インバウンド向け記念品販売から新分野展開に 挑戦、売上ゼロからのV字回復を達成
平成27年10月に創業。千社札(たくさんの神社仏閣を詣でる千社参りの際に自分が参拝した証として名前を書いた木札)の加工・販売を営む。日本の伝統・文化を海外の方に知って欲しいとの思いで起業。そのため、インバウンド客が数多く集まる清水寺の門前に屋台型の店舗を出店し、記念品として千社札を販売。外国人のアルファベットのお名前を漢字で当て字し、その場で加工するサービスが好評を博し、順調に売上を伸ばす。
代表者:塩尻 和義(しおじり かずよし)
住 所:〒520-2141 滋賀県大津市三大寺6
連絡先:077-572-7151
令和2年初頭、新型コロナウイルス感染症の拡大により、インバウンドに頼っていた千社札の需要が一気に消滅。清水寺の門前で運営していた店舗の売上がほぼゼロに落ち込んだ。当座の運転資金が必要となり、セーフティネット保証(4号)を取得の上、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を申し込んだ。そして、事業の見通しが立たない中、新たな顧客層の開拓と販売チャネルの構築をどうすべきか悩んだ末、独自では対処できないと判断し、当拠点に相談。
相談者は従来店舗から撤退していたため、新たな販売チャネルを開拓する必要があった。COは、コロナ禍の収束が見通せない中、経営再建に向けて国内需要を開拓する必要があると判断。相談者の手持ち資金は乏しく、極力費用を抑える必要があったことから、ネット販売により新たな販路開拓を行うこととした。そして、千社札の「新たなニーズの発掘とターゲットの設定」、「ネット販売の仕組みの確立」の2つを課題として設定し、新たなニーズに対応した商品開発に取り組んだ。
COは、有望商品を見出すため、独自デザインの木札の商品化とInstagramでのテスト販売を提案。テスト販売でニーズが薄いと分かると、販売実績の分析などによる他のニーズの探索を提案。その結果、①ペット(犬・猫)のアクセサリー、②飲食店の看板、③大衆演劇の役者からファンへの配布などのニーズを確認。相談者は、これらのニーズに対して、サンプル品を配布し、市場開拓に努めた。その結果、大衆演劇の劇団からの継続的な受注に成功。さらに、「大衆演劇のファンが推しの役者に贈答する」という新たなニーズも発掘。
Instagramを通じた販売拡大が新たなニーズの掘り起こしにつながり、かんざし、櫛、手鏡など 品揃えを充実させている。また、ロボホン(モバイル型ロボット)用のネームタグに採用されるなど大衆演劇以外の分野からも注目を集めている。新たな需要開拓に向けた試行錯誤により、月商はコロナ禍前の平均月商を超えるようになり、今年度の売上はコロナ禍前の150%増を見込む。そして、さらなる売上拡大を目指し、似顔絵師とのコラボレーションで、木製スマートフォンケースに似顔絵を彫った商品の受注販売に取り組んでいる。
相談を受けた際はゼロからの出発。そこでテストマーケティングを繰り返し、新たなニーズとして有望なものを絞っていくアプローチを重視しました。また、状況を定期的に確認し、相談者が不安を感じずに取組に集中できるよう配慮しました。加えて、常に次の打ち手を考えることを意識づけ、変化に応じた行動を促しました。
COの方は、資金繰りから新商品のアイデア、商品単価の設定に至るまで親身になって話を聞いていただくとともに、貴重なアドバイスを提供してくださいました。個人事業主として不安になりがちの中、心強い味方となっていただいたことで、売上回復に集中することができました。注文が増えている現在、次の一手に向けて前進いたします。