部署を横断するITシステムの構築で、業務の大幅な省力化へ
「いつかは取り組まなければならない課題」となっていた、営業活動の効率化のためのITシステム導入。 IT化は目的ではなく手段と捉え、専門家とともに全社ベースでの業務効率化を図るシステム開発に取り組む。
代表者:長島 孝昌(ながしま たかまさ)
住 所:栃木県日光市今市1447
相談者には、長年の課題があった。現在、商品を卸す小売店などの取引先は約150社。それら多数の取引先への営業から納品までの伝票処理を紙ベースで行っていたため、煩雑で時間がかかっていたことだ。また、記入ミスの発生や、売上げの把握にタイムラグができてしまう。それが販売管理・在庫管理といった各種管理業務の難しさにつながっていた。
東日本大震災を契機とした売上げの低下も徐々に回復基調になってきた平成26年7月、相談者はこの長年の課題への対策を求めて、当拠点を訪ねた。これが、伝票仕訳から販売・在庫管理まで一貫して処理できるITシステムの構築に取り組む第一歩となった。
相談を受けたコーディネーターは、ITシステムの構築に際して、専門家につなぐことを前提に、事前に考えておくべきことをヒアリングを通じて整理した。相談者にも「いつ、誰が、どんな情報を、どこで、どのように管理し、なぜ今この課題に向き合う必要があるのか」をITの専門家と共に考えてもらうためである。専門家の選定に当たっては、販売管理システムを構築支援した経験のある者ということで、当拠点を通じた専門家派遣制度や公益財団法人栃木県産業振興センターの専門家によるアドバイス制度を紹介した。
これにより、システム開発の基礎的な部分である要件定義や基本設計に十分に時間をかけて検討できるような事前環境を整えた。
当初の相談は「営業活動を効率化するために、ITシステムを導入したい」という話であった。しかし、その視点だけで課題解決に向けて動くと、一部だけに有効なシステムになってしまう。相談者の情報システムは、各業務部門がそれぞれに業務ソフトを導入したり、データベース管理システムを構築していたが、部門間のデータ連携が出来なかったことも会社全体の効率が低い要因となっていた。
そこで製造部門を除いた営業活動に係る部分の業務の流れを全社的に洗い出し、販売管理から在庫管理、さらには財務会計まで部門間(システム間)でデータを連動出来るシステムを再構築することを提案。導入範囲の拡大に際しては、段階分けをして計画的に進めるというスケジュールを助言し、相談者の要望を満たすパッケージソフトの情報提供も行った。部分最適ではなく全体最適に視点を置いた仕組みで、相談者にとって全く新しい取組みであった。
販売管理システムと財務会計システムは、平成28年度中に本格稼働する予定である。
販売管理システムと財務会計システムで連動するということで、仕訳用伝票の起票や財務会計システムへの入力作業がなくなり、業務の大幅な省力化が見込まれる。相談内容をITシステムの導入という個別の課題と捉えずに経営の問題として捉え、専門家も交えて解決策を見出すという支援方法が、相談者にとってベストな選択になった。
相談者は「納品から請求に至るまでの作業の省力化や簡素化を進め、各人がタブレットによって情報の共有や在庫の効率的な管理ができるようにしたい」とさらなる改革への意欲を語った。