生産体制の効率化を起点に事業拡大のチャンスを掴む
商品の受注が増加する一方で、生産が追いつかない状況に陥っていた菓子工房よどがわ。 抜本的な製造工程の見直しを軸に、販路開拓・売上向上に挑む。
代表者:淀川 栄美子(よどがわ えみこ)
住 所:石川県小松市国府台2-96
相談者は、平成9年より日本茶専門店茶房一笑のお茶うけ用の洋菓子として、加賀棒茶のロールケーキを製造・販売。合成添加物を使わないことで、人気を博している。
平成27年によろず支援拠点主催セミナー「お金をできるだけかけないで宣伝PRする方法」に参加し、当拠点に事業拡大についてのアドバイスを求めたため、コーディネーター(以下CO)が同社に訪問した。
相談者は金沢や首都圏への販路開拓活動が功を奏し、順調に取引先を増やしていたものの、少数精鋭で事業を営んでいたために生産が需要に追い付かない状況が続いていた。日々の生産対応に追われ、企画中の新商品販売にも手が回らず、事業拡大のチャンスがあるにもかかわらず実現できないというジレンマを抱えていた。
当拠点から生産管理の専門家であるCOを派遣し、製造工程の分析を実施。製品別、工程別時間平均、現状の能力など問題個所の明確化を図った。具体的にはお菓子の製造時間を算出し、作業行動などの現状を調査したのだ。
その結果、オーブンで行っている「焼き工程」がボトルネックになっていることが判明。製造時間の約8割を占める当工程の効率化が優先対応課題だと分析した。
相談者はかねてからオーブンの買い替えを検討していた。当拠点の調査・分析により、現状のオーブンでは機能が不十分であるために作業効率を低下させていることが分かったため、オーブンの早急な買い替え・増設が喫緊の課題であるとCOから説明。同社の製造工程や生産実績を入念に見直し、必要な機能を兼ね備えたオーブンを見つけることを提案した。また、新しいオーブン導入のための資金調達については、取引金融機関への融資の相談および事業計画作成を提案した。
当拠点の助言も受けながら、金融機関説明用の事業計画書を作成し、融資を申し込んだ。
金融機関との交渉の末、設備投資に関する融資を受けることで、新規に生産性の高いオーブンを購入できた。既存オーブンと併用することで大幅に生産効率が向上。受注に対して生産が追いつかない状況が改善された。さらに生産性向上とあわせて、これまで後回しにしてしまっていた新規営業・新商品開発への着手も可能となった。これにより、石川県産業創出支援機構販路開拓推進部のアドバイザーの協力のもと、「家庭画報」や三越百貨店のカタログ掲載などにもつながった。
当拠点への相談をきっかけに、同社は前年比約14%の売上増を実現。相談者からは「生産性向上が実現したうえ、首都圏への販売エリア拡張や新商品開発など、前向きな取組みにも力を入れることができ、売上げも順調に拡大できている」との声が届いている。