「できることから」の取り組みで、売上15%アップ!
消費税率のアップや、中食へのシフトなど世の中の食習慣が変わり、売上げの低迷に悩まされていた相談者。資金面の制約から「できることから」の方針で、ランチタイム以外の稼働率を上げるデザートメニューの開発やファサードの改善で売上げの改善に挑む。
創業時は順調な滑り出しだったが、消費税が5%に上昇したことや、飲酒運転の取り締まりが強化された頃から、客単価、来店客数ともに減少し始めた。また、近隣の事業所で働く方々が、お弁当やコンビニなどの中食にシフトする動きも影響し始め、売上げの低迷が続いていた。日々の調理、接客を懸命にこなすばかりで、「経営」という視点で考えることが少なかったように感じたメインバンクが相談者に当拠点への相談を促した。ちょうど、相談者の近くで開催されたビジネスフェアで当拠点のコーディネーター(以下CO)が講演しており、売上低迷の打開策を得られたらと願い、現地での初めての相談となった。
早速COが店舗を訪問。来店客数が落ちている数字の実態分析を現場の情報から把握しようと試みた。相談者は、冷凍食品を使わない調理、釜炊きのご飯などにそのこだわりが出ており、看板メニューの「とんかつ」や「牛鍋」の人気に現れていた。飲食店として最も基本的な要素である「美味しさ」を強みとして持っていることが窺えたという。一方で交通量がある県道に面し、十分な広さの駐車場があるにもかかわらず、客数の回復が見られない。クルマで移動する見込顧客に訴求できる看板やファサードなどを工夫し、新規顧客増に効果的な策を検討する必要性を打ち出した。
また、デザート系などのメニューが乏しいため、ランチ以外の時間帯に店舗が賑わいにくいといった偏りがあった。ランチタイムの客単価としては低価格ではないが、滞在時間も40分程度とランチに回転数を上げることは難しい。メニュー内容の見直しにより、ランチタイム以外の稼働率を上げることを課題として設定した。
その他にも、和式トイレしかなく、高齢者の顧客がトイレを使いにくいといった問題もあり、顧客満足度向上のためにも、清潔で使いやすい洋式トイレを設置する必要もあった。
資金面の制約条件から、まずはお金のかからない改善から着手するという方針とし、新メニューのアイデアをCOと相談者でディスカッションした。そしてデザートメニュー、季節の一品による特別感など、すぐに着手できる提案内容から実施。さらに具体的な店舗訴求を行うため、ミラサポの店舗デザインの専門家派遣を活用しながら①手書きが可能な材料なども含めたメニューデザインの具体案 ②お客様に訴求したいことが伝わりやすい店内の整理整頓 ③メニューを決める労力を軽減するためのメニューブックのページ分け ④ショップカードによる外部への訴求や口コミの誘発などを提案した。実施期間中は取引金融機関、地元商工会議所と連携を深めたチーム支援を行なった。
通りに面した看板の改善効果が大きく、そして改善の順序についても、コストのかからないお手製のものから、資金の必要な訴求力の高いものまでを計画的に進めることができた。また、ショップカードによる効果は大きな実感が得られたという。店舗を構える小野市は、播州そろばんで全国70%のシェアを占めており、近隣にあるそろばん製造体験ができる施設を始め、ショップカードを置いてもらえたことが集客に繋がった。慰安イベントのスケジュールに組み込まれるようになったのが大きい。「相談をするまでは、日々の業務と懸命に向き合うばかりで、経営視点で考えることができていなかった」と相談者。集客力を上げるために店舗の改装を考えても、資金面で前に進まないことが多かったそうだ。そういった意味では、COによる具体的なアイデアだけでなく、精神的に背中を押すことができたことも成果につながる要因ではないか。