運輸業での経験を活かし新規事業を開業 地元からの新規雇用で人手不足にも対応
口蹄疫の発生により順調だった輸送業が一転、赤字転落。経営を保つため新事業の開拓を模索し倉庫業に行き着く。詳細なマーケットリサーチや資金調達の準備を進め、想定通りの受け入れ態勢を整備した倉庫業をスタートさせる。
相談者が個人ではじめた輸送業は順調に売上高を伸ばしていたが、平成22年に宮崎県で口蹄疫が発生し、物流の移動禁止・制限等により大幅な売上減少になった。さらに、県外企業も積極的に行っていたが、取次手数料・燃料費等が嵩み、遂に赤字に転落となった。そのため、取引のある金融機関(メインバンク)への相談を行うなど、経営改善を一層確実なものにする経営努力を行っていた。メインバンクより抜本的な経営改善計画書を作成の上、早急に提出するように指示を受け、正会員となっている宮崎商工会議所主催の経営セミナーを受講した後、経営指導員より当拠点を紹介され相談に訪れた。
当拠点のコーディネーター(以下CO)とのヒアリングを通していくつかの課題が浮き彫りとなった。①同業他社との競合が激化している中、経営を維持するための適正な収益が確保できなくなっていた。そのため、できれば、持続的経営を維持し、収益性を改善するための新たな事業分野を模索していた。②営業担当者が相談者のみのため営業力強化が課題となっていたことから、安定的な売上高を確保し収益力を高める必要があった。従来の販売チャネルに加えて、相談者を核としたトップセールスの強化と、営業部門の人員補強による営業体制の確立が急務となっていた。③既に1号倉庫を建設して倉庫業を開始しているが、倉庫業の立ち上げ時期の諸経費(保証協会保証料及び手数料等)が、金融機関が見積もった想定以上に嵩み、運転資金が不足するため、長期運転資金が必要となっていた。④倉庫業を運営するためには、従業員の補強が必要となってくるが、宮崎市内は人材不足のため、業務に相応しい人材確保に至っていない。
これら課題を受けてCOは、まず倉庫業を収益事業とするため、取引確約先及び見込み先のリストを作成するようにアドバイスした。当拠点において経営環境分析(マーケットリサーチ)を行ったところ、南九州には大型の保管倉庫がなく、仮に先行して事業を開始できれば十分に先行メリットがあることが分かった。そして、相談者が一般貨物運送業における長年の実績を活かし、倉庫業の展開を行うことで安定した事業運営を行うことができることが分かったため、当社の新規事業(倉庫業)を有利(メイン)に取り扱ってくれる見込みが十分にあることから、今回の経営改善計画及び収益計画の骨子に組み込むように提案を行った。
作成した提案をもとに、相談者は予てより取引のあった、県内大手の製紙メーカーにコネクションを最大限に活用して営業活動を展開しながら、今回の新規事業(倉庫業)との業務連携ができるメリットについてメニュー表の作成などの具体的な営業ツール作成をおこなった。そして、当拠点が作成・監修した経営改善計画書を基に、相談者が積極的に金融機関への交渉を行った。
倉庫業許認可と同時に、地元金融機関等への借入申し込みを行うに際し、金融機関向けの事業計画書のブラッシュアップ等を行った結果、申請通りの満額での貸出実行となった。また、様々な手続きに関し、法的な解釈も必要とされたため、当拠点のCO(弁護士)とのチーム対応によって、複雑な権利関係の課題解決に導いた。その結果、第2、第3倉庫の建設が完了できたため、予定通りの受入れ体制を整備できた。相談者の出身地でもあった綾町に、法人化を行った上で企業立地が完了した。また、綾町の立地企業として認定されたことで、地元金融機関から、新倉庫建設の追加融資と長期運転資金の調達ができたことで長期的な経営ビジョンが描けるようになった。さらに、事業拡大に伴う人手不足の対策として、綾町役場の協力のもと、地元から現場作業員を1名新規に採用した。今後も、地元からの雇用を強化し事業を拡充していく計画だ。