社長の急逝から半年、価格転嫁にも挑戦。失敗もしたが赤字脱出
平成29年、東京都中央区で創業。食品卸業を営んでいる。令和4年に創業者の急逝を受け、配偶者であった現代表が事業を引き継いだ。取引先は、関東の大手量販店である。故社長のネットワークで集めた全国の特産品やこだわりの調味料など差別化された商品を販売している。特に高知県の特産品がメインで、文旦やカツオのたたきが人気である。令和5年に本社を東京から現社長が住んでいる高知に移転し、事業を続けている。
住 所:非公開
令和4年に故社長が急逝された後、配偶者である現社長が事業を承継するものの、現社長は事業に全くタッチしていなかったため、会社の決算状態どころか、仕事自体もわからない状態であった。支払業務をやっていく中で、会社の状況があまりよくないことを感じ、高知の信頼できる取引先に相談したところ、当拠点に相談に行くように紹介され、経営状況を把握することから始めた。また、継続した相談から3か月後、仕入れ先から値上げの要求があったことで、その対応についてどうしたらよいかとの相談があった。
急な仕入れ商品の値上げの波が来ている中、相談者は、価格転嫁の必要性を感じていたものなかなか実行できない状態であった。実際、仕入れ先からの「値上げ要求」は全て言われるまま受け入れていたが、販売先には価格転嫁できず、すべて自社が差額分を負担している状態であった。また、故社長もコロナ前から価格交渉はしておらず、商品によっては、出荷した時点で赤字の商品もあることが分かった。価格転嫁に向かうためには、自社事業の把握、競合商品の把握、時流を理解すること。決済決定権者と関係性を築き、交渉できる状態を作ることがポイントである。相談者は事業承継したばかりであるためすべてが構築中であること、食品卸は、代替え企業はいくらでもあり、価格転嫁により注文量減少が会社存続に影響があると不安をもっていた。
COは、相談者の不安を解消するべく、価格転嫁しやすい商品の特定と打診から始める価格交渉の手法を提案した。まずは事業者には、すべての取扱い商品の仕入れ価格と卸価格を調べ、データ化し商品情報がすぐにわかることを最優先の取組として提案した。取扱商品を確認したところ、希少な調味料や果物などの特産品を取り扱っていることを確認。特産品の場合は、品質によって価格の差をとることができるため、価格転嫁がしやすいとアドバイス。さらに、同一商圏内のライバル店で販売されている商品価格を調査し、価格に対する品質の担保情報を整理するようにアドバイス。そのうえで、交渉の前に打診からスタートするようにアドバイスした。打診の段階で、取引先から価格交渉に応じてくれる姿勢を見せていただいたのですぐに見積もりを送り価格交渉をおこなった。
タイミングが合わず価格交渉ができなかった商品もあるが、現在出荷している商品の8割ほどが受け入れてもらえ、粗利を大きく改善をすることができた。合わせて、経費の削減もしたことにより単月赤字も黒字に転換。令和5年度決算も黒字で終えることができた。価格転嫁後も商品の注文が減ることもなく、新商品の提案依頼があるなど販売先とは良好な関係が続いている。
経営者が事業を引き継いだばかりであり、様々な不安をどう取り除くのかに対して気を使ってアドバイスをした。また、価格交渉の結果に対して当拠点は責任が負えないため、確実に成功するように打診から始めるなど交渉は慎重におこなってもらった。最後は事業者の覚悟を後押しするために、価格転嫁しないで事業を続けることのデメリットも説明した。
事業を引き継いだばかりで何もわからない状態で相談に来て、様々なことについても対応してもらっています。よろず支援拠点には食品事業に詳しいCOがおり、現場のことも分かっているので、素早く、的確なアドバイスを頂けます。価格転嫁もうまくいって利益が出る会社になりました。事業を継続していく自信もできてきました。