資金繰り改善、魅力ある商品の企画などの自走化支援を通じて、稼げる経営体質へと再生
創業は、明治後期。女流文学者大谷藤子の小説「須崎屋」のモデルに擬せられた由緒ある温泉旅館。レトロな雰囲気をそのままに残した館内が魅力の一つで、女将さんをはじめとしたスタッフのおもてなしの心を大事にする接客が高い評価を獲得している。リピーター顧客も多い。
代表者:須﨑 真紀子(すざき まきこ)
住 所:〒368-0105 埼玉県秩父郡小鹿野町小鹿野1815
連絡先:0494-75-0024
同社は、借入金が過大で資金繰りが厳しく、複数の短期借入れで凌ぐ状況が続いていた。また、例年、年末年始を除く秋から冬にかけて売上が落ち込むことに悩んでいた。さらに、新型コロナウイルス感染症の発生により、経営は一段と厳しさを増していった。根本的に経営を見直したいと考え、当拠点に相談に訪れた。
ヒアリングを通じて、COは課題を整理した。同社は、運転資金をつなぎ融資で賄っており、資金繰り表の作成が急務であった。また、予約管理システムは、外部業者に任せており、売上が増えるほど手数料が嵩み、見直しが必要だった。さらに、季節に応じた宿泊プランがないことや、ホームページの更新頻度の低さ、SNSの活用が十分でないことなども課題として挙げられた。
COは、作成した資金繰り表をもとに秩父商工会議所と連携して金融機関と交渉し、借り換えによる返済減額を図った。また、予約管理システムは、自力で運用できる方法への刷新を提案した。宿泊商品については、週末プランの価格改定のほか、ダリアの花やジビエ料理、地酒など地域の魅力を組み込み単価をアップさせた。さらに、補助金を活用してホームページのリニューアルを行い、SNSはタイムリーな情報発信を心がけ、2,000人以上の既存宿泊客にDMを送付した。
資金繰りの改善に続き、予約管理システムを主体的かつ機動的に運用することで、客室稼働率の向上、客単価のアップが可能になった。また、コロナ禍により宴会需要がなくなったものの、地元の特色ある料理を考案するなど食事の付加価値を高めたことで収益力が向上。さらに情報発信の強化により、自社ホームページからの予約数が増え、リピーターも増加した。こうした取り組みにより、自力で稼げる経営体質を確保。コロナ禍にもかかわらず前年比113%の売上を達成した。
支援にあたっては、複数の課題を整理する一方で、観光業に精通したCOなど専門分野のプロが秩父商工会議所の力を借りつつ、連携してチームによる支援を実施しました。成果が実感できるように具体的な提案や助言を心がけたことで、課題解決の道筋が明確になり、相談者は本来の業務や売上拡大に専念できるようになりました。
資金繰り、メニュー開発、サイト運用など各専門のCOによるチームでの支援で宿泊プランの機動的な投入や予約管理システムの活用レベルも向上しました。また、主体的な経営姿勢に転換し、コロナ禍にありながら増収を達成できました。今後も持続的な成長をめざし宿泊サービスの向上と優秀な人材の確保・育成に努めていきたいと考えています。