタレやレシピ、仕入れのルートも引継げること、肉をカットする職人さんに引き続き働いてもらえることなどが分かり、焼肉店の運営に大切な部分については内部の調整が取れており、引継ぎ上のネックは少ないことが確認できた。
創業に向けて、一番大きなポイントとなったのは、木村さんにはどうしても自分が店の味を引き継ぎたい、という強い熱意とやる気があったことだ。支援を担当した上田さんは「木村さんの、熱意のある回答が印象的だった」と振り返る。

コストとリスクを落とし現実的な売上計画へ

融資希望額を下げるため、当拠点から初期投資費用の徹底的な見直しを提案。設備投資の優先順位をつけ、オープンに向け絶対必要なものと、開店後でも間に合うものに仕分けて行ったのだ。
これにより、初期投資を抑えることに成功。最終的には、木村さん自身で当初の半額近くまで融資希望額を落としたのだ。
その中で、和式便所から洋式への改修や、築38年の建物のため内装の改装など、顧客満足に直結する投資は残した。
また、売上げに関しても、これまでの気温や天気と客数の推移のデータを分析した結果を提示しながら、具体的に客単価と客数を積み上げてシミュレーションを行い、現実的な売上計画を作ることを支援した。その上で、事業収益だけでなく、保険料など生活にかかる費用も検討し、木村さんの生活が成り立つよう助言をした。
このような支援を通して、コストとリスクを可能な限り落とし、計画の実現性を高めていったのだ。
事業計画が現実的なものにブラッシュアップされてきた段階で、木村さんは知人の紹介で金融機関と融資に関するアポイントをとる。実際の面談の際には、竹谷さんが同行し、担当者に当拠点と信用保証協会とともに事業計画を練った経緯を説明し、説得力を高めた。

融資を受けて無事オープン地域で愛される味を守る

事業計画書を見た金融機関の担当者も、「ここまでできているのであれば問題ない」と判断。自己資金がほぼ準備できていなかった状況の中で、異例とも言える金額の創業資金を調達した。
そして無事平成28年7月に「焼肉ダイニング 華壱」をオープン。相談開始から、約3ヶ月後のことだった。
オープン後、安定した営業を続けているが、安心はできない。
木村さんはまだ経営を始めたばかりであることを踏まえ、現預金残高を定期的に報告してもらうことにしている。樋野さんは「もし売上げが低迷すればダイレクトに預金残高に現れる。預金残高が苦しくなれば、早急な支援の対策を考えなくてはいけない。いち早く情報をキャッチするために、この手法を取ることで木村さんの経営状況の変化を確認できるように協力してもらっている」と言う。
木村さんは、念願の創業を果たし、いい肉を安く、お腹いっぱいになるまで食べられる理想の焼肉店づくりに向け、早速メニュー開発にも力を入れている。
「相談当初は、どうして融資を受けるのにこんなに時間がかかるんだ、と歯がゆい思いをしていたのも事実だが、思い返すと、とても無謀な計画をしていた」と木村さんは振り返った。
鳥取県よろず支援拠点西部サテライトオフィス、米子商工会議所、信用保証協会は同じビルに入居している。物理的な近さも相まって、日頃から強い連携関係にあるそうだ。
メールや電話をする前に、すぐに顔を見て話せる。その連携体制が支援の質とスピードを上げる鍵となっている。

支援の流れ
01
創業を志し、経営ノウハウと資金不足を補うため、商工会議所を訪問
02
僅少な自己資金に対し、過剰な融資希望額。現実的な事業計画を作るべく、3支援機関がチームで支援
03
コストとリスクを下げつつ、実現性の高い売上計画を策定
04
融資を受け資金の調達に成功。焼肉店を無事開業し、地域で愛される味を守り続けている
支援した拠点

鳥取県よろず支援拠点

関連記事