地域商店が紡ぐ人と人の縁 夢はアウトドアでの町おこし
山林を活かした林業、山が育む椎茸栽培、そして清らかな水がもたらす美味しい米を主な産業とする美郷町で、食品、日用品などを取扱う地域商店。大正時代に創業した同社は、周辺にコンビニがない同地域で、住民の生活に必要な商店として現在まで愛されている。当拠点に相談した経営者の江並 洋氏は、創業者を曾祖父に持つ山田恭一郎氏から商店の経営を譲り受け、屋号を「やまだ商店」から「商処美郷や」へと変更、あらたに自動車売買も手がけるなど、さらなる地域貢献を目指しサービスを展開する。
代表者:江並 洋(えなみ ひろし)
住 所:〒889-0901 宮崎県 美郷町北郷宇納間1713
連絡先:0982-62-5001
山林を活かした林業、山が育む椎茸栽培、そして清らかな水がもたらす美味しい米を主な産業とする美郷町で、食品、日用品などを取扱う地域商店。大正時代に創業した同社は、周辺にコンビニがない同地域で、住民の生活に必要な商店として現在まで愛されている。当拠点に相談した経営者の江並 洋氏は、創業者を曾祖父に持つ山田恭一郎氏から商店の経営を譲り受け、屋号を「やまだ商店」から「商処美郷や」へと変更、あらたに自動車売買も手がけるなど、さらなる地域貢献を目指しサービスを展開する。
代表者:江並 洋(えなみ ひろし)
住 所:〒889-0901 宮崎県 美郷町北郷宇納間1713
連絡先:0982-62-5001
相談者は県内のメーカー系自動車ディーラーで20年以上勤務していたが、65歳の定年以降も仕事をし続けたいという思いから、定年を迎える前に退職して起業することを考えるようになる。県北地域、自然にあふれる高千穂町で2年間勤務した経験もある相談者が目を付けたのが、テント設営や火起こしの道具などの持参なしにキャンプが楽しめる「グランピング」だ。「いま、グランピングは誰でも知っているレジャーになりましたが、当時はテレビでときどき取り上げられるくらいでした。ただ、これはきっとブームになると思いました」(江並さん)この夢をかなえるため、相談者は人脈をたどり、当拠点へ事業計画や資金調達の相談に訪れる。「お話をうかがい、創業のための事業計画、運転資金を含めた必要な費用について、具体的なプランを練りました。『厳しいですね』と答えることは簡単でしたが、自分としては、ぜひ夢の実現のお手伝いをしたいという思いが第一でした」(新田CO)
作り上げた事業計画書を手に金融機関や公的融資の窓口を訪ねた相談者は、厳しい現実に直面する。「考えていたグランピング施設は、最低でもドームテント 美郷町のお米「うまな米」 3棟から4棟という規模でした。それより小さいと、よほどロケーションに恵まれない限り、集客もままならないからです。しかし必要な初期費用は1棟あたり最低でも1,000万円、それに人件費と運転資金。どこに行っても良い返事はもらえませんでした。新田COから紹介を受けた補助金の窓口でも、担当者から『いま融資したら、あなたは潰れます。もっと勉強してください』と言われました。思い返せば、あのときの自分は本当に甘かったと思います。すべてがうまく進み、天災もない、それが前提の収支計画でしたから(笑)」(江並さん)何をもっても必要な資金調達の道が絶たれ、相談者の起業の夢は潰えたかに思えた。しかしCOはその夢に至る別の道を提案する。事業承継で地域貢献しつつ早期の経営実績を作り、それを足がかりにグランピング事業に発展させるというものだった。
美郷町で「やまだ商店」を営む山田さんは、70歳を迎え、自身の引退を考える時期が迫っていた。しかし地域で生活必需品を販売するお店を、引退とともに畳んでしまうことだけは避けたいと思っていた。「令和3年5月に『宮崎県事業承継・引継ぎ支援センター』のパンフレットが目にとまり、申込用紙を送ると、すぐに担当の方がお越しになりました。それからまもなく、江並さんをご紹介いただいたのです」(山田さん)「実は4~5年前、商工会議所から案内があって、『後継者人材バンク』に登録していたのです。連絡をいただくまで忘れていましたが(笑)」(江並さん)小売店を事業承継しての起業なら、グランピング事業のように多額の初期費用や運転資金は不要です。「新田さんの『グランピングを将来のビジョンに掲げつつ、事業承継する』という構想に、自分の夢はまだ実現可能だと勇気づけられました」(江並さん)しっかりとした後継者がほしい山田さんと地域に根を下ろしたい相談者は、初対面で打ち解け、トントン拍子で事業承継の話が進んだ。
COは店舗のブランディングや看板の設置にかかわる町の補助金申請のサポートも行い、「やまだ商店」は「商処美郷や」として生まれ変わった。「いちばん心配し 軽キャンパーの制作販売を開始ていたのは、承継が終わったら『はいここまで』と放り出されることでした(笑)。でも山田さんは本当に親切で、3ヵ月くらい、手取り足取り教えてくれるだけでなく、店にいらしたお客様、配達先への自分の紹介、さらには留守番まで。お店の名前は変わりましたが、地域の人から『同じお店』とご愛顧いただいています」(江並さん)その一方で相談者は次のステップを見据えた新たな事業にも乗り出している。「将来のグランピングにつながる事業として、軽キャンパーの製作販売をはじめました。また山田さんに地域の商工会や役場をご紹介いただき、『アウトドアで町おこし』というアイデアも披露させていただきました。地域の事情を知る人の力添えは頼もしく、みなさん熱心に話を聞いてもらえます」(江並さん)若干の“遠回り”はあったものの、地の縁を得て、相談者が夢を実現できる日は着実に近づいている。
グランピング事業での起業は資金面の問題から実現がかないませんでしたが、その過程で相談者が「地域貢献」を重視していることを知り、地域商店での事業承継で起業し、実績を作ってからグランピング事業に発展させるという道を考えました。具体的な事業承継にあたっては、各関係者と連絡を密にとり、できるだけの支援をさせていただきました。当初の予定とは異なる形とはなりましたが、さきに作った事業計画書は、美郷町の町おこしに「グランピング事業」を取り入れる際、きっと役立つと思っています。現在も新事業展開のニュースリリース作成、さらに今後のグランピングを実現するための行動計画作成など、継続しての支援を行っています。
自動車販売についてはプロでしたが、新規事業をはじめるにあたっての事業計画の作り方、資金調達の方法はまったく素人でしたので、よろず支援拠点の支援は本当に助かりました。最初に描いていた夢とは違う形での起業となりましたが、厳しい計画のままスタートしなかったこと、また山田さんという素晴らしい方に巡り会えたことが、本当によかったと思います。この引き継いだお店をしっかり守るとともに、自動車販売や軽キャンパー販売を軌道に乗せて足場を固め、町全体を巻き込む形でより大きな規模でのグランピング事業を実現できたらと思います。そのためにもこれからもよろず支援拠点に継続的に相談をしたいと思います。